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僕の母は自他ともに認める美魔女。つまりただの美女ではなく、相手の弱みを握って相手を支配しようとするタイプだ。
僕の弱みは自慰行為を見られたこと。一度や二度なら分かるが、中学生の頃から僕が家を出るまで二十回以上見られた。偶然を装っていたけど、今思えば回数的に偶然はありえない。きっと全部故意に見ようとして見たものだろう。
自慰行為を見られたからといって、怒られたり軽蔑の眼差しを向けられたりしたことはない。
「思春期の男の子なら当然のことだから気にしなくていいのよ」
「ここだけの話。お父さんもあの年でしょっちゅう自分でしてるのよ」
「いつまで経っても彼女を作らないから性欲ないのかと心配してたからかえって安心した」
理解ある母親を装ってそんなことを言っていたが、今思えばすべて僕を服従させるための言動だったに違いない。実際、いつしか僕は母親に頭が上がらない従順な息子になっていた。
萌さんに言えないことはもう一つある。僕以外の男性との交際経験がないことを僕の結婚相手の条件とするくらいだから、僕の母もそうだったのだろうと萌さんは思い込んでいるが、それは違う。母は結婚前に既婚者を含めて何人かの男性との交際経験があった。
それを父から聞いたときは嘘だろうと思ったが、母が不倫相手の妻に慰謝料として100万円を払うという示談書を見せられて事実だと認めるしかなかった。つまり、母は不倫までしていた自分のことを棚に上げて、結婚するなら処女しか認めないと僕に無理難題を吹っかけているわけだ。なぜそんな要求をするのかは知らない。僕が母とかかわりたくないと言っているのは、かかわれば腹が立つことばかりだからだ。
結婚するまで性経験がなかったのは、母ではなく父の方だ。職場不倫だったから、母は不倫相手の妻から退職を要求された。退職したら生活できないと母がゴネたら、上司でもあった母の不倫相手は離婚せず再構築を選択し、部下の中からおとなしい父を選んで母の結婚相手としてあてがった。母は貯金がなかったから、100万円の慰謝料も実際は父が出した。母は退職し、専業主婦になった。
不倫すれば不幸になる? この件では加害者二人は何も失ってない。被害者である母の不倫相手の妻は100万円の慰謝料を得た。不倫と無関係だった父だけが不倫女を押しつけられた挙げ句、100万円という大金を失った。
結婚後は元不倫女の母に家計を握られ、昼食代込みで毎月三万円与えられる小遣いが自由になるお金のすべて。母の言う通り父がしょっちゅう自慰行為していたとすれば、夫婦生活も父が望んだ形ではなかったはずだ。おそらく母の方からのセックスレス。母の性欲処理は? 社交的な人で外出することも多いから、また不倫相手がいるのかもしれない。
あまり乗り気ではなかったけど、僕の実家に萌さんを連れていく日時を設定した。次の週末。
アスルヴェーラの今週末の高知戦はスコアレスドロー。最下位に変わりないが、勝ち点1を増やした。
次の週末の試合もアウェイ。対戦相手は 青森県 八戸のチーム。やはり応援に行くには遠すぎる。だからその日に顔合わせを入れた。