放課後。
校門を出て帰る途中、ロボロの足取りはやけに重かった。
──遊園地。
ゾムに誘われて、なんとなくOKしたけど、今思えば不自然なことが多かった。
「前にも行った場所」って……どういう意味なんやろ
正直、心当たりはなかった。
でも、なぜか胸の奥がざわついていた。
懐かしいような、苦しいような、 でも思い出そうとすればするほど遠ざかっていく。
家に帰って、鞄を投げ出してベッドに倒れこむ。
天井をぼーっと見ながら、さっきのゾムの顔を思い返す。
──あれは、「ただの誘い」の顔ちゃうかった。
笑ってたけど、目はどこか悲しそうで。
どこか…期待してるようにも、諦めてるようにも見えた。
「……なんなんやろ、俺」
机の引き出しを何気なく開けて、小さい頃の手紙や落書き帳を探してみる。
アルバムに挟まれた紙きれ。
“Zくんへ またあしたもあそぼな Rより”
震える指で、それをじっと見つめる。
「ほんまに……なんでや」
どうして自分は、こんなに大事な人のことを忘れてしまったんやろう。
何か悪いことをしたわけでもないのに、記憶がすっぽり抜け落ちてることが、ただただ怖い。
「行ったら、なにか思い出せるんかな……」
ぼそっと呟いた声は、夜の静けさに飲まれて消えた。
けど、胸の中で確かに小さく灯った火だけは、まだ消えずに残っていた。
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