テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第5話 好きな人
翌日。
莉犬は朝から落ち着かなかった。
昨日、るぅとと一緒に帰ったこと。
好きな人を聞いたこと。
そして――
「今はいないです」
その言葉が、何度も頭の中を巡っていた。
莉犬「……何考えてるんだろ、俺」
教室に入る。
すると。
るぅと「おはようございます、莉犬さん」
莉犬「……!」
るぅとが笑っていた。
莉犬「お、おはよう!」
るぅと「どうしました?」
莉犬「え?」
るぅと「顔、赤いですよ」
莉犬「……っ!」
莉犬は慌てて顔を隠す。
莉犬「暑いだけ!」
るぅと「今日はそんなに暑くないですよ?」
莉犬「……うるさい!」
るぅと「ふふっ」
また笑われた。
莉犬「……」
その笑顔を見るだけで。
胸が少しだけ苦しくなる。
昼休み。
莉犬が廊下を歩いていると、前からるぅとが歩いてきた。
その隣には――
女子生徒がいた。
女子生徒「るぅとくん、このあと暇?」
るぅと「えっと……」
女子生徒「よかったら一緒に――」
莉犬「……」
莉犬は思わず足を止めた。
胸の奥が、モヤッとする。
莉犬「……何だろ」
二人の会話を聞きたくない。
なのに。
目が離せない。
女子生徒「じゃあ放課後ね!」
るぅと「はい」
女子生徒が去っていく。
莉犬は慌ててその場を離れようとした。
るぅと「莉犬さん?」
莉犬「……!」
るぅと「そこにいたんですね」
莉犬「……今の誰?」
るぅと「クラスメイトです」
莉犬「……そっか」
るぅと「どうかしました?」
莉犬「別に」
るぅと「?」
莉犬「……俺、用事あるから」
そう言って、莉犬はその場を離れた。
るぅと「……莉犬さん?」
放課後。
莉犬は一人で校舎裏にいた。
莉犬「……なんで」
胸に手を当てる。
莉犬「なんであの子と話してるだけで、こんなに嫌なんだろ」
ころちゃんのことが好きだった頃とは違う。
ころちゃんが誰かと話していても。
こんな気持ちにはならなかった。
莉犬「……まさか」
頭に浮かんだ言葉を、すぐに否定する。
莉犬「いや……そんなわけ」
そのとき。
後ろから声がした。
るぅと「莉犬さん」
莉犬「……るぅとさん?」
振り返る。
るぅとは少し息を切らしていた。
莉犬「どうしたの?」
るぅと「探しました」
莉犬「俺を?」
るぅと「はい」
莉犬「……何で?」
るぅと「今日、一緒に帰ろうと思って」
莉犬「……!」
るぅと「昨日、一緒に帰って楽しかったので」
莉犬「……そっか」
自然と笑顔になる。
莉犬「じゃあ、帰ろ」
るぅと「はい」
二人は並んで歩き出した。
しばらくして。
莉犬「……ねえ」
るぅと「はい?」
莉犬「昨日聞いたことなんだけど」
るぅと「好きな人のことですか?」
莉犬「……うん」
るぅと「どうして気になるんです?」
莉犬「それは……」
言葉が出てこない。
莉犬「……なんとなく」
るぅと「ふふっ」
莉犬「また笑った!」
るぅと「すみません」
莉犬「……で?」
るぅと「?」
莉犬「今は本当に、好きな人いないの?」
るぅとは少しだけ黙った。
そして。
るぅと「……います」
莉犬「……え?」
足が止まる。
るぅと「好きな人」
莉犬「……いるの?」
るぅと「はい」
莉犬「……誰?」
るぅと「それは――」
るぅとは少し笑った。
るぅと「秘密です」
莉犬「……!」
胸がズキッとした。
莉犬「……そっか」
るぅと「莉犬さん?」
莉犬「なんでもない」
笑おうとする。
でも。
うまく笑えない。
莉犬「……俺、先帰るね」
るぅと「え?」
莉犬「また明日!」
莉犬は走り出した。
るぅとはその背中を見つめる。
るぅと「……莉犬さん」
そして小さく呟いた。
るぅと「……まだ、言えないんです」
その夜。
莉犬はベッドの上で、天井を見つめていた。
莉犬「……好きな人、いるんだ」
胸が苦しい。
莉犬「誰なんだろ……」
女子生徒かもしれない。
別のクラスの子かもしれない。
それとも――
莉犬「……俺じゃ、ないよね」
その言葉を口にした瞬間。
莉犬は目を見開いた。
莉犬「……俺?」
自分で言った言葉に驚く。
莉犬「なんで……俺なんて」
しばらく黙る。
そして。
莉犬「……もしかして」
胸に手を当てる。
ドクン。
ドクン。
莉犬「俺……るぅとさんのこと――」
そこまで言って。
莉犬は顔を真っ赤にした。
莉犬「……違う!」
枕に顔を埋める。
けれど。
頭の中から、るぅとの笑顔が消えてくれなかった。
莉犬「……好き、なのかな」
その答えを。
莉犬はまだ知らない。
ただ一つだけ。
もう以前のように、ころちゃんだけを見てはいられなくなっていた。
――そして。
るぅとの「好きな人」が誰なのか。
その秘密もまた――
少しずつ明らかになろうとしていた。
誤字あったら教えてください🙏🙏
コメント
3件
るぅりいぬ✨️
第5話、読みました〜!莉犬くんの“胸がモヤッとする”感覚、すごく丁寧に描かれていて、思わずドキドキしながら読み進めちゃいました。るぅとさんに「好きな人、います」って言われた時の莉犬くんの動揺、そして夜のベッドで「俺?」って気づくシーン…あの流れ、めっちゃ好きです。もう以前の“ころちゃんだけ”じゃなくなったんですね。二人の距離感の変化がじんわり伝わってきて、続きが気になります…!誤字は特に気にならなかったです🙂
82
376