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「……ねえ、陸ってさ、」
シャワーを浴びたばかりの涼音が、
濡れた髪をタオルで拭きながら、ベッドに座る陸に尋ねた。
「……なんでそんな優しいの?」
「……え?」
「普通さ、セフレってこう……
やるだけやって帰る感じじゃん?
朝起きたらいないとかさ? “じゃあね”って感じでしょ?」
涼音は笑ってる。
でも、その目はちょっとだけ寂しそうだった。
「俺がそんな扱いしてたら、
涼音さん、絶対すぐ他の人のところ行きますよね」
「……まあ、それは、あるかも?」
涼音は冗談ぽく笑ったけど、
心のどこかで“本気”でそう思ってる。
「それが嫌だから、俺は……離さないんです」
「陸……」
ベッドに座ったままの陸が、
タオル越しに涼音の髪を拭いてくれる。
ゆっくり、優しく、
“恋人”みたいに。
――でも、恋人じゃない。
「……でもさ、それって、セフレの優しさじゃなくない?」
「……俺は、涼音さんが思ってるより、ずっと本気です」
「本気って……えっちに、でしょ?」
「違います」
ピシャリと断言されて、涼音は言葉を飲み込んだ。
「えっちだけだったら、
あんなに大事にしません。
好きな人だから、俺は……触れてるんです」
「…………やめてよ、そういうの」
「……なんでですか」
「だって……僕、年上だし。
遊び慣れてるし。
他にも抱かれたことなんて、何回もあるし」
「……知ってますよ」
「……え?」
「でも、全部、俺が忘れさせるんで。
俺で更新していくんで、記録」
「……バカじゃないの、何言ってんの……」
笑ってごまかしたいのに、
胸がキュッと締め付けられて、
涼音の目元がほんのり赤くなる。
「……あのさ、陸。僕のこと、好き?」
「……はい」
「“はい”って……ほんとに?」
「ほんとです。……じゃなきゃ、
涼音さんの全部を、こんなに欲しがったりしない」
「…………」
涼音は、なにも言えなくなってしまった。
だって――そんな目で見られたら、もう。
“僕も、本気になっちゃいそうじゃん”