テラーノベル
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朝六時。
まだ太陽が昇りきらない訓練場に、雷斗の姿があった。
「おはようございます……。」
担任は腕時計を確認すると、小さくうなずいた。
「時間どおりだな。」
「はい。」
昨日の訓練で、雷斗は一つだけ理解したことがあった。
異能は発動した瞬間に反動が来るのではない。
その一歩手前から、身体は悲鳴を上げ始めている。
だが、それが分かっただけだった。
どうすれば壊さずに使えるのかは、まだ分からない。
担任は訓練場の中央へ歩いていく。
「今日の訓練は速くなることじゃない。」
「壊れない速さを探す。」
雷斗は首を傾げた。
「壊れない……ですか?」
「そうだ。」
担任は地面に一本の線を引く。
「雷斗。」
「人間の身体は何で動いている。」
「筋肉……ですか?」
「半分正解だ。」
担任は自分の腕を軽く叩いた。
「筋肉を動かしているのは電気だ。」
「脳から送られる電気信号。」
「その信号で筋肉は動く。」
雷斗は目を丸くした。
「つまり……。」
「《神速》は身体に電気を流している……?」
担任はうなずく。
「だから、お前の異能は身体能力を上げられる。」
「だが流しすぎれば。」
「筋肉も神経も耐えられない。」
「だから壊れる。」
雷斗は昨日までの戦いを思い出した。
全身が痛み、脚が動かなくなったこと。
あれは異能が悪いわけではなかった。
自分が流しすぎていただけだった。
「今日は少しずつ出力を上げる。」
「限界を探せ。」
「はい!」
担任は木札を並べた。
「まずは五パーセント。」
雷斗は深呼吸する。
右脚へ、ごくわずかに電気を流す。
「《神速》。」
パチッ。
小さな電流が走る。
軽く踏み込む。
タッ。
昨日までとは違う。
身体が少しだけ軽い。
「どうだ。」
「余裕です。」
担任は記録する。
『五パーセント 異常なし』
「次。」
「一〇パーセント。」
雷斗は少しだけ出力を上げた。
タッ。
タッ。
足取りがさらに軽くなる。
「問題ありません。」
「いい。」
担任はまた記録した。
『一〇パーセント 異常なし』
「次。」
「一二パーセント。」
雷斗は慎重に電気を流す。
身体の奥が少し熱くなる。
それでも痛みはない。
「少し熱いです。」
「痛みは。」
「ありません。」
『一二パーセント 軽い発熱』
「続ける。」
「一五パーセント。」
ドクン。
心臓が強く脈打つ。
踏み込むたびに地面を蹴る力が増していく。
「どうだ。」
「少し重いです。」
「でも動けます。」
担任は満足そうにうなずく。
「いい。」
「最後だ。」
「一七パーセント。」
雷斗は息を整えた。
焦らない。
昨日覚えた境界を思い出す。
反動が始まる一歩手前。
そこを越えないように。
慎重に。
右脚へ電気を流す。
「《神速》。」
ドンッ。
踏み込んだ瞬間。
景色が一気に流れた。
今までとは比べものにならない。
それでも身体は壊れない。
一歩。
二歩。
三歩。
止まる。
雷斗は自分の脚を見た。
「……痛くない。」
信じられなかった。
初めてだった。
異能を使っても身体が悲鳴を上げていない。
担任が近付く。
「脚は。」
「大丈夫です。」
「腕は。」
「問題ありません。」
担任は静かに笑った。
「そこだ。」
「え?」
「今のお前の限界だ。」
雷斗は小さくつぶやく。
「一七パーセント……。」
「そうだ。」
「勘違いするな。」
「お前が弱いわけじゃない。」
「今の身体が耐えられる出力が、一七パーセントというだけだ。」
雷斗は何度もうなずいた。
「最後に確認する。」
「一八パーセント。」
雷斗は一瞬だけ迷った。
「……はい。」
ほんの少しだけ出力を上げる。
一八パーセント。
「《神速》。」
ドンッ!!
今までより速い。
だが。
ビキッ。
「っ……!」
右脚に鋭い痛みが走る。
思わず膝をついた。
担任はすぐに近付く。
「そこまで。」
回復魔法がかけられる。
幸い、大きな怪我ではなかった。
「分かったか。」
「はい……。」
「一八パーセントは、まだ早いです。」
担任は満足そうにうなずいた。
「今日の成果は強くなったことじゃない。」
「自分を知ったことだ。」
「一七パーセント。」
「それがお前の現在地だ。」
訓練が終わり、雷斗は寮へ戻る。
机に座り、一冊のノートを開いた。
表紙には『異能管理記録』と書かれている。
雷斗は今日の結果を書き込んだ。
『現在の限界』
五% 安定
一〇% 安定
一二% 問題なし
一五% やや負担あり
一七% 安全限界
一八% 筋肉損傷
書き終えた雷斗は、ノートの最後に一文だけ付け加えた。
『目標』
『一七%を完璧に使いこなす。』
ノートを閉じる。
焦る必要はない。
百パーセントは、まだ遠い。
だからこそ。
今は、この一七パーセントを自分の力にする。
そう心に決め、雷斗は静かに窓の外を見上げた。
お湯の中の葉っぱ
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#学園
たまごさんど
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コメント
1件
おわったあああああ!!!😭💕💕💕 雷斗くんがやっと自分の限界を知った……!「壊れない速さを探す」っていう担任の言葉、めっちゃ沁みた。一七%で「痛くない」って言えたとき、マジで一緒にほっとしたよ…!ノートに記録つけるとこもエモすぎて、成長をじっくり描いてくれるの好きすぎる。焦らず今の全力を磨くって決めた雷斗、かっこよすぎるよ!!🔥💖 次も楽しみにしてるね、みたらし団子さん!✨