テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
あ ら 、 ? 私 の お は な し 完 結 し た け ど へ ~ き … ?
白い天井。まぶしい光が、まぶたの裏に差し込む。
「……ここは……」
ぼんやりとした意識の中、誰かが僕の名前を呼んでいる気がした。
「兄ちゃん……兄ちゃん……!」
滉斗の声だ。
必死に目を開けると、泣きそうな顔がすぐそばにあった。
「よかった……兄ちゃん、目が覚めた……」
「滉斗……元貴は……?」
「元貴も大丈夫。今、別の部屋で休んでる」
その言葉に、全身の力が抜けていく。
「ごめん……守れなくて……」
声がかすれる。
滉斗は首を振って、僕の手を握った。
「違うよ。兄ちゃんがいたから、僕も元貴もここまで来られたんだよ」
その言葉が、胸にじんわりと染みていった。
兄ちゃんが目を覚ましてくれて、本当にほっとした。
あの夜のことが、何度も夢に出てきて、涙が止まらなかった。
でも、元貴が警察に電話してくれたおかげで、僕たちは助かった。
「兄ちゃん、これからどうなるのかな」
病室の窓から、朝日が差し込んでいる。
「きっと、もうあんな家に戻らなくていいんだよ」
兄ちゃんが弱々しく微笑む。
「……本当に?」
「うん。警察の人が、新しい場所を探してくれるって」
「そっか……」
胸の奥に、少しだけあたたかいものが灯った。
知らない天井、知らないベッド。
目を覚ましたとき、隣には優しいお姉さんがいた。
「元貴くん、おはよう。お兄ちゃんたち、もうすぐ会えるよ」
その言葉に、涙がこぼれた。
あの夜、初めて家の本当の姿を見てしまった。
お兄ちゃんたちが、ずっと僕に隠してきた痛み。
「ごめんなさい……僕、何も知らなかった……」
お姉さんは、ぎゅっと僕を抱きしめてくれた。
「元貴くんが勇気を出して電話してくれたから、みんな助かったんだよ」
「……本当に?」
「本当だよ」
その言葉が、心の奥まで届いた。
数日後、三人は新しい家に案内された。
警察の人が「ここで、みんなで暮らしていいんだよ」と言ってくれた。
小さなアパートだけど、窓からは朝日がよく見えた。
「ここが、僕たちの新しい家……」
涼架がそっとつぶやく。
滉斗は、元貴の手を握ってうなずいた。
「もう、怖いことは何もないよ」
元貴は、大きくうなずいて笑った。
リビングには、元貴が描いた家族の絵が飾られた。
三人が手をつないで、にっこり笑っている。
その絵を見て、涼架は涙をこらえきれなかった。
「ありがとう、元貴。ありがとう、滉斗」
「僕こそ……ありがとう、兄ちゃん」
「僕も……お兄ちゃんたち、大好き!」
三人は、自然と手を重ねた。
*
夜、ベランダから見上げた空には、たくさんの星が瞬いていた。
「これから、どんなことがあっても、三人で一緒にいようね」
涼架がそっと言うと、滉斗も元貴も、力強くうなずいた。
「僕、もう泣かないよ」
元貴が小さな声で言った。
「でも、嬉しいときは泣いてもいいんだよ」
滉斗が笑う。
「うん……」
元貴の瞳に、涙が一粒だけ光った。
*
新しい朝が来る。
三人で食卓を囲み、食パンとスクランブルエッグ、そしてニッコリとした卵焼きとハム
を分け合う。
「いただきます!」
元貴の元気な声が部屋に響く。
涼架も滉斗も、自然と笑顔になった。
「これから、たくさん思い出を作ろう」
「うん!」
「絶対に、三人で幸せになろう」
「うん!」
窓の外には、虹がかかっていた。
誰もが、これからの未来に希望を抱いていた。