彰絵名でぇっす
年齢操作あり!ちゅーいです
なーん視点でお送りします
私は今、美大生だ。そして今日は1年生最後の日、つまり3年生の卒業式でもある。だが1年は参加しないため、本当は今日から春休みだ。しかし面倒なことに、謝恩会に誘われてしまった。卒業生でもない私たちが謝恩会なんてする意味あるのだろうか。まぁそれは適当な理由をつけてサボろうと思っていた。そんなことを考えながらリビングに行くと、母親からとあるニュースが飛び込んできた。
「彰人、高校を卒業したらうちを出るらしいわ」
突然の発言に理解が追いつかず、私は呆然としたままその場に立っていた。
この街でずっと歌を続けてきた彰人が、ここを出る…?
全く理解ができないまま一日が終わった。
翌日、「話がしたい」と彰人を部屋に呼び出した。
「んだよ朝からかしこまって」
「ちょっと…聞いておきたいことがあって」
「だからなんだよ。今日卒業式だから早く…」
「なんで出てくの?」
彰人の言葉を遮るように、私はそう問いかけた。
「は?」
本当にかしこまった様子で質問した私を見て、彰人は不思議そうな顔をしてじっとこっちを見つめている。
「なんで?」
問い詰めるようにそう言った。
「そりゃ…歌の上達のためだよ」
「チームの子達も一緒に?」
「いや、向こうに行くのは俺だけ。ほんとにちょっと勉強して帰ってくるから」
彰人は質問攻めする私に言った。
「ちょっとって、どのくらい?」
「もういいだろ。詳しい話は後でするからとりあえず学校行ってくる」
そう言い残して彰人は私の部屋を出ていった。まだまだ聞きたいことはたくさんあったのに。もっと喋っていたかったのに。
彰人が卒業式から帰ってくると、すぐに私の部屋へ来た。
「絵名」
ノックと共に私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「いいよ」
そして彰人を部屋に入れた。
「勝手に出てくって言ったのは…悪かった」
突然、彰人の口から謝罪の言葉が聞こえてきた。私が何か不満に思っているように見えたのだろうか。
「別に、彰人がそう決めたなら応援するだけ」
「…そうかよ」
彰人は少し照れくさそうに頭を搔いた。
「とにかく、俺は明日出ていく」
「は?明日?」
まさか、明日だとは思わなかった。だいたい1週間後くらいだろうと考えていたのに。昨日といい今日といい、衝撃的なことが多すぎる。
「出る時間はお前、寝てるかもな」
少しばかり笑いながら彰人は部屋を出た。
私の意見なんて聞いてくれもしない。でも彰人が将来のために決めたことは、応援以外何もできることは無い。こんな会話をした後じゃ、明日合わせる顔もなくなってしまった。
とうとう出発の朝。私は部屋の窓から彰人を見送ることしかできなかった。お母さんはなるべく来てほしいって言ってたけど、やっぱり合わせる顔は無い。どうしたらいいのか迷っているところに、ついにその時が来てしまった。
「じゃあ俺、行くから」
「ええ。頑張ってね、行ってらっしゃい」
「行ってきます」
キャリーバッグを引きずる彰人を部屋の窓からじっと、じっと見ていた。
するとお母さんが部屋の前に来た。
「絵名?起きてる?彰人、もう言っちゃったわよ?」
そんなの知ってる。見てたんだから。まだお別れの挨拶もできてない。
「絵名?」
……
「今……合う……」
「絵名?大丈夫?」
「今から行けば、間に合うかも…!」
そう言うと私はすぐに勢いよくドアを開けた。そこにいたお母さんも最初は戸惑っていたようだが、すぐ察してくれただろう。
私が彰人に追いついたのは、駅についた頃だった。
彰人、彰人はどこにいるんだろう…最後に一言くらい…何か…!!!
「…彰人!!!」
彰人を見つけた。思わず大声で叫んでしまったが、周りに人は少なかった。
「絵名…!?」
困った様子で私を見る彰人に、私はすぐ抱きついた。
「っ!?」
「彰人…!ごめんね、お見送り行けなくて…」
少し声が震えているのが自分でもわかる。今、私は泣くのをグッと堪えている。
「別に…てか、何してんだよっ…!」
咄嗟に抱きついたまま、言葉を交わしていた。
「彰人にこれだけ言いたくて…」
少し深呼吸をしてから、私は彰人にこう言った。
「絶対、いい結果が得られるように頑張ってね!」
「絵名…」
私は彰人にそう伝えると、全身に入っていた力が一気に抜け、彰人の方に倒れ込んでしまった。
「おっと、大丈夫か?」
「っ、ごめん…」
「ありがとな」
「…うん」
私は今、嬉しさと悲しさが混じるという複雑な感情だった。
「そろそろ電車来ちゃう?」
「そーだな。…絵名、ちょっとこい」
彰人に腕を引っ張られ、すぐそこのコンビニの陰に連れていかれた。
「何よ、こんなとこで━━━━」
私を黙らせるかのように、彰人は私に口付けをした。何が起きたのか分からない。
「お前、顔赤すぎ」
彰人にそう言われるが、今はそれどころじゃない。私たちは姉弟なのに。姉弟のはずなのに。どうしてか、少し嬉しい気がした。
「ん、電車来たな」
「じゃ、またね」
「おう、また」
そう言って手を振りながら、私と彰人は分かれた。
ありがとーございました!
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ではでは〜!