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表紙イラスト新しく書きました。
今日はメグの神社での夏祭りだ。
僕は浩人と一緒に出店を回っていた。
「すごい、今年も人が沢山いる」
僕がそう言うと、
「祭りだからね。老人ばっかなこの町に若者が沢山集まるのはこれくらいしかないよ」
浩人、コウはそう言った。
数日経ち、コウのそう言う口調には慣れたが、やはり違和感は抜けない。
「俺、人が多いとこ嫌いなんだよね」
「でも去年は何ともなさそうだったけど」
「いや、前からムリ」
去年も一緒に祭りに行ったが、そんな感じはしなかったし、言ってなかった。
「??」
「何で来るかというと、心配だからだよ」
「何が?」
「ゆきくんが。1人にすると何があるかわかんないし。めぐるさんが一緒なら良かったけど神社の主だけあって忙がしそうじゃん」
「別に僕1人でも大丈夫だ」
「大丈夫じゃないから来てんの」
そう言ったコウは、目線を歩く人達に向けた。
「地元の老人だけなら心配はないけど、今はどっかの大学生とかオッサンがわんさかしてるからね。ゆきくん変なオッサンに絡まれた事ないの?」
変なオッサン、、。この前入院した時に同室だったオッサンの顔が浮かび、僕は身震いした。
「な、なくはない」
「分かった?」
「、、ハイ」
「分かったなら良いよ。話変わるけど、アイス買わない?」
「買う。奢るよ」
付いて来てくれたお礼もあるが、一応2万円は持ってきたし。
辺りは祭りの喧騒でいっぱいだった。コウは嫌いと言っていたが、何とも無さそうにアイスを食べていた。見た感じ普通に大丈夫そうだ。
わいわいと騒ぐ少年らの姿が前の僕らを彷彿とさせた。
、ハルが亡くなる前は、毎年京介とハルと僕の3人で花火大会に行っていた。
ハルが亡くなってからは1度も花火大会には行っていなかった。
、、そういえば、京介が誘ってくれてたっけ。
何だか申し訳ない気分になった。
戻ったら京介と遊ぶと心に決めた。
「ゆき」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
振り返ると、袴姿のメグがいた。
「ちょと来てくれ」
右腕を掴まれた。
「えっ」
「説明は後だ」
そう言ったメグは僕の手を引きながら走りだした。
「頼む、千夏の変わりに巫女をしてくれないか?」
神社の奥に連れていかれたと思ったら、メグは唐突にそう言った。
「巫女?」
「そうだ。やぐらに立ってお祈りするだけで良い」
「お祈り、」
「頼む、というか頼んだ」
「え?」
気づたときには遅かった。
謎の赤い袴を着たお婆さんがやってきた。
「ほう。なかなかいい顔をしているじゃあないの」
「だろう。ちよ婆頼んだ」
「ああ。任せとき」
「??」
「ほれ、時間がないんじゃ、早く脱ぎな」
「脱ぐ?」
「はよせい」
「え、まって」
どういう事か聞こうとしたが、ちよ婆?さんに睨まれ、仕方なく上着を脱いだ。
「下もじゃ」
「え、」
「ほれ、はよせい」
急かされ、ズボンも脱ぐと、肌着姿になってしまった。
すると瞬時に着付けをされた。ちよ婆さんと同じ赤い袴だ。??
「ちょ、痛、」
髪を引っ張られた。すると、頭に何か付けられる。黒く長い髪の様なものが顔を覆う。が、すぐにそれが後ろの方に持っていかれた。
「化粧でさいごじゃ」
「化粧、?」
「ほう。なかなか傑作じゃ。見てみぃ」
ちよ婆さんは手鏡を見せてきた。
は、、、
そこには少女?の姿が写っていた。
「化粧が崩れるから顔は触るんじゃないよ」
「は、はい」
ちよ婆さん、なんだか怖い。
「あら、代理の方ですか?」
「千夏ちゃん。見てみぃ」
右手を骨折しているらしい女性が僕をみた。
「まぁ、、!」
、、恥ずかしい。途端に恥ずかしくなって来た。
「こんなに綺麗な方が居たなんて、、。では、お祈りの仕方をお教えしますね」
「……」
僕は群衆の視線を前に固まっていた。頭の中が真っ白になる。お祈りってどうするんだっけ、、
さっきまでは騒がしかったのに、辺りは一気にしん、と静まり帰った。視線が痛い。怖い。手が震えた。どうしようか、、どうすればいんだっけ、
視線をさ迷わせると、千夏さんが僕にサインを送ってくれた。
僕は我に返り、お祈りを始めた。
「緊張した、、」
「お疲れ様です。少しぎこちなかったですが、お上手でしたよ」
そう言った千夏さんがお茶をくれた。
「ありがとうございます、」
やっぱりぎこちなかったか、。というかめっちゃ写真撮られてた、、。恥ずかしい。
「ゆき、ご苦労だった」
メグがやってきた。
「、、うん」
「綺麗だぞ。だから皆君を見ていた」
「……」
、、そっとして置いてほしい。これは黒歴史になりそうだ。
「、、そろそろ着替えていい?」
「それは勿体ないな、その格好で少し歩いてみたらどうだ?、、俺も一緒にい」
「めぐるさんは仕事です」
「くっ、、ゆき、すまない、、」
「一緒に写真撮ってくれませんか?」
「写真撮ってもいいですか?」
外に出ると、すぐに人に囲まれた。
「え」
なんかもう撮られてるし、。
「ええっと、、ごめんなさいっ」
僕はそう言って人混みから逃げ出した。
キョロキョロと辺りを見回す。ここには人は居ないようだった。近くにあったベンチに座り、ため息をついた。
さっき着替えようと思っていたが、僕の服が無くなっていた。だから千夏さんにもう暫く我慢して欲しいと頼まれたのだ、、。
「ゆきくんここにいたんだ」
「コウ、、」
「お疲れ様。みんなゆきくん探してる」
「う、、」
「俺もその格好めっちゃ似合ってると思うよ」
「やめろ、、」
「wwごめん。ところでさ、」
コウは笑いながらこう続けた。
「見て、さっきのめっちゃ拡散されてる」
「は?」
コウはスマホの画面を見せてきた。そこには、やぐらでの僕の姿が写っていた。
「はぁあ!!?」