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第十一章 誤算
《誤算だった…全ては祖国の為だったのだ》
《2025年8月12日13時21分》
ナシル艦隊に近づき過ぎた米駆逐艦が…爆炎を上げ傾斜していた…
「なんだ…何があった…」
米空母艦橋に緊張が走る。
「左舷前方のメイソンが被弾!!大破炎上中!」
「ナシル艦からの発砲を確認!!」
観測員がそう叫んだ
数秒の沈黙。
「………アイツら、先に撃ってきやがった!」
「クソっ!なんで撃ってきやがったんだ!!
アイツら…狂ってやがる…」
そう言ったのは、《CVN-69ドワイト・D・アイゼンハワー》の艦橋要員
「なんだよ!アイツら交戦規定を無視したのか!?」
艦長が呟く
「あのナシルだ…」
「牙をチラつかせても噛んでくることは無いと思っていたのにな…」
「誤算だった…全ては祖国の為だったのだ」
その言葉が表すように…米海軍は一つ大きな間違いをしていた
《米海軍は排他的経済水域内で活動していた》
そう記録されている。
しかし実際には――
ナシル連邦が一方的に設定した警戒海域、その最終警告線を、米駆逐艦USSメイソンはすでに越えていた。
ナシル側は幾度も進路変更を要求し、警告通信を繰り返していた。
だが、その通信は届かなかったのか、あるいは届いても受け入れられなかったのか。
真実は、当事者だけが知っている。
そして数分後。
一発の砲弾が海を裂いた。
《ナシル駆逐艦シュペリエル:艦橋》
「最終通告、応答無し…」
通信士が静かに報告した
艦橋内では重々しい空気が場を包んでいた。
艦長は窓の先の米駆逐艦を見据えながら
「…そうか」
「だが相手が聞こえてなくとも…あるいは無視をしていたとしても」
「我々はやらなければならない」
艦長がそう呟いた
そして、艦長は帽子を被り直し
「祖国の為に」
「砲雷撃戦用意」
「主砲、CIC(戦闘指揮所)指示の目標、USSメイソン」
「照準良し」
「撃て」
ドン!
《米海軍》
……
「メイソン被弾!!!」
艦橋に警報が鳴り響く。
「総員戦闘配置!」
「各艦、防空・対水上戦闘態勢へ移行!」
艦長は、レーダー画面を見つめたまま命じる。
「……全艦へ通達。」
「交戦を避けつつ針路180度反転。」
「損傷艦の応急処置が終わり次第、曳航し帰投する」
《約1時間後 アメリカ合衆国 ワシントンD.C. ペンタゴン》
館内には普段の喧騒はなかった。 作戦室の大型スクリーンには、北太平洋の海図と艦隊位置が映し出されている。
「……被害報告を。」
静まり返った部屋で、統合作戦本部長が口を開く。
「駆逐艦USSメイソンが被弾。現在は応急処置を実施しつつ帰投中です。」
「ナシル艦隊による発砲であることは確認できたのか。」
「現時点では、その可能性が極めて高いと報告されています。」
部屋は沈黙に包まれる。
やがて、一人の将官が低く呟いた。
「……ついに、一線を越えたか。」
「誰か大統領に報告を」
「これで…やっと軍事行動に移せる」
《2025年8月13日 国連安全保障緊急会合》
議場には、8カ国の代表が集まっていた。
議題は一つ。
ナシル連邦への対応について
アメリカ代表は、まずUSSメイソン事件の映像資料を提示する。
「我々の艦艇は攻撃を受けた」
「これは偶発的な接触ではない」
「主権国家に対する明確な軍事行動である」
それに対し、慎重派の国々は異なる見方を示す。
ドイツ代表:
「我が国はナシルとの経済・技術協力を継続している。しかし、それ以上に問題なのは、水晶という未知の領域を巡る戦争が、二つの世界を巻き込む可能性があることだ」
日本代表:
「我々はUSSメイソンへの攻撃を軽視しているわけではありません。これは重大な軍事的衝突です。しかし、現時点で確認されている情報だけをもって武力行使へ踏み切ることには、重大な懸念があります」
中華民国代表:
「これまでナシル連邦は、その能力を示すことなく、我々に対して直接的な威嚇行動を取ることもありませんでした。
しかし、もしも軍事的圧力によって追い詰めれば、彼らが長年秘匿してきたものを、初めて世界に示す可能性があります」
その言葉に、議場の一部が静まり返る。
しかし――
日独中の三カ国は、この場である事実について触れることはなかった。
それは、彼らがナシル連邦の軍事能力について、他国よりも遥かに多くの情報を持っていたことである。
日本、ドイツ、中華民国。
この三カ国は、過去にナシルから兵器の供給を受け、一部装備についてはライセンス生産まで行っていた。
そして彼らは知っていた。
ナシルの兵器体系は、単なる高性能兵器という言葉では片付けられない。
一部の分野においてのナシルの兵器は、アメリカ、イギリス、ロシアといった軍事大国の装備をも上回る性能を持っていることを。
しかし、その事実をこの場で明かすことはできなかった。
もし公表すれば、当然こう問われる。
「なぜ三カ国だけが、その能力を把握していたのか」
そして何より。
ナシルとの数十年に及ぶ関係を、自らの手で壊すことになる。
だからこそ、彼らは沈黙した。
ナシルを擁護するためではない。
ナシルをある程度理解していたからこそ、戦争という選択肢の危険性を知っていたのだ。
しかし――
アメリカ側の判断は変わらなかった。
B-52H消失事件。
USSメイソン被弾事件。
そして、水晶問題。
積み重なった三つの事件は、すでに国内世論と議会を動かしていた。
もはや後退は許されない。
アメリカ代表は、静かに告げる。
「我々は、国際秩序を守るために行動する」
その言葉の裏にある意味を、慎重派の国々は理解していた。
これは、単なる救難でも調査でもない。
ナシル連邦との対立は、すでに新たな段階へ進もうと
しかし、アメリカ側の判断は変わらない。
理由は単純だった。
B-52H消失事件 USSメイソン被弾 水晶問題
この3つが積み重なり、国内世論も議会も「後退」を許さない状況になっていた。
そして最終的な採択。
結果は――
ナシル連邦への武力行使を承認。
ただし、表向きの名称は「侵攻」ではない。
国連側は、
「国際航行の安全確保」
「水晶内地域の安定化」
という名目を掲げる。
しかし、ナシル側から見れば明白だった。
これは――
自国領域への軍事介入である。
ナシル政府は声明を発表した。
「我々は最後まで対話を求めた」
「しかし、世界は我々の警告を弱さと判断した」
「ナシル連邦は、自国民と友好国を守るため、必要な全ての措置を取る」
そして軍は動く。
北極圏の各基地。
海軍艦隊。
航空部隊。
陸上部隊。
数十年間、表に出ることのなかった戦力が、本格的に展開を始める。
コメント
1件
うわああ第十一章読んだよ…!!😭💥 まさかのナシル艦隊からの発砲…!米駆逐艦メイソン被弾のシーン、一瞬で空気が変わって緊張感ハンパなかった…。しかも「誤算」ってタイトルがもう切ない…。 国連の場で日独中が沈黙する描写もめっちゃリアルで、それぞれの立場や事情が透けて見える感じがすごく好き。戦争への流れが止められないもどかしさがじわじわ来たよ…。 まだまだ物語どうなるか気になりすぎる!続き楽しみにしてるね!!🌸💕