テラーノベル
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俺を照らせる光はお前だけ。
――…光がなくなるなら、追うまでだ。
いつものように画面越しに相棒に話しかけようとしたら、
ただの黒い画面だけが残っていた。
……何だ、これ。
胸が急に激しく脈打つ。
いつも見える相棒の姿が見えない。
血の気が引いていくのが自分でもわかった。
俺は迷わず空間を切り裂き、相棒の気配を追った。
次に目を開けたら、そこは――
光と音と笑い声に溢れた、見たこともない場所だった。
カラフルな看板。
乗り物に乗って叫ぶ人間たち。
甘い匂いのする食べ物。
楽しそうに走り回る人々……。
……遊園地?
ふっと、相棒の気配を感じた。
迷わずその方向へ歩き出す。
……見つけた。
相棒が、ひとり寂しそうな顔でポップコーンを片手にベンチに座っていた。
俺はそっと近づいて、
「……相棒」
相棒がびっくりして振り向く。
「……サーティーン!? 本物!?」
目を丸くした相棒は、俺の姿を上から下まで一瞬で見渡すなり、
「いや、目立ちすぎ!」と叫んだ。
「鎌しまえ、顔隠せ! 服はとりあえず私のパーカー羽織って! 急いでパーク内で何か買ってくるから、ちょっと隠れてて!」
勢いよくまくし立てられて、俺は一瞬固まる。
……またどっか行っちまうのか?
少し不安がよぎったけど、
それでも相棒がここにいることが嬉しくて仕方なかった。
「ったく、相棒は注文が多いなァ」
文句を言いながらも、消えない安心感で素直に待つことにした。
しばらくすると、相棒が遊園地のキャラクターがデカデカと描かれたBIG Tシャツと、
スウェット生地の黒いパンツを抱えて戻ってきた。
「とりあえずトイレで、これ着替えて!」
言われるがままトイレに行き、着替えてみる。
……サイズ、悪くねェ。
むしろ――
「俺のサイズ知ってるなんてなァ……相棒のエッチ〜」
茶化すように言うと、
「なっ!着れないよりはって、一番大きいサイズ買っただけだよ!」
真っ赤になって反論してくる相棒。
……可愛いなァ、こいつ。
「あと目の色目立つからサングラス!」
どう見ても「浮かれてます」オーラ全開のサングラスをかけさせられ、
トータルで出来上がったのは――
完璧な、遊園地全力エンジョイ野郎だった。
「……というか、なんでサーティーンはこっちに来れたの?」
どうして? という目でこっちを見てる。
「あ? あー……なんか画面切り裂いたら来れたんだよ。多分また切り裂けば帰れるだろ」
来れたんだから帰れるだろ、多分な。
「んなことよりよォ、なんでこんなとこにひとりでいんだよ。 どう見てもひとりで楽しむ場所じゃねェだろ」
周りはカップル、友達、家族連ればかり。
ぽつんと座ってる相棒は明らかに浮いてた。
「……最初は、別に、ひとりじゃなかったよ。だって、デートで、来たんだし」
ごにょごにょと小さな声。
……は?
今、なんつった?
……デート??
頭が一瞬真っ白になる。
でも相棒の言葉は止まらない。
「初デートだったんだけど、アトラクションの待ち時間にイライラさせちゃったみたいで……帰られちゃった」
そう言って、少し泣きそうな、でも無理に笑ったような顔。
……なんだそのクソ野郎は。
「おいおいおい、なんだそのクソ野郎は? ぶっ殺してやろうか?」
思ったことがそのまま声に出た。
「コラッ!そんなこと言わないの!」
相棒が慌てて俺の腕をぺちっと叩いてくる。
……さすがにダメだったらしい。残念。
俺は少し肩をすくめて、
「……んじゃまぁ、ゴホン」
咳払いして気を取り直し、座ってる相棒の前に片膝をついて、片手を差し出す。
まるで物語の王子様みたいに。
「そこの可愛いお嬢さん、これから俺とデートしませんか?」
相棒がぽかんと固まってるのを見て、
俺は少し照れながら続ける。
「……こっちの金はねェけど、相棒を笑顔にすることはできるぜ」
相棒の目が、ゆっくりと輝き始める。
「ははっ!
……じゃあ、よろしくお願いします!」
そう言って、差し出された俺の手をぎゅっと握り返してきた。
その瞬間、胸の奥が熱くなった。
……これでいい。
相棒が笑ってくれりゃ、それで十分だ。
ーーーー…
相棒と2人、手を繋いで園内を歩き出す。
握られた手が熱くて、目線を落とせばすぐ隣に相棒がいる。
「サーティーンは遊園地あまり知らないでしょ? せっかく来たんだし、楽しもうね!」
泣きそうだった相棒が、俺を見てニコニコ話しかけてくる。
……やべぇ、相棒ってこんな可愛かったか?
よく見りゃデートって言ってただけあって、服はふんわりしたワンピースで、口元も艶のあるリップつけてる。
なんか、画面越しじゃわかんねェ部分が多すぎて、胸がざわつく。
「ま、俺も遊園地なんてろくに知らねェから、エスコートする知識が足りねェんだけどよ……相棒のやりたいこと、なんでも付き合うぜ」
俺は少し照れ隠しに肩をすくめて、
そう言った。
「言ったな! それじゃコースターに乗ろう! 私、絶叫系大好きなんだよね!」
相棒は俺の手をぐいぐい引っ張って、お目当てのアトラクションへ向かう。
どのアトラクションもかなりの行列だったけど、相棒とデートしてると思うと不思議と苦じゃなかった。
むしろ、最近の相棒の話とか、 俺やコンパスのバトル成績とか、 話したいことが山ほどあって、 待ち時間なんてあっという間に過ぎた。
……むしろ足りねェくらいだった。
「……あ、カチューシャ」
道端のワゴンでキャラクターモチーフのカチューシャを見て、相棒がぽつりと呟いた。
「……もしサーティーンが嫌じゃなければなんだけど……お揃いのカチューシャ、着けてもいい?」
憧れてたんだって、おずおずと付け加えるように。
少し不安そうに揺れる瞳を見て、俺の答えはもう決まってた。
「…なんでも付き合うって言ったろ?
とことんデート、楽しもうぜ!」
わしゃわしゃと相棒の頭を撫でてやった。
……はぁー、可愛いやつ!
「あ! アイス買ってくる!」
相棒は近くのワゴンに駆け寄って、アイスを買って戻ってきた。
ベンチに座って、美味しそうに食べ始める。
「サーティーンも一口どう?」
差し出されたアイスをじっと見つめて、
「……じゃあ、遠慮なく♪」
「あ〜! サーティーン取りすぎ!」
相棒のツッコミに笑いながらアイスを食べ終わり、そのまま園内を散々遊び回った。
絶叫コースターでお互いしがみついて、降りたあと二人で大笑いしたり、 カチューシャお揃いの頭を揺らしながら次々アトラクションを回したり……。
遊び疲れた頃には、あたりはすっかり暗くなっていた。
そしてパレードが始まる頃、園内が一気に変わった。
遠くから聞こえてくる電子っぽいファンファーレが、どんどん近づいてきて、周りの人々が「来た来た!」ってざわつきながらスマホを構えたり手を振ったり。
俺と相棒は人混みの中で、手を繋いだまま少し後ろの方に立ってる。
光のフロートが一つずつ現れるたび、パーク全体が色とりどりの輝きに染まる。
ふと隣の相棒を見つめる。
相棒が「わぁ、綺麗……!」って無邪気に喜んでるのを見て、俺の胸が熱くなる。
キラキラと光輝く相棒の瞳。
……ああ、俺の光はお前だけだ。
お前がいるなら、それだけでいい。
「……相棒、ちょっとこっち来い。」
皆がパレードに夢中になってる隙に、不思議そうな相棒を少し影になった場所へ連れていく。
「今日初めて、画面越しじゃ触れられなかったお前をようやく掴めたのに…
…まだ足りねェ。 なぁ、もっと近くにいてくれよ、相棒。」
びっくりした相棒の顔が、徐々に真っ赤になっていく。
……パレードに負けないくらい、俺の鼓動がうるせェ。
「……俺の光はお前だけだ。……は、言っちまったか。 もう、逃がさねェからな。」
相棒の目が潤んで、頷いた瞬間、俺はそっと頰に手を添えて、
人目を隠すように体を寄せて、優しく唇を重ねる。
キスの瞬間、パレードの音楽がピークになって、光が俺たちを包む。
離れたあと、頰を染めた相棒に、
「……続きは、また今度な。
今日はここまでだぜ。」
最後にちゅっとリップ音を立てて、軽くキスをした。
相棒が照れくさそうに目を逸らす。
俺はニヤッと笑って、
「……覚悟しとけよ、相棒。」
この光は俺のものだ。
もう絶対離さねェからな。
コメント
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今までとテイストが違うのは、単純にどうにか遊園地デートを成立させたかっただけだったりします。