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ゆっくりと沈む夕陽が、街全体をオレンジ色に染め上げていた。
蝉の鳴き声も遠のいて、代わりに風が木々を揺らす音だけが耳に残る。
今日も、不破湊は天界から降りてきた。
不破湊「ふあぁ……夕陽って、天界から見るより、ずっときれい~」
軽く伸びをしながら降り立ったのは、いつもの公園。
人の気配は少なく、だけど確実に“彼ら”がいる、そんな特別な場所。
ベンチの方から、すぐに声が飛んできた。
三枝明那「お、来た来た。ふわっちー!」
不破湊「明那くん~!」
三枝明那「ほら、こっち!」
不破湊が近づくと、
三枝明那はどこか妙にテンションが高かった。
というのも、今日は彼が一番乗りだったからだ。
三枝明那「俺、今日いちばん早かったっぽい。珍しくね?」
不破湊「うん~。今日の明那くん、ちょっと気合い入ってる~?」
三枝明那「……まぁ、たまにはね」
その時だった。
不破湊が、ぴたりと彼の前で立ち止まって、ぽつりとこぼした。
不破湊「ねぇ……”触れる”って、どんな感じなのかな~?」
三枝明那「……は?」
不破湊「この前、肩をポンってしてくれたじゃん~。あれ、なんかぽかぽかしてて、よかった~。ああいうの、もっとしてもいいのかな~って」
三枝明那「っ……」
一瞬で、頭の中が真っ白になった。不破湊は、ただ無邪気に話している。だけどそれが、あまりに無防備すぎて。
三枝明那「……じゃあ、さ、俺……今から触っていい?」
不破湊「え?いいよ~?」
答えが早すぎて、逆に焦る。
けれど、不破湊はまったく警戒していなかった。
三枝明那は、彼の手をそっと取った。
不破湊の肌は、信じられないくらい柔らかく、薄く、あたたかかった。
不破湊「ん……やっぱり、あったかいね~。明那くんの手、包まれてる感じする~」
三枝明那「……(ダメだ、ふわっちってやっぱりマジで天使なんだ。ふわっちは俺のことを純粋に見てくれてるのに、こんな……)」
その時、他の3人が到着する。空気が、ピリッと張り詰めた。
剣持刀也「……何をしてるの2人は?」
甲斐田晴「……不破さん、手。どうしたのそれ」
不破湊「え~?明那くんに”触れる”って教えてもらってたの~」
甲斐田晴「”触れる”……ね」
甲斐田晴の声が、微かに低くなった。
その言葉の裏にあるものを、不破湊はまったく気づいていなかった。
加賀美ハヤト「ふむ……それで、どうだったんですか?“触れる”のは」
不破湊「なんかね~、心があったかくなる感じだった~。でも、まだ全然わかんないかも~」
剣持刀也「じゃあ、僕も教えてあげる。“触れる”ってのはこういうのもあるんだ」
そう言って、剣持刀也が後ろから不破湊の頭をわしゃわしゃ撫でた。
不破湊「わ~、くすぐったい~!」
剣持刀也「でしょ?これも“触れる”だよ」
笑ってるけど、その手にはわずかに力が入っていた。
柔らかくて、優しく髪に触れてるだけなのに、欲がにじみ出る。
加賀美ハヤト「……不破さん、”触れる”はね、簡単な言葉だけど……深いんですよ。うまく使わないと、相手を勘違いさせることもあるので……」
不破湊「勘違い……?う~ん、よくわかんないや~。でも、みんなと触れ合えるの、ぼく嬉しい~」
その瞬間、甲斐田晴が小さく笑って、こう言った。
甲斐田晴「……そうだね。不破さんのその無邪気なところ、ずるいなって思うよ」
不破湊「えへへ~。褒められた~?」
甲斐田晴「ん、うん……褒めてるよ」
全員が、各々の“欲”を飲み込んだまま、その場に立っていた。
空気はまだ穏やかで、関係はまだ壊れていない。
けれど、この日を境に、“触れる”ことへの意識が、確実に4人の中で変わり始めていた。
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