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翌週。
緑谷は、雄英を休んだ。
最初は「体調不良」とだけ伝えられた。
けれど一日。
二日。
三日。
連絡は既読だけついて、返事が来ない。
A組の空気は沈み切っていた。
誰も大きな声を出さない。
笑うことすら、どこか罪悪感があった。
麗日は毎晩メッセージを打っては消した。
『大丈夫?』
その一言すら、追い詰める気がした。
──四日目。
相澤先生が教室に入る。
いつも通り眠そうな顔。
でも、空気が違った。
「……緑谷は、しばらく復帰できない」
静まり返る教室。
飯田が立ち上がる。
「それはどういう……!」
相澤は少し黙ってから言った。
「医者から、“強いストレス環境から離すべき”と言われた」
つまり。
雄英にいること自体が、今の緑谷には苦痛だった。
切島が顔を覆う。
耳郎は唇を噛む。
爆豪は俯いたまま動かない。
相澤は続ける。
「……あいつ、自分の部屋でもまともに眠れてなかったらしい」
夜中、物音で飛び起きる。
誰かの足音だけで過呼吸になる。
スマホの通知を全部切って、カーテンも開けられなくなった。
ヒーロー科の生徒とは思えないほど、人を怖がるようになっていた。
それを聞いた瞬間。
教室の誰もが理解した。
自分たちは、“助けられなかった”んじゃない。
“壊れるまで気づかなかった”。
──その夜。
爆豪は緑谷の実家の前にいた。
インターホンを押す。
出てきたのは母親だった。
目が赤い。
「……出久なら、寝てるの」
小さな声。
「やっと少し眠れたから……」
爆豪は黙る。
その時。
奥の部屋から、何かが落ちる音がした。
ビクッ、と母親の肩が跳ねる。
慌てて部屋へ向かう。
爆豪も反射的について行った。
ドアが開く。
緑谷は床に座り込んでいた。
呼吸が荒い。
散らばったノート。
怯えた目。
「ご、ごめ、ごめんなさい……」
誰に謝っているのかも分からない。
ただ、混乱したまま震えていた。
夢を見たのだ。
また教室で一人になる夢を。
また皆に見られる夢を。
爆豪はその姿を見て、言葉を失う。
これが、本当にあの緑谷出久なのか。
どれだけ傷つけられたら、人はここまで壊れるのか。
緑谷は爆豪に気づいた瞬間、さらに顔を青くした。
「……っ、ごめん、なさい……」
嫌われたと思っている。
見捨てられると思っている。
だから反射で謝る。
爆豪は奥歯を噛み締めた。
胸の奥が痛かった。
イライラじゃない。
後悔だった。
もっと早く助ければよかった。
もっと早く気づけばよかった。
ずっと隣にいたのに。
緑谷は泣きながら、小さく呟く。
「……もう、学校こわい……」
その一言で、
部屋の空気が止まった。
ヒーローになることを夢見て、
誰より雄英に憧れていた少年が、
雄英を、“怖い場所”だと言った。
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コムム