続きです。
エピソード:山中柔太郎
放課後の図書室。
仁人は、借りた参考書を開きながら小さくあくびをした。
隣の席には柔太郎。いつの間にか静かに座って、本を読んでいる
吉田 『……なんでお前まで居るんだよ』
山中 『仁ちゃんが居るから』
吉田 『理由になってない』
山中 『仁ちゃんが一人だと俺が落ち着かないから』
柔らかな笑みと共に、軽く指先が仁人の髪に触れた。
山中 『前髪、ちょっと乱れてるよ』
吉田 『……触んな、、っ///』
山中 『大丈夫。誰も見てないから』
低く優しい声に、仁人の心臓が跳ねる。
本の文字が、急にぼやけて見えた。
エピソード:塩崎太智
部活終わりの教室。
仁人が片付けをしていると、太智が菓子とスポーツドリンクを片手に現れた。
塩崎 『ねぇ、仁人、これ食べる?』
吉田 『今いらない』
塩崎 『遠慮してるでしょ!』
強引に菓子を差し出してきた太智が、笑いながら肩を寄せる。その距離が近すぎて、仁人は思わず一歩下がった、、。
吉田 『お、お前近いっ///』
塩崎 『え?そぉ?…仁人顔赤いけど大丈夫?』
吉田 『……お前のせいだよッ!///』
塩崎 『え、俺?やった!』
吉田 『喜ぶなバカッ!!』
仁人のツッコミに太智が満面の笑みを浮かべて、教室の空気がふわっと柔らかくなった。
(……なんでこんなに楽しそうなんだよ笑)
心の奥で、仁人は少しだけ笑っていた。
エピソード:曽野舜太
夕焼けに照らされた帰り道。
舜太は仁人の横をぴょんぴょんと歩いていた。
曽野 『仁人、今日も一緒に帰れて嬉しいな〜!』
吉田 『……お前、ほんと元気だよな』
曽野 『仁人がいると、もっと元気出るもん』
余りにも真っ直ぐな笑顔に、仁人は目を逸らした。
その頬にふわっと風が当たって、舜太が一歩近づく。
曽野 『ねぇ仁人。俺、仁人の笑った顔、めっちゃ好き』
吉田 『……な、何言ってんだよ///』
曽野 『本当のことだよ笑』
仁人は思わず足を止めた。
胸の奥がじんわり熱い。
エピソード:佐野勇斗
夜、校門を出た所で仁人がふと空を見上げると、勇斗が隣にいた。
吉田 『なんで居んだよ』
佐野 『迎えに来るの習慣になっちゃった笑』
吉田 『……お前な』
少し沈黙が続いた。
勇斗がポケットから飴玉を取り出して、仁人に差し出す。
佐野 『これあげる』
吉田 『……俺、ガキじゃねぇって』
佐野 『知ってるよ笑たまには甘いもの食べたら』
仁人は少し睨んでから飴を受け取る。
包みを開けて口に入れた瞬間、ほんのり優しい甘さが広がった。
佐野 『どう?笑』
吉田 『……悪くはない、、』
佐野 『それなら、よかった』
勇斗は穏やかに笑って仁人の髪をそっと撫でた。
その優しさに、胸の奥が静かに波打った。
その夜、仁人は布団の中で天井を見上げていた。頭の中を、4人の顔がぐるぐると巡る。
(なんなんだよ、あいつら……)
(俺、なんでこんなにドキドキしてんだ……)
胸の鼓動が、どうしても止まらなかった。
数日後の放課後。
教室に残っていた仁人は、窓の外の夕焼けをぼんやり見ていた。
最近4人の顔を見るたびに胸が騒ぐ。
優しさに触れるたびに、息が詰まりそうになる。
(……俺、どうしちゃったんだろ)
そんなことを考えていると、扉が静かに開いた。
『仁人』
声の主はーー勇斗だった。
そしてその後ろに、柔太郎、太智、舜太。
4人が揃って教室に入ってくる。
吉田 『……な、なに。全員で』
佐野 『仁人に話がある』
勇斗の言葉に仁人の胸が跳ねた。
END
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