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かなり前に書き殴りしていた長編
⚠︎実在する方の名前が出てきますが、ご本人様にはなんの関係もありません⚠︎
⚠︎キャラ崩壊・軍パロ・能力パロ⚠︎
nmmnルール必
問題等があったら即消。
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とても、とても天国とは遠いような。
人の叫び声、泣き声、呻き声、血生臭い匂いに耳を劈くような甲高い銃声が鳴り響く荒地。
「……はぁ、……はぁ」
腰に巻きついていた屍体が、ずるりと屍体の上へ重なり潰れる。
頭を踏みつけ、俺は今、自国の旗を掲げた。
「……勝利」
WIN
――――――――――――――
戦場とは違う、黄色い歓声。真っ青な青空の下、俺は自国を馬車に乗り、国民に囲まれ進んでいた。向かう先は国王、グルッペン・フューラーが待つ本拠地。
かつて、約十人以上だった戦闘員は俺含め四人となり戻ってきた。
真っ青な空に飛び散るキラキラと光った花びら。俺らを祝福するかのように手を掲げる国民たち。
これが、……これが……
「……英…雄……」
夢にみた、英雄。
……これが?
これが、本当になりたかった、英雄?
「大先生」
「……トントン」
優しく、穏やかな声で名前を呼ばれ、俺の意識は現実に戻った。
太陽が眩しく瞳に光を落とした。
「……鬱、これが英雄や…。夢が叶ったんや、……俺らは責務を全うした。……その答えが、国民たちのこの歓声でわかるやろ。…だから、その…気に病むなよ」
そう言う彼は、声と同じく穏やかな目をしていた。戦争を終えた、……地獄から解放された人間のようだった。が、瞳には前のような光は宿っていない。希望が、俺らにはもうないのだろうか。
――――――――――――
「……よくやった、……皆」
静かな会議室。一つ、国王の声がしんと静まった部屋に響いた。
前よりも、少し広く感じる会議室には、もうあいつらはいない。
「……俺ら、これから……いつもの生活に戻れるんか……?」
不安が入り混じった声色で、そう言う彼は珍しい姿だった。
そんな彼に一言
「ああ、……もう戦わなくていいんだ。……よく頑張ったな、ゾム。」
その言葉を聞き、やっと、今、緊張の糸が切れたのか。……彼の大きな黄緑の瞳からは大粒の涙が溢れた。
目を真っ赤に腫らし、何度も何度も出てくる涙を拭う彼は、今、どんな気持ちなのだろう。
きっと、仲間を亡くした悲しさ、戦争からの解放の喜び、安心、人殺しの後悔……グルッペンは、静かにゾムの言葉を聞いていた。
そして、ゾムの頭に手を置き、安心を与えるような笑顔で言った。
「……お前は、頑張った仲間の分も……他の、人間の分も、……そして、これからも。奪った命、無くした命を背負って、その人達の分まで幸せに生き、穏やかに死ぬんだ。……それが、お前に残された最後の使命だ」
ゾムは、眠るまでずっと涙を流し、泣いていた。
ゾムが眠り、部屋に送った後。会議室には再度,沈黙が訪れた。
「……そのー、なんだろ……英雄って、そんな良いもんでもないなぁ……(笑)」
思わず、そんな言葉が漏れてしまった。
昔の俺の英雄像は、
かっこよく、キラキラと光り、仲間と共に希望の中悪と戦い続け、打ち勝ち、国民から盛大に祝ってもらい、幸せに生涯を終わる。
……そんな風に、考えとったんやけどなぁ。
「……まぁ、トントンも、……グルッペンも疲れとるやろ、……会議はまた、明日にやろや」
そういうと、トントンは静かに頷き、グルッペンは命を下した。
「二人とも、会議は終わりだ。……部屋に戻れ」
『ハイル・グルッペン』
――――――――――
静かな室内。俺はベッドの上に座る。
戦争から生きて帰ったのは、俺、トントン、ゾム、そしてショッピ。……ショッピに関しては、奇跡だと思っても良いほどだ。
「チーノ!!」
そう叫ぶショッピの声が聞こえたのは、戦争の中盤あたりだったか、それとも終盤だったか。
視線を声が下方向へ向けると、そこには真っ赤な血に倒れ込むチーノと、そしてそれを抱え生存を保とうとするショッピの姿だった。
その時に、俺がそこへ助けに行けば良かったのか。、ショッピの背中に迫る敵の存在に気づき、俺が助けに行けていれば、変わったのだろうか。
一人の敵が、無防備なショッピの背中目掛け鉄の棒を振りかざすのが見えた。
そして、次に見えたのは、ショッピを庇い鉄の棒を腹に突き刺すシャオロンの姿。
同じ新人同士の、チーノが目の前でやられただけでも辛いだろうに、その上次はシャオロンが死んでしまった。
その出来事は、ショッピの精神に大きな被害をもたらしたのだろう。今は我々軍の精神病棟にて治療中だ。……もう、きっと戻ることはないが。
トントンも、確か……そうだ、ひとらんが目の前でやられたんだっけかな。
目の前で確か………真っ二つに引き裂かれて、悲鳴を上げる隙すらもなかったんだったか。
それなのにトントンは俺らの精神の心配をした。……流石やなぁ、トントンは。
ゾムはどんなんやったか。……あぁ、エーミールか。
あそこはよく仲良くしとったもんなぁ。意外に。
俺も、少しだけみていた。
エーミールは、最後の最後まで仲間の心配をしとった。
「……後は、頼みました」
無線でそう伝えられた遺言は、その後の戦場において我々軍を勇気づけるのに大きく関わった。
ゾムは少しの間、エーミールの側からは離れていなかったが、覚悟を決めたのか、数秒後にはエーミールの側からは消えていた。
エーミールには感謝せんとな。……ほんま、なぁ。
今までの思い出が脳内で思い返される。
「……せっかく気にしてないんだから、やめろよなあ……」
独り言のようにそう呟き、タバコに火をつける。
俺の前では、二人死んだ。
シッマと、ロボロ――――俺との関わりが深かった二人が、よりによって俺の目の前で死んでいった。
それに、二人の最後の言葉が「大先生、幸せになれよ」なんか、よう泣かせてくれるなぁ。流石やなぁ。
確かに、二人の死は俺にとっても、ものすごく重いものだ。だけど、……最期にそんなこと言われちゃあ病むこともできへんなぁ。……なぁ?シッマ、ロボロ?
……いや、これは言い訳にすぎへんか。
「……涙の一粒ぐらい、……出てくれよなぁ、俺の涙腺よぉ……」
乾いた目蓋に手を当てる。涙が出る気配など、これっぽっちも見つからなかった。
戦争が終わり、旗を掲げた時。俺の脳内にはただ一つ、
「ああ、やっと終わった」
仲間の死を泣いて悔やむこともできず、唯々これからの平穏な日々に安心した。
だが、エーミールの死に泣いて、泣き叫んで悔やんだゾムを前にしてなんで俺は二人の死を間近でみたのに、涙ひとつも出ないのか。と、自分に嫌悪を抱いた。
しかしそんなことをしても二人が,仲間が帰ってくることはない。
「……ふぅー……気ぃ悪いわ……(笑)」
俺は無心で医療室へ向かっていた。
「……お帰り。大先生」
久しぶりに見るその笑顔は、きっと俺に安心を与えてくれた。
「……ぺ神……」
いつもと変わらぬ様子に、今、やっと心がほぐれた気がした。しばらく医療室前に立ち止まった後、ぎこちない動きで室内へ足を踏み入れた。
「……ご、ごめんなぁ、久しぶりに見たら感動しちゃって」
「全然大丈夫だよ。……俺も、大先生が生きてて嬉しいよ」
俺の良心は、この時にやっと思い出したのか、誰かにこの気持ちを伝えなければ俺は俺では入れなくなってしまう感覚に襲われた。罪悪感に近い。
「……ペ神、……少しだけさ……俺の話、聞いてくれる?」
「……いいよ。いくらでも聞くよ、どんなことでも、最後まで……」
そして、俺は話し始めた。
この残酷な、英雄譚を。
話は、数ヶ月前に遡る。