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第1話:嵐を呼ぶ「無自覚」転校生春の陽光が差し込む私立六越学園。
この平和な共学校の静寂は、一人の転校生の登場によって、いとも容易く打ち砕かれようとしていた。
【廊下:生徒たちのざわめき】
「ねえ、聞いた!? 今日の転校生、とんでもない美少女らしいよ!」
「見たやつが言ってたけど、透明感がエグいって。モデルか何かかな?」
「男子たちが教室の窓に張り付いててマジで邪魔なんだけど……」
女子生徒たちが呆れ顔で話す傍ら、男子生徒たちは鼻息を荒くしていた。
「おい、来たぞ! あの子か……!?」
「……っ! 綺麗っていうか、可愛いっていうか、もう……暴力的なまでの美貌だな……」
そこに、一人の少年が静かに、しかしどこか浮世離れした雰囲気を纏って歩いてくる。
すち。
腰まで届きそうな艶やかな髪、吸い込まれそうな瞳。
「女子が羨む」という言葉すら生ぬるい、奇跡のような造形。
だが、彼が口を開くと、一人称は意外なものだった。
「……あ、ここが職員室かな。場所、間違えちゃったかな。僕、方向音痴だし……」
小首を傾げるその仕草に、周囲の男子(と一部の女子)が、一斉に胸を押さえて悶絶した。
「「(僕っ娘……!! 属性が過多すぎる!!)」」
【生徒会室:シクフォニの日常】
一方、学園の権力と人気の象徴である生徒会室では、5人の少年たちがいつも通り雑談に興じていた。
らん:「はい、これ次の企画案。……あーあ、企画もいいけど、そろそろ『すち』とも対面で会いたいよな」
なつ:「それな! 届けてもらったあいつの手料理、マジで美味かったもんな……。あんな女子力高いやつ、どんな顔してんのか気になるわ」
いるま:「……お前ら、食い物のことばっかだな。まあ、俺もあいつの歌声のセンスは認めてるけどよ」
こさめ:「すちくん、この学校にいたら楽しそうだよね! こさめ、一緒に遊びたいな〜」
みこと:「ふふ、みんなに愛されてるね。でも、彼も忙しいみたいだし、会えるのはまだ先かな?」
彼らはまだ知らない。
話題の中心にいる「歌い手仲間」が、今まさに同じ校舎に足を踏み入れたことを。
そして、彼らが「絶対的な美少女」だと信じ込んでいる転校生が、実はその「すち」本人であることも。
【1年A組:混沌の幕開け】
「えー、今日から編入することになった……」
担任が言い切る前に、教室内は阿鼻叫喚の渦となった。
「「「「うおおおおお!! マジで可愛い!!!」」」」
すち:「(……? みんな、元気だなぁ)……すちです。あ、えっと、趣味は料理で……これからよろしくお願いします!」
はにかむような笑顔。その瞬間、教室の隅で二人の男子が別の意味で限界を迎えていた。
Yくん(モブ):「(ブツブツ)……あぁ、すち。今日も最高だよ……。その細い腰、抱き心地良さそう。すち、食べたい。今日こそ僕の受けになってくれるよね……(妄想中)」
Jくん(腐男子):「(Yを蹴飛ばしながら)おい、キモい妄想を垂れ流すな! すちは、もっとこう……気高く、かつ可憐に翻弄される総受けなんだよ! 僕は、すちを愛でる全ての攻めを応援する側なんだ……!」
二人の不穏な視線など露知らず、すちは「友達がいてよかった!」と安心したように微笑む。
すち:「あ、YくんにJくん! また同じ学校になれて嬉しいな。僕、緊張してたから助かっちゃうよ」
天然の魔性が、無自覚に学校中を狂わせ始めていた。
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