コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
芽流(める)の家に戻った女子陣4人。
「ただいまぁ〜」
「自分ん家(ち)みたいに」
「ま、まだ時間あるけど、お風呂行く準備しますか」
「ういぃ〜」
「お酒飲んでないよね?」
まるで酔っ払っているみたいなテンションの汝実(なみ)。
「いつも通りじゃない?」
「うん」
という杏時(あんじ)と芽流(める)。
「なんか汝実ってお酒弱そうだよね。なんとなくだけど」
「チッチッチ」
得意気な顔をしながら人差し指を振る汝実。
「なに」
「そういうしょうちゃんみたいなクールビューティーが
お酒一口でめっちゃ甘えん坊の可愛い感じになったりするのよ」
「え、そうなの?」
「意外」
全員の視線が希誦(きしょう)に向く。
「え。いやいやいやいや、ないないない」
「わからんでしょー。お酒まだ飲んだことないんだし。んで芽流みたいな子が酒豪だったりするわけよ」
「そうなん?」
「そうなの?」
今度は全員の視線が芽流に向く。
「いやいやいや、知らない知らない」
「みんなで飲みたいねぇ〜」
「なんでもう○学生みたいな喋り方なん」
「タメになったねぇ〜⤴︎」
準備を終えた4人。
「お菓子でも食べ、る?」
「食べるー!」
「おっけ」
芽流が立ち上がりキッチンへ行く。
「あんだけ食べた後によく食べるね」
「えぇ〜?お菓子は別腹では?」
「それさっきデザートの前にも言ってたよね?」
「いやいやいやいや、デザートとおやつは別よ。ねぇ?芽流?」
「え!?」
めちゃくちゃ驚く芽流。
「あ、え、そ、そうだね?」
「ほらぁ〜」
「言わせたやん」
グラスを出した芽流を見て杏時も立ち上がりキッチンへ向かう。
「何飲むー?あ、あんちゃんこれお願い」
杏時は芽流からお菓子がいろいろ入ったボウルを受け取る。
みんなから飲み物を聞き、グラスに注いで杏時と芽流でキッチンからベッド前のローテーブルへと運んだ。
ボウルのお菓子を食べながら、飲み物を飲みながら
テレビを見ながらみんなで何気ない話をしていると、あっという間に21時半、夜9時半を過ぎた。
「こっから何分?」
「何分…何分だろ…。ちなみに素晴らしの湯は猫井戸駅から徒歩5分くらいね」
「めちゃ近じゃん」
もうしばらく話して21時50分、夜9時50分過ぎに芽流の家を出た。
「おぉ〜。ここかぁ〜」
猫井戸駅に降り立ち、素晴らしの湯が入っているビルの下についた4人。
通路を進み、割と長い階段を上ると自動ドアがあり、その自動ドアから中に入ると、コイン式の下駄箱。
4人それぞれ近くに固めて靴を預ける。
素晴らしの湯はチケット制で券売機でチケットを買ってから
カウンターの受付の人に渡し、タオルなどを受け取って赤い暖簾をくぐる。
「なんかイメージと違った」
とロッカーに荷物を入れながら言う希誦(きしょう)。
「あ、嫌だった?」
杏時が不安そうに聞く。
「あ、ごめんごめん。違くて。良い意味でイメージと違った。
なんか銭湯をイメージしてたからさ。なんか、ほんとに温泉なんだなって」
「それな?」
汝実も賛同する。
「いやぁ〜。お、ま、た、せ?」
とホカホカの明空拝(みくば)がタオルを頭から垂らしてお風呂場から出てきた。
「おぉ。おかえり?なのか?」
「んふぅ〜。なんかウケるな。いつも1人だけど、お風呂から出たら誰かいるの」
と笑う明空拝。
「まあ、そうか」
「もうちょい待って。ドライヤー速攻でかけてくるから」
「うい」
洗面所からウウォ〜〜ン!という轟音が聞こえてくる。
しばらくしたらサラッサラになった黒髪の明空拝がリビングに帰ってきた。
「ういぃ〜」
「毎回ドライヤーしてんの?」
「ん?してるけど?え、逆に流来(るうら)してないん?」
「してないな。めんどいし」
「え。でもさ、めっちゃブリーチしてるよね?」
「してるね」
「髪めっちゃ傷んでるよね?」
「傷んでるね」
「ドライヤーしないとヤバくない?」
「え。ドライヤー1つで変わるもんなん?」
「変わる変わる!ドライヤーしないとキューティクルが開きっぱになるのよ」
「え、でもシャンプーとかコンディショナーは髪のダメージ補修とか
潤いを与えるって書いてるやつ使ってるけど?」
「ま、それはいいことなんだけどさ?ダメージ補修できる限界もあるわけじゃん?」
「まあ、たしかに」
「正味、流来の髪がドライヤーしたところで
めちゃくちゃ変わるかって聞かれたらそんなことないかもだけど、やらないよりはやったほうがいいよ」
めちゃくちゃ流暢に話す明空拝。
「…電気代かかんない?」
「…かかるね」
しばし2人の間に「電気代」という文字が浮かんで、それを無言で睨む2人。
「あ、そうだ。気になってたんだけどさ」
と切り出す流来(るうら)。
「ん?なに?」
「あの鏡の前のポーチってなに?」
と流来が四角のスタンドミラーの前の白いポーチを指指す。
「あぁ〜…あれね」
急に歯切れが悪くなる明空拝(みくば)。
「あれはねぇ〜…。あのぉ〜。そう!姉ちゃんの!」
今思い付いた感満載の明空拝。
嘘つけ
と思う流来だったが
もしかしたら言いたくない理由があるのかもしれないしな
と思い「嘘つけ」とは言えなかった。しかしその表情を察して
「まあぁ〜…無理があるわな」
と白いポーチを手に取り、流来の隣に座って、ローテーブルの上にその白いポーチを置く。
「ま、流来には話してもいいかな」
と白いポーチのジッパーを開く。するとそこにはメイク道具が綺麗に収納されていた。
「あ、メイクポーチなんだ」
「そ。オレの」
一緒「ん?」と思ったが
「あぁ、明空拝のなのね」
とすぐに受け入れた。
「そうなんよ。ま、流来はさすが東京の人って感じの反応だね。すぐ飲み込んでくれる。
オレ北海道出身だって話したじゃん?」
「したね」
「熊穴(ゆうけつ)高等学校ってとこにいたんだけどさ?」
と明空拝が過去を振り返り話し出した。
「中学に上がったときくらいかな。ま、今思えば成長期だから
仕方ないのかもしれないけど、自分の顔がなんか…なんかでさ?嫌いではないんだけど…嫌いみたいな?」
「わかるわ」
同意する流来。
「せめてニキビとか肌荒れしないようにって、美容液、化粧水とかを使って気は遣ってたのね。
んで、そっから関連動画とかサイトでメイク関連のが出てきて、…手を出しちゃったのよ。
メイク前ーメイク後ーでなんかめっちゃ変わってるサムネとか見たらさ?
自分もこんな変われんのかな?ってなってさ。とりあえず動画とかサイトで見たメイク用品一式買って
動画、サイト通りにやってみて、なんか違くて
いろんな動画、サイト見て研究して。輪郭とか目のタイプとか。
で、いつの間にかメイク男子になってたわけですよ。
東京とかだと割ともう当たり前になってるっぽいけど、北海道だとまだそんなに浸透はしてないのよ。
もちろん「メイク男子」って言葉自体はテレビとかMyPipeのお陰で身近にはなってるっぽいんだけどね?
でも、メイク男子自体はまだ珍しいらしくてさ。
高校ー…何年だったっけなー…。ま、高校のときにいい感じの色のリップが出るってことで
学校の帰りに買ってさ?帰って試そうと思ったんだけど
親に…なんだっけな。なにかは忘れたけど、なんか頼まれたかなんかして
すぐには試せなくてさ?で、そのまま忘れてて
いつも通りメイク動画を見漁って、寝て、いつも通り学校行ったら、その日持ち検(持ち物検査)あってさ?
んで、オレいつも持ってちゃダメなの持ってってない偉い子だったからさ?」
と少しふざけた言い方をする明空拝(みくば)に笑う流来(るうら)。
「全然大丈夫ーって思ってて。ゲームのハード見つかる友達とかを笑ってたりしたんだけど。
仲良い女子の友達がメイク道具見つかって没収されるの見て
ハッっと思い出したんだよね。前日に買ったリップがバッグん中入ってることを。
どうしよって思ったんだけど、ま、どうもできなくてさ?
オレの番になってリップ見つかって、周りの友達も「え?」って。
さっきみたいに「いや姉のです」って言おうと思ったんだけど
姉なんていないの周知の事実だし、ただ「すいません」って言って没収されて
変な空気になってさ?ま、それだけならまだ良かったんだけど
メイクガッツリしたときに外出ないといけないときがあって
そんときに友達と会っちゃってさ。もう言い訳できないじゃん?」
と笑う明空拝。
「で噂が広まるのは早いよね。次の日学校に行ったら、なんかもう腫れ物扱い。
仲良かった男子も女子も距離感あってさ。あ、メイク男子ってこう見られんだって。
あ!そうだ!2年だ!2年のときだ!そう!で、幸い2年の出来事で、うちの高校割と人数いたからさ?
3年になってほぼ人間関係リセットできたからよかったんだけど、もうメイクのメの字も出さないぞって。
それで、ま、メイク男子にも優しい東京の大学受験して、今のこの大学来てさ?
でもやっぱメイクすると友達できないとか
いや、思ってないよ?思ってないけどさ?せっかくできた流来も離れてっちゃうんじゃないかって怖くてさ」
流来(るうら)は頷きながら静かに聞く。テレビの音が一層大きく聞こえるほど静かになる。
「明空拝(みくば)はさ」
と流来が口を開く。
「うん」
「ほんとはメイクしたい?」
「…まあ。うん。正直なんていうか、今メイクはしてないけど素顔を隠してる感じはしてるかな」
「なるほどね」
と納得した流来(るうら)に
あ、やってしまった。メイクポーチくらい隠せばよかった。もっとうまい誤魔化し方もあっただろうに
と明空拝が思っている最中、流来が口を開く。
「メイクすればいいじゃん」
「え?」
「したいならすればいいよ。それで離れてく人はもういない…し」
と少し照れくさそうに歯切れ悪く言う流来。少し面食らった明空拝だが、すぐに笑顔に変わり
「えぇ〜?離れてかない友達って流来のこと〜?」
と照れもあり少し茶化しながらくっついた。
「え。明空拝もしかしてそっち?メイク男子とかじゃなくてそっち系?
だったらごめん。いや、友達としてはいられるけど、候補にはなれないわ。ごめん」
「バカか!」
軽くツッコむ明空拝(みくば)。
「全然オレはそーゆーの否定しない人だけど
オレはメイク、美容男子であって、決してそっちじゃないから。
ちゃんと女の子が好きです。…この発言も変か」
「まあ、変ってかめっちゃヤリチ○に聞こえる」
2人顔を見合わせて笑った。
「あー!」
明空拝は両手を挙げながらそり返り、背後ベッド思い切り寄りかかる。
「なんかスッキリしたかも」
「デカいう○こでも出た?」
「小学生かな?…いや、なんかさっきも言ったけど
すっぴんで、素顔で大学通ってさ、流来って友達もできたけど
なんかメイクしてないけど、どこかほんとの自分を隠して付き合ってるみたいで
なんか…なんていうんだろうね。心のつっかえが取れた感じ?…いやぁ〜スッキリした!」
「それは…よかったな。ま、姉ちゃんのって嘘ついたのは一生忘れないけど」
「ちょっとぉ〜。いい話で終わりましょ〜よー。ごめんて」
と2人戯れ合い、笑い合った。