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「でも、こんなに酔い潰れるまで飲んじゃって大丈夫なんですかね?」
「あ~。大丈夫大丈夫。この子こういうのたまにあるから」
さすがの親友の美咲さんはそう言って軽く答える。
「よくあるんですか?こういうこと」
「意外でしょ?」
いつも完璧な彼女が酔い潰れるほど飲むくらいの出来事。
前の男と再会したら、あなたはそこまでになってしまうの?
それはあなたをまだ苦しめているから?
それとも、まだ今も・・・?
ただ酔っているだけなら、酔い潰れた彼女の隣にいることでさえ、きっと幸せに思えるのに。
酔い潰れた理由が、別の男のことだなんて。
それほどこの人の頭の中を占めているその男の存在が、どうにもならないその過去に、オレは無駄に嫉妬してしまう。
だけど、その反面。
普段見られない彼女の姿を見て、またオレの胸は高鳴ると共にこの人への想いが大きくなる。
オレの知らない何もかも、全部知りたくなる。
もっとこの人のことが欲しくなってしまって、他の男のことを考えているこの人を、ただ独り占めしたくなる。
そんな想いを抱えながら、眠っている彼女を隣でしばらくずっと眺めていると。
「ずっと眺めてるね。樹くん」
そんなオレを見て美咲さんが声をかけてきた。
「まぁ。こんな貴重な機会滅多にないですから」
「まだ仕事ではそこまで一緒にならないんだって?」
「はい。まぁ・・。なんでそれを?」
「あぁ。透子がさっきそう言ってたから」
「え?オレの話することあるんですか?」
「そりゃね。今日もあの子から樹くん最近ここ来てるか確認してきたし」
「そう、なんですね・・」
彼女の中にまだオレなんて存在していないと思ってた。
オレのことなんて気にも留めてないと思ってたから、正直驚いた。
でもその反面素直に嬉しくて。
「オレのことなんて気にも留めてないと思ってたからちょっと嬉しいです」
「いや、透子多分あぁ見えて結構樹くんのこと意識してると思うよ」
「え?マジですか!?」
親友の美咲さんがそう思うなら、可能性がありそうで期待してしまう。
「かなりあの子も素直じゃないとこあるけど」
「ですよね・・。なかなかオレには意地張って素直になってくれないです。昔見かけたみたいなあんな可愛い顔まだ見せてもらえたこともないんで」
「あぁ・・この酔い潰れた原因の前の恋愛ね」
「正直ツラいです。そこまで引きずってるんだなって」
やっぱりまだオレが入れる隙間もないのだろうか。
「う~ん。どうだろ。引きずってるっていうより、なんか怒りまくってたけどね」
「え?そうなんですか?」
「多分透子の中ではもうふっきってはいるんだと思う。さすがにこの年月だし。きっと涼さん・・あっ、前の彼氏ね。その人を今どうこうとかじゃなくて多分自分の中での問題なんだと思う」
「なるほど・・・」
「ちゃんと納得してあの子は別れられてないから。多分自分の中で消化出来てないんだろうね」
「なら、まだ好き・・とかはないんですかね?」
それが一番やっぱり気になっていて。
あんなに幸せだった時代を過ごした相手をずっと想い続けていたりしたら、こんなイキナリ出て来た年下のオレが振り向いてもらえるとは到底思えない。
「う~ん。ホントの気持ちは透子しかわからないけど。多分そうだとは思う」
「オレこのまま頑張っても可能性あるんですかね・・」
だからと言って彼女の気持ちがオレになくても、他の誰かにあっても、今更諦めるつもりもないけど。
だけど、やっぱりこの人にはいつかオレだけを見てほしいから。
「それはあると思うよ。樹くんさえ、ちゃんと透子と向き合ってくれて真剣に想ってくれるのなら。きっと透子もいつか樹くんになら心開くと思う」
「そんなん言われたら期待しちゃいますけど」
「でも。透子は私の大切な親友だから、いい加減な気持ちだったり傷つけるようなことしたら、例え樹くんでも私は許さない。それだけはわかっておいて」
「わかってます。それは十分。オレにとっても大切にしたい人なんで」
「なら。私は応援するよ。二人のこと。透子にもちゃんと幸せになってほしいし」
「ありがとうございます。美咲さんにそう言ってもらえたら心強いです」
「まぁ、この先ホントに樹くん好きになるかは樹くん次第の頑張りでどうなるかはわかんないけど」
「ですよね。頑張ります」
だよな。結局オレが頑張って振り向かせるしかない。