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【これが私の不思議なマスコット】
「や、やばい!!新学期早々に遅刻はまずいぃ!!?」
ドタバタと女の子にしては、デカすぎる大きな足音をさせながら歩道を走る。
見渡す限りの晴れで、キラキラと太陽の光がさす。
すれ違う人の視線を沢山受けながら、走り続ける。
私は、[朝倉 ひまり]
今年から中学二年生の女の子。頭も悪いし、運動神経なんてものは微塵もない。そんな私が通う学校は家から少し遠い。
始業式もあれば、クラス替えの表も貼り出されているというのにセットした目覚まし時計が壊れていた。
おかげで、猛ダッシュ中だ。
「…こら!遅いぞ!!!!早く入りなさい!!!!」
「はぁっ…すいませぇん!!」
校門の前に立つ先生に怒られ、軽く謝罪する。
急いで下駄箱に貼り出されたクラス表を見る。自分の名前を急いで見つけると教室のある三階まで一気に駆け上がった。
─ガララ
「遅かったね、寝坊でもした?」
私にそう問いかけてきたのは、友達の[春野 みこ]オシャレが大好きで、ノリがいい。いつも明るくて、時にはお姉さん気質な子。
運もよく、先生はまだ教室へ来てはいなかった。
(担任、どんな人なんだろう)
─────────
始業式を終えて、教室へとまた戻ってきた。すると、ほんわかした男の先生が教卓の前にいた。
「みなさん、はじめまして。今日からこのクラスを担当する”波路 はじめ”です。よろしくお願いしますね。」
ボケっとした雰囲気の先生だ。色々と不安になる。
(しょっちゅうやらかしてそうな雰囲気…)
「それじゃあ皆、自己紹介からやっていこうか。」
そう言われ、出席番号順でまわってくる。私は2番目だ。
最初のひとりが自己紹介をし終える。パチパチと拍手がなり、先生が私の名前を呼ぶ。
─ガタン
「はじめまして。朝倉 ひまり です。家はパン屋で、毎日手伝いしながら過ごしてます。友達いっぱい作れたらいいなと思ってます。よろしくお願いします!」
一礼すると、また拍手がなる。うまくいったようだ。
人前で話すのは嫌ではないが、それほど得意ではない。
そう、私は自己紹介でも言ったように家はパン屋なのだ。両親は仕事の都合で今はいない。
ただ、私には少し不思議な奴らがいる。
それは─
────
学校が終わり綺麗な夕日が見えてきた頃、家へゆったりとした足取りで疲れと帰る。
17:30を回ったところだ。
─ガチャリン
「ただいま」
?「おかえり」
明るく元気な声が家に響く。
そう私と住居している男の子。年齢は同じくらいの子。
この子が[マスコット]である。
この世界には不思議なことがある。
─物には力が宿る
代々そう伝えられてきた文化があった。とある神社にはそれを強く信じてきたところがあった。
願いは力をもたらす。その言葉が不思議なことに現実となったのだ。
不思議なマスコット
幽霊とは違い、はたまた生物とも少し違う。みんなが推し活でつけるような、ポテッとした丸いフォルムの[ぬいぐるみキーホルダー]と同じだ。
そんなものが神社の屋根に落っこちたのだ。
なんでそんなもの私が持っているのか、それはそこの神社に知り合いが居たからだ。
引き取る人がいない、誰も世話ができない、怖い、気持ち悪い、否定的な事ばかりで私が代わりに引き取る羽目となった。
マスコットの仕組みを教えてあげよう。
まず、マスコットは普段は喋らず、 たまに、あーとか、うーとか言うだけ。
ただ17:00を過ぎると、人間の姿になる。喋れるし何ら行動は人間と変わらない。
って言ってもみんなも不思議だよね。
私も最初はびっくりしたし戸惑ったりもした。
それでも、貰ったのは1年前なので、2年生となった今では割と慣れてきている。
私と暮らすマスコットの、この子の名前は、ぽち。
犬によくつける名前、でも実際にそう。
マスコットは動物の形をしている。この子は犬だった。
あ、男の子だよ。もふもふした少し長い髪の毛を、雑にお団子にまとめている。
「今日から新しいクラス???」
「そうなんだぁ。自己紹介もやったんだよ。」
「へぇ〜!」
何気ない会話をする。ご飯はいつも私が作っている。今日はうどんと漬物にする。
「いただきます!」
「いただきます〜」
作ったものを、夢中になって食べる。卵をふわふわにといて入れたうどん。味は問題なかった。
「美味しいよ?」
察したのか、ぽちがそう言う。
「ありがとう」
食べながらテレビをつけるとニュースが流れた。
『─のニュースです。○月✕日 ○○地区のマンションで悪質なマスコットに40代の女性が顔面にアイスをぶちまけられました。』
「……」
つい真剣になってみてしまう。
最近、よくあることだ。マスコットは命が宿った不思議なもの。育て方は人それぞれだ。間違った方向に育ててしまうと、宿った魂が暴走することもある。
元はマスコットだから、対して力がない。
だが、悪質な嫌がらせ、イタズラ、道具を使ってくるものがいるため危ないのだ。
か、可愛らしい…イタズラなんだけどね……
「俺は、こうはならないからね!」
ぽちが明るくそう言う。知ってるよもちろん。私が育てた家族だからね。
「んふふ、分かってるよ。ほらご飯ぐらいは楽しく食べよっ♪」
深くは考えてない。だって、滅多にマスコットが暴れることなんてないからね。
よっぽど間違えなければ大丈夫。