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龍斗
「……退院、か」
病院の白い天井を見上げながら、俺は、小さく息を吐いた。
数日前。
俺は、生理痛のあまりの強さに耐えられなくなり、学校でも家でもない場所で倒れた。
最初は、いつものように少し休めば大丈夫だと思っていた。
龍斗「またか……」
なんて。
自分でも慣れてしまっていたから。
だけど、今回は違った。
気が付いた時には病院のベッドの上で、腕には点滴。
そして何より───。
イワン「龍斗」
龍斗「……ん?」
イワン「起きてるか?」
聞き慣れた声に、俺はゆっくりと顔を横へ向けた。
そこには、心配そうな顔をした兄がいた。
龍斗「……何でおるの」
イワン「お前が倒れたって兄から聞いただけだろ」
龍斗「いや、そうだけどじゃなくて!なんで俺の兄が?!」
イワン「は?!」
イワンは呆れたように眉をひそめる。
その隣には、もう一人。
聖斗「龍斗。体調は?」
龍斗「俺の兄までいる……」
聖斗、イワン「当たり前だろ?」
───ハモった。うん。こいつら今ハモったな?
龍斗「何が当たり前なんだよ」
聖斗「家族だろ?」
そう言って、聖斗は当たり前のように笑った。
……いや。
本当に、何で兄も揃ってるんだ。
俺がそんなことを考えていると、病室の扉が静かに開いた。
コンコン、とノックする音。
医師「失礼します」
医師が入ってくる。
そして、俺の様子を確認したあと。
医師「体調も安定していますし、本日退院できますよ」
そう告げた。
───そして現在。
俺は病院の玄関前に立っていた。
龍斗「……久しぶりの外」
聖斗「数日しか経ってへんけど」
龍斗「俺にとっては久しぶりなんだよ」
イワン「大袈裟だなぁ」
イワンまで笑っている。
……人が大変な目に遭っていたというのに。
聖斗、イワン「ほら、帰るぞ」
───もう!こいつら何仲良さそうなんだよ!
龍斗「はいはい」
俺はゆっくりと歩き出した。
まだ完全に元通り、というわけではない。
だけど。
病院にいるより、自分の家に帰れる方が安心する。
……はずだった。
イワン「龍斗」
龍斗「ん?」
イワン「一つ、言っておくことが───」
イワンが、妙に真剣な顔をした。
龍斗「……何」
イワン「退院したことを、ありがたく思う。」
龍斗「え?」
歓喜な予感がした。
龍斗「…………」
俺は足を止め、顔を赤らめた。
龍斗「…」
聖斗「心配してた。」
「いや、何でイワンと兄が俺の退院を知ってるの?」
イワン、聖斗「医師に聞いた!」
───いつまでこいつらハモるんだ。
龍斗「誰が!?」
聖斗、イワン「俺!」
龍斗「何で!?」
イワン「だって、心配するに決まってんだろ」
イワンは泣きそうになり───
そして、にっこりと笑う。
イワン「龍斗のこと、大好きだからな♡」
龍斗「…………」
───彼女になって何年経つと思ってんだよ…
龍斗「……は?」
イワン「だーかーら」
イワン「お前の事が好きなんだって」
龍斗「嘘だろ!?」
俺は頭を抱えた。
……待ってくれ。
いや。
そんなことある?
確かにイワンは優しい。だが、イワンがこんなこと言うなんて6年ぶり。
そして───。
なぜか、さっきまでより心臓がうるさくなった。
短い。
いつも通りの、簡潔な文章。
……なのに。
その下には、もう一件。
イワン> 無理をするな。
「…………」
俺はスマホを閉じた。
ピコン。
その瞬間。スマホが鳴った。
「……」
俺は、恐る恐る画面を見る。
表示された名前は。イワンだった。
───やっぱり。イワンは俺の事が好きだろ。
イワン「♡」
───俺はすぐさまイワンを見た。バレバレ。
龍斗「その顔やめろ」
イワン「早くしろ♡」
龍斗「何で急かすんだよ!」
俺はスマホを握りしめる。
別に。いつも通り。
ただ、
───俺は黒い髪。そして紫と赤のオッドアイ。
ずっとイワンと聖斗は見慣れた顔のよう。
そして。
俺のスマホには、今さっきまで彼とのメッセージ画面が表示されている。
龍斗「……イワン?と兄…」
龍斗「へあっ♡」───ビビったじゃねえかおい!
聖斗「よっ!妹の龍斗!」
イワン、聖斗「退院したんだな!」
龍斗「何でおんの」
イワン「迎えに来た」
龍斗「は?」
俺は固まった。
兄は黙っている。
イワンは。
「ふへへぇ♡」
めちゃくちゃ嬉しそうだった。
龍斗「迎えに……?」
イワン「そうだ」
龍斗「誰が頼んだ?」
聖斗、イワン「誰も」
龍斗「じゃあ何で」
俺がそう聞くと。
イワンは、少しだけ黙った。
いつもならすぐ答えるはずなのに。
珍しく。
本当に少しだけ、視線を逸らして。
イワン、聖斗「……心配だったから」
そう言った。
龍斗「…………」
聖斗「龍斗?」
龍斗「…………」
イワン「おい」
龍斗「…………」
聖斗「固まるな」
龍斗「固まってない」
イワン「固まってる」
龍斗「固まってない!」
イワン「顔、赤いぞ」
龍斗「赤くない!!」
聖斗「赤いで♡」
龍斗「お前は黙れ!?」
病院の前に、俺の声が響いた。
……退院したばかりだというのに。
何で。
何で俺は。
こんなに疲れるんだ。
だけど。
イワンは、そんな俺を見て。
少しだけ笑った。
その笑顔を見た瞬間。
胸の奥が、変にざわついた。
龍斗「……」
俺は慌てて目を逸らす。
すると。
イワンが俺の荷物に手を伸ばした。
イワン「持つ」
龍斗「いや、自分で持てる」
イワン「退院したばかりだろ」
イワン「でも」
イワン「無理するな」
龍斗「……」
さっき。
スマホにも、同じことが書いてあった。
───無理をするな。
その言葉が。
頭の中に何度も浮かぶ。
龍斗「……ありがとう」
俺が小さな声で言うと。
イワンは、一瞬だけ目を丸くした。
そして。
イワン「……どういたしまして」
と。
少しだけ嬉しそうに笑った。
聖斗「龍斗、俺もう家帰る。」
……。
龍斗「…………」
イワン「龍斗?」
龍斗「何でもない」
イワン、聖斗「顔、赤い。」
龍斗「だから赤くない!!」
イワン「赤いな」
聖斗「イワンまで言うな!」
イワン「龍斗」
兄が、楽しそうに俺を見る。
イワン「どうやら退院初日から忙しくなりそうだな」
龍斗「……何で?」
聖斗「さあな」
兄は意味深に笑った。
聖斗も。
「ふへぇ♡」
なんて笑っている。
俺は嫌な予感しかしなかった。
───だけど。
この時の俺は、まだ知らなかった。
退院しただけ。
ただ、それだけだったはずなのに。
俺の周りでは。
少しずつ。
本当に少しずつ。
何かが変わり始めていたことを。
そして。
イワンが俺に向けている感情を。
俺自身が。
まだ、何も分かっていなかったことを。
イワン「……龍斗」
龍斗「ん?」
イワン「帰ろう」
イワンがそう言った。
その言葉に。
俺は少しだけ笑う。
龍斗「……うん」
そして。
俺たちは歩き始めた。
退院した、その日。
これが。
俺とイワンの関係が。
もう一度。
大きく動き始める日になるなんて。
この時の俺は───。
まだ、知らなかった。
───イワン。
お前、やっぱり。
俺のことが好きなんだって?
でも。
それを聞くのは。
もう少し先の話だ。
#オリキャラ注意
なう
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コメント
1件
おお、龍斗くん退院おめでと〜!🎉 イワンさんとお兄ちゃんが迎えに来てくれるって、もう龍斗くん愛されてるね〜♡「無理するな」って言葉がスマホにもイワンさんの口からも出てくるところ、ぐっときたよ…。照れてる龍斗くん可愛いし、イワンさんの「大好き」発言、久しぶりって言うから余計に胸がざわつくね! 続き読みたい〜🤍