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前編
YOASOBI様依
『もしも命が描けたら』
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iemon
25歳 年収215万 寡夫
それが今の僕だ
父は僕がやっと1人で歩けるようになった頃にバーで知り合った女性と蒸発したらしい
それから母は僕を支えようと毎日必死に働いてくれた
贅沢も出来ない毎日
でも母と一緒に暮らせればそれで良い
それで良かったんだ
でも、ある日母は居なくなった
今思えばあの日はおかしかった
「久しぶりに外食でもしない?」
当時の僕はそんな母の突拍子のないセリフに戸惑った
母は僕を育てる為に朝から晩まで体を削りながら働いていた
外食なんて夢のまた夢
人生で初めての外食にとてもワクワクして出かける準備をした
多分当時の中で今までにないくらい喜んだ瞬間だったと思う
2年前に買ったサイズが合わない洋服を着て
袖の丈が合わない上着を羽織り
穴の空いた靴下を履く
自分の足には窮屈な靴を履き
寒さで震える母の手を繋ぎ一緒に近くのファミレスまで歩いて行った
「今日は蒼の好きなもの好きなだけ頼んで良いよ」
ファミレスに着くなり母にそんなことを言われ驚いた
うちにはそんな余裕あるはずが無かったから
「ぼくこれがいい」
そう言いながら僕はメニューのフライドポテトを指した
母は こんなので良いの? と少々驚いていたがこれが良いと言ったら少し悲しそうに微笑みながら そう と言った
その時に食べたフライドポテトはとても美味しかった
人生で初めて食べたフライドポテト
とても美味しかった
楽しかった
フライドポテトを食べ終わると母は少し深呼吸をして
「これからお母さんと一緒に楽しいところへ行かない?」
と聞いてきた
楽しいところと言われて断る理由はなかった
二つ返事で了承するとにこっと笑顔になってくれた
母につられて僕も笑顔になる
ただそのときの母は何処か苦しそうで悲しそうな雰囲気を放っていた
家に帰ると母は僕に家の窓を全て閉めるように言った
全部出来たよ!と元気に報告しに行くと母はストーブとコンロの火を付けていた
「なんでつけてるの?」
そう尋ねると 楽しいところに行く為に必要な事 だと母は言った
しばらくすると次第に視界がぼやけてくる
すると突然母が急に僕を抱きしめごめんねと言った。急な事で理解が追いつかずワンテンポ遅れて母の顔を見ると涙を流していた
どうしたら良いのかも分からず戸惑うも時間が経つにつれ意識がだんだん遠のいていく
そのままどうすることも出来ず意識を失い僕はそのまま倒れた
その日見た月は丸く綺麗に輝いていた