テラーノベル
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注意事項は前の前の前の…
ぜんさんVSレイラーさん
正直私もどっち勝つかわからん
レイラーさんが死ぬ前の時間時空で
それでは、レッツファイト!
──────ぜん side
「わぁっ!?」
ピリッとした感覚が全身を走り、思わず目が覚める。反射的に身を起こすと目の前には魔導書を片手に少しキリッと瞳を上げたレイラーさんがいた。さっきの雷はおそらくレイラーさんが放ったのだろうと理解する。弱冠ピリピリとする手は新しい感覚で少し面白くも感じた。
「…あの、ここどこですか?」
ふと辺りを見回し、何も無いこの白い空間に疑問を持つ。先に起きてたであろう、もしくは状況を理解できてるであろうレイラーさんに尋ねるが、レイラーさんは首を横に振る。
「私にも分からなくて…。会議が終わっていざ向かうぞ!って言うところまで記憶はあるんですけどそこからなくてですね…。」
「ぽれも記憶ないんですよね。」
お互いにお互いの現状を把握しつつ、部屋からの脱出方法を探す。
──────ものの数分も立たずにぽれは扉を見つけた。急いで報告しようとしたが、その扉には不可解なことが書かれていた。
【相手の魂を破壊しないと出られない部屋】
「へぇ!?」
その文言を見て思わずすっとんきょんな声が出る。ぽれはお腹をさすりながらその言葉について考える。魂の破壊。死よりその先の工程。存在の抹消と同義であり、二度と誕生できなくなる。地獄の所業の後に行われる最後の償い。
──────と、ベール(ベルゼブブ)が言っていた。
(おい、ぜん。これを知っているのは俺達だけだ。不意打ちであいつをやれば出られる。サクッと食っちまえ。)
ベールがそう囁いてくるが、ぽれはそうするわけにはいかなかった。レイラーさんを殺したくない。シンプルだが、重い感情。まだ、ぽれには決断できなかった。
「ぜんさん。見ちゃいましたか?」
「ひゃぁ!?」
またしても驚いて声が出てしまう。後ろには微笑を浮かべたレイラーさん。けれど今はその笑顔に不気味さを覚える。───見ちゃいましたかって…
「レ、レイラーさんは知ってたんですか?」
「はい。ぜんさんを起こす前に確認しました。まあ、扉から離したところでおこしましたがね。」
そうスラスラと話をしてくれる。けれど、その声はだんだんと力が籠っていき、最後には圧をかけるような重い一言となっていた。
「さて、それを見てどうします?私と戦いますか?」
「ぽ、ぽれはレイラーさんを殺したくは───。」
「なら、死んでください。」
その瞬間、ぽれの全身に岩で押しつぶされたかのような重圧を感じる。身構えることも出来ず、そのまま勢いよく地に落ちる。───起き上がろうにも体が重い。重力操作だ。重力に対抗できずにもがいているとレイラーさんが話始める。
「別にぜんさんが生きたいって言うなら私は譲るつもりでしたよ?けど私だって生きたいんです。私はぜんさんを殺す決意はあります。師匠のために何でもすると誓ったので。」
重い重力に抗う。何者かに成り代わろうとしたが、上手く纏うことが出来ない。──────何らかの結界がぽれの能力が使えないように作用しているらしい。まさか、ぽれが呑気に寝ている間に整えていたとでも言うのか。最悪な想像が脳裏によぎる。
「だから私を殺してでも生きたいって言うなら覚悟を見せてくださいよ。何となくで魂を受け渡すほど私の命は軽くないです。」
「う゛あ゛ぁ゛ッッ!!」
「…その程度で勝利を譲るわけにはいきません。私は、勝って師匠の手足とならないといけないんです。」
レイラーさんがそうやる間にも重力はどんどん増していく。───勝てる気がしない。ぽれの本能がそう悟る。本当に、殺す気でやらないとレイラーさんに勝てない。そう決意し、ぽれは重力に強く抗うことにする。全く起き上がれない。けど、ほんの少しだけ体が浮いた。レイラーさんの顔が見えない。それが、尚更恐ろしくしかしぽれを奮い立たせた。───負けてられないんだ。
「…ふーんやる気なんですね。なら、お相手しましょう。───魂をかけて。」
その一言で、ぽれの全身を縛っていた重力が解かれる。───相変わらず能力は使えない。ぽれにとって生身一つの戦いだ。
「やってやりますよ!!ぽれは!ぽれが生きてやる!!!」
決意を宣言し、ぽれは自身の爪を伸ばす。唯一の武器。あらゆる魔法が使えるレイラーさんにとってはしょぼい武器であるがぽれにとっては充分なものだ。
「ライトニング。」
その端的な一言だけでレイラーさんの周り全体が雷雨のように、いやそれ以上に雷が連続して落ちる。真っ白い空間に、黄色に近い輝きがいくつも落ちる。ぽれはそれを野生の勘と言うやつでひらりとかわし、爪で切りかかる。
───が、それはあっけなく出現した透明なバリアによって防がれ、逆に爆発魔法で大きく吹っ飛ばされる。
「ガバッッ」
「その程度で私を殺せると思わないでください。舐めすぎです。」
レイラーさんの冷ややかな目でぽれの心臓が貫かれたかのような、そんな精神的な苦痛が与えられる。どこまでも冷たい瞳には確かな油断があった。けれど、油断しても平気な程にレイラーさんは策を張り巡らせているのだとぽれは知っている。レイラーさんは徹底的に戦略を立て、勝率を確率とし、確実に相手の命を奪い勝ちに行く。そして、彼女の決意もまた、ぽれと同等かそれ以上のものであるのだ。
「初級魔法だけでも勝てちゃうかもしれませんね?」
レイラーさんがそう冷笑を浮かべながら咲き乱れるかのごとく5色の炎が散爆する。オレンジ、赤、青、紫、黒───鮮やかな色が舞い、華やかさとは一転、当たれば内蔵を燃やすほどの痛みに悶えることになるだろう。ぽれはそれを交わす。
───だが、炎はそれすら読み切っていたかのように交わした位置に正確に当ててくる。
ゴォッと勢いよく音を鳴らしたその青色の炎は一気に全身に燃えめぐり、ぽれの皮膚をただれさせ、ぽれの内蔵を狙ってくる。───消化するすべはない。しかもこの炎はなかなか再生せず、痛みも増すばかりだ。痛い、痛い、痛い。思考が痛みによって塗りつぶされ、冷静が保てなくなる。
「アクア。」
その一言によってぽれに纏っていた炎は消化される。消化した相手はレイラーさんしか居なく、ぽれに衝撃を与えてくる。
「…え?なんで?」
先程まであんなにバチバチだったのに、今はさも当然かのようにぽれの肉体を癒してくれている。───意味がわからない。あのままやればぽれを殺せたのに。今助ける意味がぽれには分からないのだ。
その疑問に答えるようにレイラーさんが言う。
「私は、勿論生きたいです。師匠の役に立ちたいんです。けど、師匠との約束も破りたくない。」
その瞳には涙が溢れ、留まることを知らず頬をつたい流れる。────泣いているのだ。先程までの笑みが嘘のように…。
「めめ村の人を守ってね、って言われたんです。だから、私はぜんさんを殺せないんです。だけど、ただやられるのは癪なのでね!決意を確かめさせてもらいましたよ!」
不自然な笑みを浮かべながらそういう。泣くのを我慢して笑っているのだ。その表情は痛々しくて見ていられなかった。───あれほどの魔法を用意したのは、ぽれの決意を確認する為だけに?先程までの態度はもしかして演技だったのか?
なおも絶えない疑問は1度全て捨て、レイラーさんに向き直る。レイラーさんはにこりと笑い───。
ぽれを勢いよく突き飛ばした。おそらく重力をかけられて、およそありえないほど遠くに吹っ飛ぶ。レイラーさんが見えなくなったところで
ドォオオオオオオオオオオオンッッ!!!
その爆音とともに爆発が起きた。
───ガチャリ。
無機質な音が脱出の許可をだす。つまり、レイラーさんは───。
「…ぽれは、守られてばかりだなぁ…」
酷く枯れた声でそう一言呟き、ぽれは扉を抜ける。
どこまでも続く青空がレイラーさんの瞳と重なる気がした。
ここで切ります!最終日はルーレットで決めさせてもらいました!いや〜なかなかに良かったのではないでしょうか?皆さんの中でレイラーさんは弱く、ぜんさんは強いイメージで塗り固められているでしょうが案外そんなことがない、というのが書けてよかったです!
それでは!おつはる!
コメント
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レイラーさんは普通に強いイメージあった
正座とかで痺れて手足ピリピリするの楽しいよね昔謎にハマってた