君に会う日まで
春の光が教室に差し込む。小鳥のさえずりと子どもたちの笑い声が混ざり、何の変哲もない一日――そう思われた、ほんの数分前までは。
耳の聞こえない少年は、静かにノートに向かっていた。隣の友達が手話で話しかける手の動きが、彼にとっての世界の一部だった。
そのとき、遠くでサイレンが鳴った。少年には音は届かない。ただ、教室の空気が変わったことだけは分かった。椅子のひっくり返る音、子どもたちのざわめき、先生の慌てた声――世界が少しずつ壊れていく。
目の見えない少女は、押し寄せる人々に倒れ込み、必死に助けを求める。しかし誰も手を差し伸べない。そのとき、小さな手が少女の手を包む。少年の手だった。混乱の中で、ふたりの小さな存在は、ほんの一瞬だけ、世界の暴力を忘れさせるかのように重なった――。