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『愛なんて、』 第10話
「勇人…本当は…ずっと会いたかった」
腕の中にいる仁人はまるで縋るように俺の胸元に頭を預けてきた。静まり返る部屋でふたり抱き合い心臓の鼓動が増す。
「俺だって、…ずっと…」
段々と視界が歪んでくる。
足がだるくて足元がずっと立っていられないくらいふらついてしまう。
やがて、ガクッと足の力が抜けてしまった。
「勇斗?……勇斗っ」
焦るような仁人の声が遠くの方で聞こえるが、ゆっくりと意識が遠くなっていった。
※
出汁のきいた良い香りが鼻をくすぐった。
ゆっくり目を開けると部屋は薄暗く見たことない照明器具が目に入って、ここはどこだと一瞬考えたが記憶が途切れる前の仁人の心配してる顔が思い浮かんだ。
慌てて起きあがろうとするが体が言うことをきかない。
額には冷却ジェルシートが貼られており、それももうパリッと乾いていてまだぼんやりする感じがまだする。
熱が上がりきった後のせいか寒気はなく汗をかいており肌に服が少し張り付いていて気持ち悪い。
「(ここは寝室か…)」
セミダブルのベッド。
自分は使わない嗅いだことのある柔軟剤がシーツなどから香る。ホワイトティーのさわやかな香り……仁人が好きな柔軟剤。まだ使ってるんだ。
寝室から出てリビングの方へ向かえば、キッチンにエプロン姿の仁人が立っていて、なにかを作っているようでおたまを持っていた。
「……どう?体調は」
「うん、だいぶマシになった」
「よかった。スポーツドリンク買っといたから飲んで。汗もかいてたしシャワーも浴びちゃいなよ」
「…ごめん、なんか…色々仁人に迷惑かけて」
「……はい、これ」
冷蔵庫から出して渡されたスポーツドリンクを飲んだ。乾いた体に水分は染み渡っていく感じがして、生き返った気分になる。
「下着はコンビニで勇斗のサイズの売ってたから買ったけど、服は流石になくって…だから悪いけど俺の着て?小さかったらごめん」
「なにからなにまで…ありがと」
「いいから、気にしないで」
風呂とドライヤーを済ませてリビングに行く。
ロンTはタイトまでいかないがピッタリサイズで、下のスウェットは裾から足首が丸見えするくらいの長さだった。
そんな俺を見て仁人が口をおさえてくすくす笑っている。
「あははッ!勇斗、スウェットつんつるてんじゃん!」
俺の好きな、くしゃっとさせて大きな口を開けて、でも手で口元を隠すような仕草。俺が好きな仕草のひとつだ。
仁人が笑ってる。
付き合ってた時の頃と同じような笑顔を俺に向けているのだ。
「お腹空いたでしょ、雑炊作ったから食べて」
テーブルにコトッと置かれたのはさっき良い香りだと思っていた卵の雑炊だった。
俺が体調崩した時とか仁人がよく作ってくれた。おなかがぐぅっと音が鳴る。
「…いただきます」
「はい、どうぞ。俺も食べよ」
お互い向かい合って座り雑炊を食べる。
スプーンで掬った雑炊をふぅふぅと冷ますように息吹いて下唇で熱くないかちょっとスプーンを近づける。そろりと口の中に入れれば「あっつ!」って仁人が熱がる。
「猫舌は変わってないんだね」
「そうそう変わるもんではないでしょ」
「はは、確かに」
雑炊を口にした。
舌に広がる出汁の優しくて懐かしい味。
美味しい、仁人のご飯だ。
抑え込んでいたものが、ドバッと一気に溢れ出てくる。
「……ゔぅう…ッ…じんとぉ…」
表情を歪ませ大粒の涙が勇斗の両頬を伝う。
ぼたぼた落ちてくる涙がテーブル濡らす。
見たことのない勇斗のそんな姿に仁人もまた目を見開いて、やがて涙の膜が張って溢れそうになるのを堪える。
「そんなに泣いてたら、雑炊しょっぱくなっちゃうよ」
「…うぅゔッ…おいしい、…」
「…そう、…良かった」
※
「俺はソファーで寝るね」
「いやいや、俺が勝手に来たんだから俺がソファー…それか床でもいいけど」
「風邪っぴきの人、そんなところで寝かせられないよ」
「うぅ…」
「じゃあ、勇斗…おやすみ」
そう言って寝室から出ていこうとする仁人の腕を気づいたら掴んでいた。
「…っあ、ごめん」
「ううん、なに?」
「いや、その……一緒に…寝ない?」
「…え?」
「仁人が嫌だったらいいんだ…」
「………」
どうしよう…と悩んでいるような困っているような表情をしていた。
「…やっぱり、大丈夫!おやす…」
「寝る…勇斗と一緒に寝る」
「…いいの?」
「いいよ」
「風邪うつっちゃうかも」
「いいって言ってるの」
そうして俺たちは同じベッドで寝ることになった。
薄暗い寝室に入って1時間くらい経った。
少しでも俺は仁人に風邪をうつさないようにとお互い背中合わせでベッドに横になっていた。そしてふたりとも無言で会話は特になかった。
こんな状況で眠れるはずもなく、目を閉じているだけだった。
「仁人……寝た?」
「…ううん」
「そっか…」
もぞもぞっと向きを変えて、壁を向いて寝ようとしている仁人の背中をジッと見つめた。
「抱きしめてもいい?」
仁人はピクッと小さく反応する。
「……うん」
消え入りそうな声。
更に仁人に近付いて背中から優しく包むように抱きしめた。前よりちょっと痩せて小さくなった気がする。
腕の中に仁人がいる。
愛しい、宝物のような俺の大切な人。
「俺は、仁人が失うのが怖いってこと知っていたはずなのに…仁人を大事にするって…絶対離さないって言ったのに…結局守れなかった……ごめん、……ごめんな…」
「……うん」
「すぐに許して欲しいと思ってない…でも今度こそはもう、離さない。死ぬまで一緒にいたい…仁人、愛してる…」
返事はなかった。
だけど手に仁人が指先を絡めてきて、やがてぎゅっと軽く握ってきたのだ。
甘えてくる時の仕草だ。
ふたりで寝るには狭いベッド。
こうやってくっついて寝ていた、同棲していたあの頃を思い出して俺は静かに泣いた。
続
最終話は🤍Endと🩷Endを予定してます。
なぜかというと私の小説にでてくるjyuさんがいつもsnさんに良いとこ取りされているので、たまにはいいかなぁと思いまして。。
コメント
5件
両エンドあるの楽しみです! 特に🤍エンドはここからどうなるか楽しみです

え?🤍エンド…?こっから!? どうなるんでしょう一体…どきどき。

jnちゃんがかわいすぎて hytの気持ちが痛い程わかって 二人が尊すぎて また泣いちゃいました、、 感情が忙しくてすみません…。
#👶🏻➰💘
♡♡
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はるか
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