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第五章『裏切り者の轍』
暗闇の中、ビトレイヤーはひたすら前に進み続けていた。辺りには何も無く道の見えない平坦で闇に包まれた世界だった。
一歩一歩進んでいくと目の前には過去の思い出の映像が映し出された。
「これがお主が持つ憎しみや苦しみか。」
「これは、私が持っていたトラウマだよ。」
「今の世ではそういうのか。今は子供でも苦しみを持つ時代、そうなったのはいつからだろうな?我はずっと石に閉じ込められていたからな?前の宿主とは何故か意思疎通ができたのだがな。」
「お前は誰だよ。」
「我の名前を聞く前に一つの条件に乗って欲しい。お前は世界を壊すのだろう?」
「あぁ、俺はこの日本を世界を壊す。」
「仮面の男もか?」
「全てと言ったろう。俺はこの力で全てを壊し、世界を終わらせる。」
「それならそれでいい。条件とはな…」
【水上】
秋水は神力を使いすぎて膝をつき、荒く呼吸していた。まるで、死ぬ前の瞬間のように。
「はぁ、はぁ、これで終わった。早く戻って罪夢達の応援へ向かわなければ。」
秋水がその場を離れようとすると突然、その場に地鳴りが響く。それは徐々に強まり、地震で言うところの震度7にあたる程の揺れだった。
秋水は突然、発生した莫大な神力がこの状況を起こしていることを知った。
「ははは、ここまでやるとはな。さすが赤崎家の息子だな。」
秋水は神力を察知し宙に舞い上がった。すると、秋水がいた場所は地下から暴発した。そこから水面はある人物を中心に渦を巻いた。
赤髪の少年で頬、額に目が着いている。そして、チャームポイントとなる赤眼。そう、お待ちかね、完全復活を成した赤崎零太、いや、ビトレイヤーだ。ただ今回は違う。完全に神に融合を成した最凶なのだ。
秋水はビトレイヤーの姿を見て怒りを隠せなかった。
「この死にぞこないがァァァァ!!」
「ヘッ、」すると、ビトレイヤーは一瞬で秋水の背後へと回り込み、背を殴りつけ 立場をチェンジした。秋水は元々、ビトレイヤーが居た場所、荒い炎に満ちた湖の底に殴り飛ばされ、神力で傷を修復することしか出来なかった。
「赤崎零太ァァァ!!」
「その名は捨てたな。今の俺の名はビトレイヤーだ。」ビトレイヤーは秋水を見下しながら言葉を放った。
「炎ノ極 炎弓(えんのごく えんきゅう)。」ビトレイヤーは『火矢』と同じ構えをするがそれより炎は荒く業火な物だった。
「やめろォぉぉぉぉ!!零太!」ビトレイヤーから見た秋水には母の面影が同時に映し出された。まるで母親が目の前にいるかのように。
「ここで後戻りすることは出来ない。」
暗闇の中、光に向かうビトレイヤーの姿、ただ一人が見える。手には秋水が着ていた浴衣の裾を掴み、引きずりながら道を歩く。
暗闇を抜けるとそこはビトレイヤーが秋水の神域に引きずり込まれる前に、逃走を図っていた住宅街だった。その道の外壁に秋水を投げ飛ばし自分の力で荼毘に付すかのように体全身を焼いた。近寄るだけで火傷しそうな程の青色の豪炎で。その炎は刹那の間に住宅に燃え広がった。
「これで有言実行だな。俺はお前を殺した。」
ビトレイヤーがそういうと更に先へ進み続けた。
孤独、街灯のない暗闇の中へ。
ビトレイヤーは神力を解き、ポケットに手を入れた。寒い12月の最後の日だったがビトレイヤーは寒気を感じているような様子は無かった。
静寂の中、一歩ずつブーツの靴底が地面と音を鳴らしながらひたすら歩き続ける。すると、ビトレイヤーの手を誰かが掴んだ。だが感触が普通の手ではなかった。その手は、子供の手だった。 深夜の住宅街に子供がいるとは思えない。そう考えたビトレイヤーは手を握った人物の方へ振り向いた。
そこにいたのは幼き頃のビトレイヤー、そう赤崎零太だったのか。夢か幻覚かわかるはずは無いがビトレイヤーは一切驚く身振りは見せなかった。まるでこれが当たり前なんだと言うかのように。
「ねぇ、もうやめてよ。お願いだから。」零太は大人の自分にお願いをする。
「無理だな。」
「お母さんが悲しむよ。」
「これは俺の母さんのためでもあるんだ。」ビトレイヤーはこういうと赤眼になった。赤崎家がこの目を使う時はただ一つしかない。神力を使用する時だ。
「あついぃぃぃぃぃ!!あぁぁぁぁぁぁぁぁァ!!!!」
「俺はこの力で世界を燃やし尽くす。たとえ誰が来てもな。」ビトレイヤーの炎で零太は燃やされた。バチバチと奏で悲鳴をあげる零太に同情なんて言葉は無い。
「ごめんね。ありがとう。」
ビトレイヤーは焼き爛れている過去の自分をその場に置き去りながら。より暗闇の先へと歩き続ける。
「アイツは確か罪夢と言っていたな。アイツよりも強いなら排除すべきだな。俺の計画の邪魔になるならな。」
ビトレイヤーは妄想を膨らませ、ニヤついては口が裂けた。怪物のような鋭く尖った歯を見せつけて。
『ビトレイヤー』最終章「裏切り者の轍」