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迎えた第三回戦。
勝ち残ったリオン、そしてその相手はあのガ―レット。
始まった試合、激しい攻防が続く。
観客たちは息を飲むように二人の戦いに見入っていた。
「(このままではまずい。何か手を考えないと…)」
ガ―レットの攻撃を防ぎつつ、打開策を考える。
その時、あることを思いついた。
「(そうだ、これしかない!)」
リオンはある作戦を実行することにした。
ガ―レットの攻撃をあえて受けてみる。
リオンはあえて攻撃を受けることで隙を作り、カウンターを狙うという戦法に出たのだ。
「どうやら気付いたみたいだね」
それを見ていたシルヴィが言った。
ガ―レットの攻撃の一撃はそこまでダメージの大きいものでは無い。
連続攻撃でその威力の低さを補っているのだ。
その一撃に合わせてカウンターを放つことで、リオンは効率的に攻撃を当てることができる。
しかし、ガ―レットの防御力の前には意味が無かった。
防御を捨てたリオンだったが、それでも決定的なダメージを与えることができない。
予想より、以前までのダメージが大きかった。
「はあっ、はあっ…」
次第にリオンは追い詰められていった。
「おい、そろそろ降参したらどうだ?」
「誰がするか!」
「強情な奴め…」
ガ―レットは呆れた様子で言う。
だが、内心は焦りを感じていた。
何をしても立ち上がってくるリオンに。
何故そこまでして戦うのか理解できなかったからだ。
「どうしてだ?なぜそうまでして戦う?勝ち目がないのは分かっているはずだ!」
「大切なものを守る為…かな?」
ガ―レットの怒りが爆発した。
そして、これまで以上の速さで斬りかかってきた。
リオンはそれを冷静に捌き、反撃していく。
徐々にではあるが、リオンの動きが良くなっていく。
逆に、ガ―レットの動きが鈍くなっていく。
精神的に圧倒され始めるガ―レット。
それを見た観客席にいた者たちは、驚きの声を上げた。
「凄いわねあの子」
「ああ、まさかここまで強いとは思わなかったぜ」
「でも、大丈夫かしら…」
心配そうな顔になる観客たち。
試合は徐々にリオンに有利になり始めた。
この試合に全てを駆けたリオン、それに対し単なる試合としか考えていないガ―レット。
二人の想いの差が勝敗を分けようとしていた。
「(このままじゃマズいな…)」
ガ―レットは苦悶の表情を浮かべる。
とはいえ、リオンの目的自体は理解できた。
このまま長期戦に持ち込もうということを。
粘れば勝てる、リオンはそう考えているのだと。
ならば…
「そっちがそのつもりならこっちにも考えがある!」
ガ―レットは力を解放し、一気に勝負を決めにかかる。
「これで終わりだ!」
ガ―レットは一瞬で距離を詰めると、木刀を振り下ろしてきた。
彼は短期決戦で決めるつもりだ。
「くそっ!」
リオンも必死で応戦するが、徐々に追い詰められていった。
そして…
「これで終わりだぁあ!死にぞこないのリオン!」
「うおぉおおお!!ガ―レットぉぉぉ!」
渾身の一撃が繰り出される。
それに対抗すべく、全力を振り絞って試合用の木刀を振るった。
両者の攻撃が激しくぶつかり合う。
そして…
バキィイイン! 鈍い音を立てて砕け散ってしまった。
「えッ…」
「なッ…」
予想外の出来事に呆然とする二人。
次の瞬間、リオンはガ―レットに殴り飛ばされていた。
激しく転がっていく。
だが、それでもすぐに立ち上がった。
一方、ガ―レットの方はというと…
なぜかその場で固まっている。
そして、ゆっくりと倒れかけるも、何とか起き上がる。
試合用の木刀が折れたと同時に、互いが素手で殴り合ったのだ。
「くッ…ガ―レット…」
「あうッ…り、リオン
互いの攻撃に耐えきれず、武器を失ってしまったのだ。
もちろん二人とも、控えから新しい武器を受け取る権利はある。
しかし…
「こうなったら…」
「素手で勝負だ!」
リオンとガ―レット、二人はそう叫び同時に駆け出す。
そして、お互いの拳がぶつかる。
「ウオリャアアアアアアアア!!!」
「ウォオオオオオオオオオオ!!!」
二人の雄たけびが会場中に響く。
その後も激しい攻防が続く。
お互い一歩も譲らず、互角の戦いを繰り広げていた。
殴り合いをする二人。
どちらも引かずに殴り続ける。
「オラァ!」
「フンッ!」
リオンの攻撃がクリーンヒットする。
だが、ガ―レットの攻撃もまた、リオンの身体を捉えていた。
両者痛み分けの状況だった。
「まだだ!」
リオンはさらに攻撃を仕掛ける。
だが、その攻撃は空を切る。
ガ―レットは攻撃を避けつつ、カウンターを仕掛けてくる。
それを紙一重で避けるリオン。
再び攻撃に移るが、また避けられてしまう。
しかし今度は、避けた先に回り込んで攻撃を繰り出すリオン。
すると今度は、ガ―レットはカウンターを繰り出してきた。
それを咄嵯の判断で回避し、そのまま攻撃へと移す。
そんな戦いが続いた。
さらに勢いを増して攻めていく。
「ハアッ!」
「フウッ!」
お互いにパンチやキックなどの打撃技を放ち続けた。
やがて、ガ―レットの動きが悪くなってきた。
どうやらスタミナ切れを起こしかけているようだ。
それに気付いたリオンは、ここぞとばかりに攻め立てようとする。
しかし…
「くッ…うう…」
体が思ったように動かない。
互いに体力は限界に近づいていたのだ。
だが、ここで引くわけにはいかない。
やがて限界を迎えたのか、お互いに距離を取る。
そして…
「…次で決めるぞ」
「ああ、そうだな。それがいい」
リオンは全身の力を込めて、最後の一撃を放つべく構えをとる。
対するガ―レットも同じようにしている。
両者の間に緊張感が高まる。
しかし、ここで互いの体力に限界が見え始める。
最初に限界を迎えたのはリオンの方だった。
そのため、徐々に疲れが見え始めてきた。
それに気付いたガ―レットはニヤリと笑う。
そして…
「もらったぁああ!」
渾身の一撃を繰り出してきた。
重い拳の一撃、だがガードが間に合わない。
受ければ負ける…
しかし…
「うッ…おおッ…?」
その声と共に、ガ―レットの拳が空を斬る。
そしてそのままバランスを崩した。
ガ―レットにも限界が来た。
勝ちを確信した瞬間、緊張がふっととけた。
それが逆に油断となってしまった。
その油断が僅かな歪みとなり攻撃に現れてしまったのだ。
「くぅ…」
意識を強く保つリオン。
それにこれは攻撃のチャンスだ。
そう考えたリオンは力を振り絞り、拳を叩きこんだ。
凄まじい威力の攻撃が命中した。
防御しようとした彼の腕をそのままへし折り、ガ―レットの身体が宙を舞う。
そのまま地面へと落下し、倒れたまま動かなかった。
右腕は向いてはいけない方向へと曲がっていた。
「勝者、リオン!」
審判の判定により、リオンの勝利が決まった。
その勝利に湧く観客たち、
消耗戦の果ての勝利ではあった。
すっきりとした試合だったとは決して言えない。
しかし今は、勝利を喜ぶことにした。
こうして第三回戦は幕を閉じた。
「…勝った」
控室で一人呟いた。
予想だにしなかった展開に驚きつつも、どこか納得している自分がいる。
確かに、ガ―レットは強い男だ。
だが、それでも負けたくないという思いがあったからこそ、戦いに挑むことができた。
「…運もよかったな」
そう、運の要素もあった。
もし、あの時リオンの試合用の木刀が折れていなかったら…
ガ―レットの拳があと少しだけ速かったら…
おそらく結果は違っていただろうから。