テラーノベル
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楽屋に入り、カバンを適当にドサッと置くとソファに座る。薬の効果が出てきたのか頭痛がだいぶ収まっている。ソファに背中を預け、「ふぅ…。」と1度息を吐き、目をつぶりながら天井に顔を向ける。
目をつぶると多少は体のだるさがマシになる気がした。
吉田はそのまま眠りについてしまった。
「おはよぉー」
「おあよーー」
扉が開き、山中と欠伸をしながらの佐野が入ってきた。2人は珍しく適当に置かれた吉田のカバンに気付き、ソファで静かに寝てる吉田本人を見る。
3日前、くしゃみをしてた時はそれ以外なんの症状もなかったため、そのまま流したのを2人とも同時に思い出す。佐野は寝てる吉田に静かに近付きおでこに手を当てる。
「んーーーー、びみょー」
「うそ、熱ないの?」
タイミング悪く、いちばん薬の効果が効いているため、平熱寄りの体温になっていた。
触られたことに気付き、吉田は目を覚ました。
「ん、あれ、2人ともいつの間に来てたの。」
「おはよじんちゃん。しんどい?」
山中は直球に聞いた。急な質問に吉田は少し驚いたが平然を装い誤魔化す。
「っえ?いや全然元気だけど。」
「ほんと?ほんとのほんと?無理しちゃだめだよ?」
「大丈夫だって。ほんとに。」
実際この時の吉田は薬のおかげで熱も下がり、頭痛も収まっていた。少し寝たことによって多少回復した体に吉田は安心してしまい、少し喉は痛むものの、大丈夫だと答えてしまった。
「仁人。しんどくなったらすぐいえよ。」
「そんな心配しなくていいから。……でもありがと。」
「めっずらし!仁人が素直にお礼言ったぞ!」
「これやっぱ熱あるって!」
「俺もお礼ぐらい言うわ!!」
3人で騒いでいたら残りのふたりも楽屋に到着し、吉田の体調の話はそのまま流されてしまった。
体調が悪い時に限って、物事というのはスムーズには行かないものだ。
スタッフのミス、出演者のミス、連絡の行き違い、タイムスケジュールのズレ、諸々が重なって押しに押しまくったバラエティの収録は1時間以上延長してしまった。その間休憩はなし。吉田の体はいくら薬で症状を抑えているからと言って、万全では無い。だんだん頭痛が復活してきてしまっていた。
が、吉田はもう芸能界10年以上のプロ。痛みを表情に出さないことくらいは余裕だった。
次の仕事まで、本当は休憩があったはずなのに……。
そう思っても時間は容赦なくすぎていく。次の雑誌撮影まで、移動時間の間のみの休憩となってしまった。
今回はありがたいことに、雑誌の表紙をみんなで飾れることとなったため、その撮影に挑む。外の大きな噴水のある公園での撮影を行うため、全員で車に乗りこみ移動していた。
吉田はなるべく体力を使わないよう、車の中ではイヤホンをして周りの環境から自分をシャットアウトしていた。吉田は他の人といる時でもよくイヤホンをしているため、メンバーはそれを不審に思うことはなかった。
公園に到着し、車からおりる。その瞬間、吉田は太陽の眩しさに目の前が一瞬だけ真っ白になる。1歩だけ後ろにふらついたが、幸い誰にも見られていなかった。
撮影は噴水の前で行われていた。太陽の光にプラスしてフラッシュが焚かれる。その度に頭痛が吉田を襲った。ズキズキと目の奥の方で痛む。目をつぶりたくなるのを必死に我慢して笑顔を作っていた。
「吉田さんもう少しだけ柔らかい笑顔できますか。」
「はい。」
1回深呼吸をして全身の力を抜く。そのまま笑うとカメラマンは認めてくれたようで、褒めながら写真を撮っていた。
撮影が終わるころには薬の効果は完全に切れていた。
体は泥のように重く、頭は脈打つようにズキンズキンと痛む。熱は分からないが多分朝より上がっていることだろう。咳も復活してきており、我慢するのに必死だった。
誰かに言おうかと思った。
でも朝自分で「大丈夫」だと言ってしまった以上、簡単には言い出せないのが吉田の性格だった。
また薬飲めば大丈夫だし。
そう自分に言い聞かせ、また事務所に戻るための車に乗り込んだ。
コメント
1件
のりもちさん、第8話読ませていただきました。 吉田くん、体調悪いのに無理しちゃってる…「大丈夫」って言っちゃった手前、言い出せないもどかしさがじわじわ伝わってきました。薬で症状を抑えてる間のギリギリの笑顔とか、目が真っ白になるシーン、すごくリアルで胸が苦しくなりました。 メンバーとの軽いやり取りの中に垣間見える優しさも好きです。特に「仁人が素直にお礼言ったぞ!」って流れ、いいチームだなあって。 この後の展開、すごく気になります。のりもちさんの繊細な心理描写、いつも楽しみにしてますね🌷
ここ
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#ご本人様とは一切関係ありません
🎼🍵大好き※1ヶ月猫化中
164
#ご本人様とは一切関係ありません
ぬま子
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