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「こんにちは~」隣の家の玄関を開ける。
この家とは家族ぐるみの付き合いで、鍵がかかっていなければいつもそのまま開けていた。
「ん~?あ、たか兄。どうしたんです?」
顔だけ廊下に出したのは2歳年下のなつきちゃんだ。
「あ、なつきちゃん。貸してた辞書を返してもらおうと思ったんだけど…いる?」
「お姉ちゃんならまだ帰ってませんよ。探して持っていきます?言っておきますよ?」
「じゃあ見てきていい?」
「どうぞ~」
よくあることだ。
すっきりとした、物が少ない部屋。いつも片付いている。性格だな。
しかし…机周りに辞書はなかった。
本棚にもない。
これは持っていってるのかな?
しかたないから一度帰るか。
下におりてなつきちゃんに声を掛ける。
「なつきちゃん、見つからなかったからまた来るよ」
「ふーん。お姉ちゃんが帰るまでここで待ってます?すぐに帰って来るんじゃないですか?」
なつきちゃんは再放送のドラマを見ていたようだ。
辞書が無かったら帰ってもな…
「じゃあ待たせてもらおうかな」
「は~い」テレビから目を離さない。
なつきちゃんは黒いキャミソールと短パンを着てアイスを食べていた。
いつも元気ななつきちゃんも、今は大人しくドラマを見ている。
隣に座って一緒に見る。
途中からだけど知っている内容だ。
あれ?確かこのあとちょっとしたベッドシーンがあったような…
久しぶりに見たそのシーンは記憶と違い、かなり濃密な、水っぽい効果音も交えたものだった。
うわ、気まず…
なつきちゃんは黙って見ている。
やがてその場面をクライマックスに次回予告になった。ふぅ
「お姉ちゃん遅いですね」
突然話し掛けられ驚く。
「あ、そうだね。寄り道でもしてるのかな?」
「ん?慌ててどうしました?」
慌てているように思われた…慌ててたけど。
さっきのドラマのせいで少し…ポジが悪い。
ふっと、こちらを見たなつきちゃんの目が輝く。
「どうしました、それ?」
しまった、見られた
「どうって?別に?」
「うそうそ!大っきくなってるじゃないですか。さっきのドラマで?」
なつきちゃんはかなりのいたずらっこだ。
昔から泥団子の食レポをさせられたり、ザリガニの穴に手を突っ込まされたりと、何度なつきちゃんの興味にひどい目に遭わされたか。
ここは穏便に済ませたい。
「違うよ。ズボンのしわだよ」
しかしそんなのでごまかされるなつきちゃんじゃない。
がっと掴んで
「ほら、違うじゃないですか。なんで誤魔化すんです?」
うわ、ちょっと!
「ふーん。たか兄も男なんですね」
と変な感想を言う。
「ね。どうなってるかちょっと見せてくれません?」