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18 ◇詰んだ
シングルになって晴れて誰とでも自由恋愛を楽しめる身となった
というのに。
瑛士は眞奈と離婚したあと、以前より軽い付き合いをしてきた
女友だちにもことごとく振られることになるのだった。
あんなに恋しい恋しいと言い募っていた真知子は
ある日プッツリと音沙汰がなくなった。
そんな彼女に連絡をして、旅行でも行こうかと誘うと……
『もうすぐ結婚するのでもう誘わないでください』だと。
恋しい恋しいはリップサービスだったか、やっぱりなっ。
まぁ、結婚も望めない俺のような既婚者相手に本気にはならない
だろうとは思ってたけどね。
だけど独り身になった俺にはかなりの大打撃だった。
2人めの華にも相手にされなくなった。
敗因はどうも俺が離婚したことのようだ。
華は夫も子もいる女で『奥さんいる男だから良かったのよ。
あなたに本気になられても私困るのよ~、だって私には愛しのダーリンと
可愛い子がいるんだもの……』だった。
参ったね、正直。
遊びはこっちも同じだったけど、こうまで割り切られていたとは。
だけど落ち込むってことは、少しは本気で好かれているかもなんて
厚かましいことを俺が考えていたってことだから、俺も大概にしないとなって
自己嫌悪に陥った。
それにしてもこんなにあっさりと振ってきたところを見ると、
別にいい男を捕まえたのかもしれんな!
ふたりからこっ酷く振られて弱腰になっていたところへ3人めの綾からも
25才を過ぎて真剣に婚活して結婚しようと思ってるからと、付き合いを
バッサリと断られてしまった。
婚約した時に身上調査が入り俺の存在が露見すれば、まとまる話も
まとまらなくなるからだと。
俺は邪魔者ってことだな。
それにしても眞奈と離婚したらいきなり遊び女友だちからも別れを
告げられるとは……元妻の眞奈は上げまんだったのか!
上げまんの使い方が微妙に違うが、構うものか!
とにかく眞奈がいなくなったら、他の女たちも皆離れていってしまい
いなくなってしまった。
俺がモテて女に不自由せず遊んでいられたのは、どうも元妻のお陰らしい。
流石に会社の女性には手を出していないが、妻に離婚された37才の
オッサンに女子社員たちの目は予想以上に冷たかった。
今まで魅力的で穏やか、知性的でやさしい妻の視線を受け日々癒されて
きた俺には、彼女たちの冷たい視線は非常に耐えがたいものだった。
野郎どもからは、どうせ浮気でもしたんだろうと……散々な
言われようで、どちらを向いても俺をやさしく癒してやろうという者は
皆無だった。
世間ではバツイチはモテると聞くが、俺の場合に限ってそれは一切なかった。
モテるどころか結婚年数もそれなりに長く、妻のことを知る者が多くいる
職場の所以か『あんなに素敵な奥さんと別れることになった駄目な男』との
レッテルを大きく貼られることになったからだった。
詰んだな。
19 ◇知らなかったこと
子供はなく瑛士にとって家族といえば、元妻だけだった。
それでも元妻ひとりだが会社に居ても外を歩いていても……家に帰っても
今までどこにいても心の中心には必ず元妻がいたのだ。
俺の心はいつも春爛漫で、幸せだった。
俺は幸せを──
いっぱいの幸せを眞奈から貰っていたのだなぁと離婚から3か月目頃に改めて悟った
アホな男だった。
◇ ◇ ◇ ◇
離婚から1年が過ぎてすぐの頃、俺は元妻の義従妹と量販店の紳士売り場で偶然
バッタリと遭遇してしまった。
彼女とは──
俺が眞奈と夫婦だった頃仲良くしていた。
微妙な関係になってしまったが、ちゃんと俺に挨拶してくれたのでほっとした。
ご主人の洋服を見に、どうも1人で来ているようだった。
何を話そうとか考えてのことではなく、俺は元妻と繋がりのある義従妹だからその場を
去りがたく、ついお茶に誘ってしまった。
◇ ◇ ◇ ◇
「久しぶりだね」
「はい、お義兄さんお元気でしたか?」
「何とかやってるけど、寂しいよ」
つい、俺は本音をこぼしてしまった。
「……ですよね、って言いたいところだけど、それって本当かなぁ~?」
俺は元義妹の加奈の台詞に驚いた。
だってこんな嫌味を言うような子じゃなかったから。
だとすると、どういう意味なんだろうって思った。
「ね、今のどういう意味なのかなぁ?
ジョークか何かなのかい?」
「お義兄さん……」
「?」
「まず胸によぉ~く手を当てて自分の過去の行いを振り返ってみて!
嘘は駄目ですよ。
よぉ~く振り返ったら私の言葉に違和感は感じないと思いますけど」
確かに脛に傷持つ身だが、まさか妻だって知らないことを元義従妹が?
ないない……それはないよなぁ~。
いろいろ思いを巡らせていたら、元義従妹から爆弾発言が落とされた。
20 ◇知られていた
「お義兄さん、眞奈姉はね……とっくに知ってたの。
お義兄さんがスマホを家に置き忘れて会社へ出社した日にハートマークのLINE着信に
気付いて、眞奈姉はお義兄さんの女性関係を知ってしまったの。
その後眞奈姉は、休みをわざわざ取ってお義兄さんのスマホを詳細に調べたみたい。
私ならもうこの時点でキィーってなって問い詰めるところだけど、眞奈姉はそうじゃなかった。
今まで以上にお義兄さんに心から尽くしつつ1年間様子見しながら、お義兄さんが
彼女たちと手を切ってくれれば、頑張ってやり直そうって思ってたみたいだけど……。
お義兄さんの女友だちとの仲は益々お盛んになっていくばかりなのに、
一方では眞奈姉にやさしくしてくれるお義兄さんの側に、何も知らない振りでこれ以上
居るのは辛過ぎるから別れることにしたって言ってたわ。
眞奈姉からは口止めされてたけれど、もうあれから2年になるしいいなかぁと思って
真実をお話しました」
俺の今の間抜けな顔、元義従妹の目には一体どんなふうに映ってるのだろうか!
側に穴があったら入りたかった……ぜぃ。
「じゃあ、じゃあ──離婚する時の言い訳に好きな男ができたからって
言ってたのは嘘だったのか?」
「たぶん、離婚した時の理由としてはね」
と、これまた元義従妹から意味深な発言が……。
「……というと?」
「フフン……嘘から出たまことってことかな。
今は本当に好きな男性ができたみたいだから……」
「……」
「ね、お義兄さん、ひとつ聞いてもいい?
姉のこと愛してなかったんですよね?
言うほど好きじゃなかったんですよね?
私たちの前じゃ大切にしてくれてやさしくしてくれていたから、てっきり姉は大切に
思われて愛されてるのだとばかり思ってたのに、全部見せかけだったんですよね?」
「全てバレたあとじゃ何を言っても信じてもらえないと思うけど、眞奈のことは大切に
思ってたし愛してたよ」
「駄目ですよ、お義兄さん。
それはやっぱり説得力に欠けますって!
妻を愛し家族を大切に思う人は据え膳が出ても断るものなんですよ。
それをです──
お義兄さんはこともあろうに、あっちこっちに卑猥な言葉でLINEして楽しんだりできる女が
3人もいたのでしょ!
ないわあ~それはないですよ。
お義兄さんには散々よくしていただいてたので言いにくいですけれど、やっぱりないわぁ~って
いうのが正直な気持ちです」
「うん、そうだよね……。
加奈ちゃんの言う通りだよ、俺が悪いね。
眞奈に捨てられて当然だわ」
気が付くと俺は泣いていた。
コメント
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うわああ…第7話、めっちゃ胸にくる話だった😭💔 瑛士くん、離婚した途端に女友達みんなに振られて、しかも元妻・眞奈さんが実は最初から全部知ってたって…勘が痛すぎるよな〜。 「愛してた」って言っても、もう説得力ないって加奈ちゃんにビシっと言われて泣いちゃうシーン、グサッと刺さった…これは自業自得だけど、それでもちゃんと気づけたのは一歩だと思う。 眞奈さんの心情考えたら切なくなるけど、いい物語だったよ!次も楽しみにしてる✨