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ついに迎えた第三回戦。 勝ち残ったリオン、そしてその相手はあのガ―レットだ。
リオンはこの半年以上の修行で腕を上げた。
しかし、ガ―レットの腕がどれほどの物かも知っている。
かつて仲間だったときに、その強さを目前で見てきたからだ。
ガ―レットの強さは異常だった。
いくらリオンが強くなったといっても、勝てる保証はない。
だが、リオンは臆することなく試合場へと向かう。
「いよいよこの時が来たな」
「ああ、そうだな」
「お前との決着をつける時がな!」
そう言って試合用の木刀を構える。
それに対して、リオンも試合用の木刀を構えた。
「ここで決着をつけよう!」
大会的には、まだ第三回戦。
決勝どころか、準決勝ですらない。
しかし、リオンにとってはこれが事実上の決勝であると考えていた。
こうして、リオンとガ―レットの戦いが始まった。
先に仕掛けたのはガ―レットだ。
「そら!どうだ!」
勢いよく飛び出し、リオンへと向かっていく。
それに対しリオンは冷静に対処していく。
攻撃を受けてはいるが、十分に受け流せる範囲内。
それは攻撃というよりは、ただの牽制程度でしかない。
「(ガ―レットのヤツ、本気を出していないな…)」
リオンは直感的に感じ取った。
ガ―レットは何かを狙っている。
「そこか!」
リオンは咄嵯に反応し、攻撃を繰り出す。
だが、それはフェイントだった。
ガ―レットは攻撃をギリギリのところで避け、リオンの懐に入り込む。
そしてそのまま剣を叩き込んだ。
轟音が鳴り響き、リオンの身体が吹き飛ばされる。
なんとか受け身を取り、すぐに立ち上がる。
「へー、今のを耐えるとは思わなかったぜ」
「まあな。俺もそれなりに強くなっているからね…」
実際、リオンは最初の攻撃は反応できなかった。
しかし、次に来ると分かっていれば避けることは可能だ。
ガ―レットとしても、受け身をとるとは予想外だったのだろう。
「だが、次は避けられるか?」
そう言うと、再び動き出したガ―レット。
先程よりも速いスピードで間合いを詰めていく。
なんとか迎え撃つリオン。
だが、ガ―レットのその速度に、対抗手段が追い付けない。
なんとか感覚で追うことは出来ているが、目視で追うことは出来ない。
「オラァア!!」
ガ―レットの怒号と共に放たれた強烈な蹴り。
それがリオンに炸裂した。
ガードしたが、あまりの衝撃に弾き飛ばされてしまう。
まさかここで蹴りを放ってくるとは思わなかった。
完全な意識外からの攻撃方法だった。
「うあっ!」
「まだまだ行くぜ!」
地面に倒れ込みながらも、すぐさま体勢を立て直すリオン。
今度はガ―レットが連続で攻撃を仕掛けてくる。
それをどうにか捌きながらチャンスを待つ。
一瞬の隙を突き、リオンが反撃に出る。
しかし、簡単に防がれてしまった。
「甘いな!」
さらに追撃を仕掛けてくるガ―レット。
それを何とか捌き、リオンは反撃を与えていく。
たしかに攻撃は当たっているしダメージも通って入る。
ただ、致命傷にはなっていないのだ。
ガ―レットの異常な対応力を前にして、リオンは次第に焦りを感じ始める。
このままでは勝てないと悟ったリオンは賭けに出た。
防御を捨て、ひたすら攻撃に集中することにしたのだ。
「ハアッッ!!!」
渾身の一撃を放つリオン。
それに合わせて、ガ―レットもカウンターを放った。
二人の木刀が激しくぶつかり合う。
次の瞬間、激しい衝撃波が発生し二人を吹き飛ばした。
互いに距離を置き、構えを取る。
会場は静まり返っていた。
観客たちは皆息を飲み見守っている。
先に動いたのはガ―レットの方だった。
一気に距離を詰め、リオンに向かっていく。
それに対してリオンは動かずじっとしている。
「どうやら諦めたようだな!ならこれで終わりだ!!」
上段からの振り下ろし攻撃をするガ―レット。
それに対し、リオンは回避せずあえて受け止めた。
木刀同士がぶつかる鈍い音が響く。
「バカなっ!?」
予想外の行動に動揺を見せるガ―レット。
リオンはそのまま押し返し、逆に斬りかかる。
ガ―レットはそれを辛うじて避け、大きく後ろに下がった。
「どういうつもりだ?なぜ避けなかった…」
「…」
リオンは何も答えず無言を貫く。
すると、ガ―レットはニヤリと笑みを浮かべる。
そして…
「そういうことか…ならばこちらも本気でいかせてもおう!」
突如として殺気が溢れ出す。
ガ―レットは全力を出すことに決めた。
「(来るか…)」
リオンは警戒心を強める。
ガ―レットは凄まじい速さで移動を始めた。
リオンの目でも追えないほどのスピードである。
「(どこへ行った?)」
周囲を見回すが、ガ―レットの姿は見えない。
ただ気配だけは感じる。
リオンは集中力を研ぎ澄まし、感覚を鋭くさせた。
直後、背後から強烈な一撃を食らうリオン。
いつの間にか、ガ―レットは背後に移動していたらしい。
「ぐはぁああ!!」
攻撃を受けたリオンは、吹き飛ばされ地面を転がっていく。
何が起こったのか分からないまま、急いで立ち上がった。
しかし、目の前にはガ―レットの姿があった。
そこから次々と攻撃を浴びせられるリオン。
リオンは必死に抵抗し、反撃していく。
だが、次第に追い詰められていった。
「(くそ…このままじゃマズいな)」
リオンは苦渋の表情を浮かべる。
一方的な展開になりつつあった試合を見て、観客席にいた者たちは不安そうな顔で見ている。
ガ―レットは嘲笑うかのように言い放つ。
「この程度か?」
「まだ終わっていない!」
リオンは負けじと言い返す。
なんとか反撃するが、やはり決定打にはならない。
むしろガ―レットを楽しませるだけだった。
「どうした?もう終わりなのか?」
「まだまだだ!」
そう言って再び向かっていくリオン。
しかし、その動きは明らかに精彩を欠いていた。
「はあ、はあ、はあ…」
肩で息をしながら呼吸を整える。
全身から汗が流れ落ちていた。
身体中が悲鳴を上げている。
それでもリオンは諦めない。
「いい加減にしろよ。お前の実力はその程度のものだ」
そう言うガ―レット。
しかし彼自身、内心では焦りを覚えていた。
記憶の中の『リオン』と今目の前にいる『リオン』、その強さが明らかに違うのだ。
ガ―レット自身も、最近は少し体がなまっていたというのもある。
しかし…
「へへ、まだまだ…!」
「これ以上やったところで無駄だぞ?」
フラつきながらも立ち上がるリオン。
だが、足に力が入らず倒れそうになる。
それを見かねたガ―レットが止めに入る。
普段の彼ならばこんなことはしない。
ガ―レットにとってもあり得ない、リオンの強さの上昇。
それを実感し、無意識のうちに言ってしまったのか…
「…確かにそうかもしれない。けど、俺はここで諦めたらダメなんだ!」
「何故そこまでして戦うんだ?勝てる見込みなんて無いのに」
そう言うガ―レット。
以前よりも強さの差は明らかに埋まってきている。
彼は、それをその身で実感している。
しかしリオン自身はそれに気づいていない節がある。
彼の中の『ガ―レット』は以前の圧倒的な存在として止まっている。
「そんなの関係ない。俺はまだ戦える!だから最後まで戦い抜く!」
「愚かな男だな。まあいいさ、なら俺も全力を出してやる」
闘志に火がついたガ―レットは猛スピードで突っ込んできた。
それをギリギリのタイミングで避けるリオン。
しかし、完全には避けきれず脇腹辺りにかすってしまった。
痛みに耐えながら反撃する。
今度は上手く攻撃を当てることができた。
「ほう、今のを避けたか。なかなかやるようになったな」
「まだまだ!」
さらに攻撃を続けていく。
ガ―レットも応戦していく。
試合は佳境を迎え、終盤へと向かっていく…