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雨花「はぁーー、なっっが!!」橙「そうですか?私は適切な長さのスピーチだったと想うのですが……」
この二人は、閻魔大王である「紫雲雨花」とその補佐官の「不山橙」である。
雨花「いやいや。どう考えてもあれは長いよ!閻魔なんて何人もいるんだからスピーチなんて軽い感じで良いのに……スピーチだけ長くしていかにも仕事してます〜みたいな雰囲気出して仕事はいい加減なんだもん。」
橙「あなたのスピーチは短すぎですけどね。」
雨花「うっ。それはその……スピーチより修行の方を優先しちゃって……つい!」
橙「…………雨花さん?」
雨花「ひぃぃぃぃ!あっえっとその……すみません。」
橙「はぁー全くもう」
雨花「でもさぁ!聞いてよ!わたしのスピーチも短かったし中身もないけど、なんか林檎の木の話してた閻魔いたじゃん!なんか「私の庭には立派な林檎の木がなっていて、皆さんにもあんな鮮やかな色をしたまぁるい凛々しい実のような神様になって欲しいです。そういえば私の庭になっている林檎はとっても美味しくて絶品なんです!皆さんにもぜひ食べて頂きたく……」何とかかんとかって!何あの話!ただ自分の林檎を紹介しただけじゃん!それこそもっと実のある話をして欲しいよ!」
橙「今サラッと上手いことを言いましたね。それで貶してた割には大分その方のスピーチ聞いてたんですね。」
雨花「とにかくあのスピーチやめさせて欲しいよ!」
橙「ならやめさせれば良いじゃないですか。閻魔の中ではあなたが1番上なんですから。」
雨花「いやそう想ったんだけど、あのスピーチをする流れってわたしのお師匠様の時代から決まってやってたみたいだから他の神様の目もあるしやめて欲しいって簡単に言えなくて……」
橙「まぁそんな簡単な話じゃないってことなんですね。」
雨花「はぁーーあれが月1であるなんて最悪だよ……ん?」
二人が会話しながら冥府に帰っていると、遠くからふたりを呼ぶ声がした。
雨花「ありゃま。紅緒ちゃんじゃん。お疲れ様!どうしたの?」
橙「お疲れ様です。紅緒さん。」
紅緒「あっお疲れ様です。お二人共……ていうか違います!!お二人共!!今冥府が大変なことに……!!」
雨花・橙「えっ?」
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「俺に近づくな!!!!」
少年がナイフを片手に暴れまわり、周りの閻魔の部下たちが抑えようにも抑えられない。少年が持っているのは自身の妖術で作ったナイフであって今少年は気があまりにも立っていて妖術を使いまくっている状態で周りの者も手が付けられない状態になっている。
紅緒「皆さんご無事ですか!?」
紅緒と雨花、橙が駆けつけるとそこら中に血の跡が付いていた。
橙「これは……」
雨花「…………」
辺りを見渡すと部下達が少年を取り抑えようと少年を見張りながらどうするべきか考えていた。
橙「これはどういうことなんですか?何が起こってるんですか?」
紅緒「実は……あの少年は自ら命を絶とうとしたのですが、まだ完全に死んでいる訳ではなく仮死状態なんです。通常まだ死んでいない者はこの世に戻さなくてはならないのですがあの少年はこの世には戻りたくないと言い、自身の妖術でこの世に戻そうとする者を攻撃しているんです!」
橙「!」
紅緒「一体どうすれば……あの少年は元々の魂の力が強いため仮死状態でも妖術をかなり使えるようなんです。なので私たちも中々手に負えず……」
橙「…………」
2人が必死に考えていると、雨花が少年に近づいていった。
橙「……!」
紅緒「あっでも雨花様ならあの少年を取り押さえることができるかもしれません!元々雨花さんは「黒い彼岸花」と言われ、数々の妖怪を相手に、使ったことのない自分の妖術のみで倒したんですから!」
少年「何だお前は!!俺に近づくな!!俺はもうこの世になんて戻りたくねぇ!!」
雨花「うん。分かった。戻りたくないなら戻らなくて良いよ。」
紅緒「!!!!何言ってるんです!?あの世の法律上仮死状態の者はこの世に戻さないといけないんですよ!?」
橙「…………」
少年「何なんだお前!!!!何言ってんだ!!!!」
雨花「あなたの命なんだもの。あなたが決めて良い。わたしはあなたの意志を尊重したいから。」
少年「そんな綺麗事は聞きたくねぇ!!!!俺の意思を尊重したい?俺の意思はこの世からいなくなることだ!!そんな意思を誰が尊重できるんだよ!!」
そう言うと雨花にナイフで切りかかった。雨花の腕から血が流れ出る。
紅緒「雨花さん!!どうしてその少年を取り押さえないんですか!?雨花さんなら……」
橙「紅緒さん少し静かに」
雨花「…………私にはあなたを幸せにすることはできない。」
少年「!!!!」
少年は雨花をどんどん刺したり、切りかかっていく。
橙「(……?どうして雨花さんの傷が癒えないんでしょう?)
少年「ふざけんな!!ふざけんな!!お前らは神のくせに俺みたいなどうしようもない弱いやつを助けようともせず偉そうにしやがってふざけんなよなぁ!!!!誰も!!!!俺の気持ちなんて分かんねぇんだよ!!!!」
雨花「ごめんなさい。」
そう言うと雨花は、しゃがみんこんで土下座した。
橙・紅緒「!」
少年「何してんだお前……」
雨花「私はさっきも言った通り、あなたを幸せにすることは出来ない。あなたの事を何も知らないわたしなんかに無責任に「生きて欲しい」とはわたしは言えない。あなたの想い描く幸せをあげられるなら「生きて欲しい」って言っても良いかもしれないけど。」
少年「…………!!!!」
少年は土下座した雨花の胸ぐらを掴んだ。
少年「結局何が言いたんだよ!!!!」
雨花「死にたいなら死んでも良いと思う。」
少年「!」
雨花「あなたの命なんだからそれをどう扱おうとあなたの自由。よく命を粗末にしちゃいけないって言うけど、自分のものをどうしようとその人の勝手。だから死にたいなら死んでも良いと想う。」
雨花は、少年が胸ぐらを掴んだ手をそっと握る。
雨花「でも、あなたは今仮死状態。あなたは選ぶことが出来る。地獄を味わうか、それ以外か、あなたはどうしたい?地獄を味わい続けた先に何が待っているのかは分からない。新たな絶望かもしれないし、或いはもっと別のものかもしれない。それが分かるのはその道を歩き続けたものだけ。でもね。仮死状態ってことは今あなたは誰かに助けられようとしている。あなたのことを必死で助けようと行動を取った人がいる。だから今あなたはギリギリ選択を取ることができてる。」
少年「そ……」
雨花「あなたが今選択できるということがあなたは独りじゃないという紛れもない証拠。」
少年「結局綺麗事じゃねぇか……」
雨花「わたしに言えるのはこんなものだけだよ。ごめんね……。こんな言い方したけどあなたの命だからあなたが決めるべき。」
少年「俺が……決める?」
雨花「このまま地獄を味わい続けるか。或いは、それ以外か。あなたが決めて良い。あなたの命だから。あなたの好きにして良い。わたしはあなたの選んだ選択を尊重したい。」
少年「…………」
少年の手が雨花の胸ぐらから離れ、体を落とし、泣き始めた。それに合わせて雨花も体を落とす。
少年「俺は…………うぅぅぅ……」
雨花「………………」
しばらく少年は泣き続け、少年の口が動いた。
少年「俺は……父親が仕事三昧で母親は他に男作って出て行った。ずっと独りが嫌で暴走族に入って、悪いことばっかしてた。楽しいこともあったけど、このまま堕ちて、堕ちて、そうやっていけることまで行っても俺のこの状態は変わらねぇんだなって想って、だったらいっその事……そう想ったんだよ。」
雨花「……うん。」
少年「でも、俺独りじゃないんだな。多分俺の父親が助けようとしてくれてるんだと想う。薄れていく意識の中、父親が必死で叫んだのみたから……俺あと少しだけ頑張ってみるよ。それで良い?」
少年がそう言うと、雨花は優しく微笑み、うなづいた。
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雨花「この扉を開けたらこの世に戻れるよ。」
少年「あんた色々悪かったな。」
雨花「あれくらい大したことないよ!
……って言ってもあなたは気にすると想うけどあなたに罪悪感を感じさせてしまう方がすごく嫌だから本当に気にしないで!笑」
少年「……じゃあな」
雨花「うん。……またね。」
そして少年は扉を開け、この世に戻った。
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橙「……雨花さん。」
雨花「ん?」
橙「どうしてご自身の怪我の治癒を止めたんですか?今も止めていますし。」
雨花「あれはね。少しでも神様としてじゃなく一人の人間として接した方が彼に寄り添えるかなって想って。人間と同じスピードで怪我を治癒した方が人間らしいかなって想ったの!笑」
橙「…………あまり無茶なことをしないで下さい」
雨花「はいはい〜!」
橙「(これは絶対に聴きませんね。)
すると雨花がそっと呟いた。
雨花「あの子はわたしたちみたいにならないと良いな……」
橙「…………そうですね」
しばらく沈黙が続き、橙が口を開いた。
橙「…………はぁーそれから通常なら仮死状態の方はこの世に帰さなくてはならないのですからあの世の法律を破るような言動行動も慎んでください。」
雨花「ごめんね!笑笑。ちゃんと気を付けるから!そろそろ帰ろっか!」
橙「……そうですね。今日はおでんを作るつもりなのですが良いで……」
雨花「もち良いです!!!!」
橙「食い気味で来ないで下さい笑笑」
そして2人は帰路に着いて、一緒におでんを食べたそうな。
ここからは物語の設定です!
妖術は、仮死状態であの世に来た者や死んであの世で過ごしている者なら誰でも使える能力で、とてもとても昔、この世に妖怪が訪れ、この世の生き物の心に「妖怪」という存在が強く認識され「妖怪」という存在はこの世の生き物にとってあまりにも大きい存在で、その存在感がこの世の生き物の心に深く影響を受けさせた結果、生き物の命の灯火が消えたことがきっかけとなり、人の心から妖怪という存在が溢れ出ることで、あの世に来た者なら妖術が使えると言われている。また、生まれ変わりこの世に現れた者は基本的に使えなくなっている。(神社やお寺の家系の者はごくごく稀に使える者もいる。また、1度命がなくなりそうになり(例えばもう治らないと言われている重い病気にかかり奇跡的に少しずつ回復してきた者や自殺未遂をした者など)何とかこの世で過ごすことが出来ている者も使える者もいる。(その「何とか」というのは肉体的な意味もあれば精神的な意味。またどちらの意味も持つこと))
この世で妖術が使える者は「妖怪返り」と呼ばれている。
またこの世あの世関係なく、妖術を使える者は「妖術遣い」と言われている。