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⚠️注意書き
・水桃
(最近、ちょっとハマってる、?)
・恋愛
・下手っぴ注意報
🦈「らんく〜ん!」
事務所での会議終わり。
長丁場で疲れ果てた体にコーヒーを注ぎながら、机の上を片付けていると、
こさめが話しかけてきた。
🌸「ん〜?」
🦈「この後、らんくんの家行っていい?」
🌸「は、?」
目を通していた資料から顔を上げた。
突然の訪問予約に、間抜けな声を出してしまった。
🌸「そんな、急に…」
ポケットの中からスマホを取り出して、スケジュールを確認する。
18時から、企業様との打ち合わせ。
20時には歌の収録。
事務所を出るのはだいたい22時過ぎ。
それから、自宅までの移動でだいたい1時間。
家に帰ったら、溜まっていた動画の編集とか、作業を進めるつもりでいた。
🌸「…俺の家、ここから遠いけど」
🦈「知ってるよ?」
🌸「……、」
この調子だと、何を言っても変わらなさそう。
言い訳をしてなんとか断ろうとしたが、諦めた。
ため息をひとつついて、分かった、と言葉を返した。
結局、収録が長引いて、家に着いたのは日を跨ぐ寸前だった。
玄関のドアを開けて、後ろについてきた彼を中に入るように促した。
🦈「久々のらんくんの家だ〜!」
当の本人はテンションが上がっているのか、声のトーンが普段よりも高い。
レジ袋を手にして、まるで自分の家かのようにリビングへと向かっていく。
🌸「部屋の中で変なことするなよ」
🌸「最近掃除したばっかだから、汚されたら困る」
🦈「平気よ!」
気分が上がっている今、この男が何をしでかすか分からないので、念の為にそう注意した。
が、こさめはあまり信用ならない返事をして、持っていたビニール袋から缶ビールを数本取り出した。
🌸「…え、呑むの?」
🦈「呑まんの?」
さっき、家に帰る途中でコンビニに寄りたいと言ってきたのはこの為か。
🦈「たまにはいいやん!」
🦈「自分へのご褒美!ね?」
半ば強引に俺の手にビールを一本持たせて、それにこさめのを合わせる。
コツン、という乾いた音と共に、乾杯の音頭が部屋に響いた。
呑み始めてから、かれこれ1時間が過ぎた。
机の上には、空き缶やらおつまみやらが転がっている。
話しているとあっという間だな、なんて思いながら、隣で缶の中の液体を遊ばせているらんくんに手を伸ばした。
🦈「…らんくーん、、」
🌸「なに?」
🦈「こさめ、眠くなってきた…」
🌸「そうだねー、眠いねー」
🌸「おやすみ、」
少し甘い声を意識して、らんくんの腕を引き寄せると、泣いた子をあやすように、こさめの頭を撫でてきた。
なんだかこさめがわがままな子供みたいで、惨めな気分になる。
🦈「ガキ扱いしとる?」
🌸「えへへ、ごめん、笑」
小さく笑うらんくんの頬は、まだ赤く染まっていなかった。
早く酔って欲しいのに。
目の前にある空になった缶をそっと睨んで、また一口、注ぎ込む。
部屋の中には、泊まっていくという空気が当たり前に漂い始めていた。
眠くなった、という会話をしてから数分。
こさめは酔ってしまったのか、机に突っ伏したまま動かなくなった。
俺はまだアルコールが体内に回っていないため、脳は働く。
こさめが寝ている今のうちに、編集でもしてこようかなと思って、その場から立ち上がった。
🦈「…らんくん、」
🌸「え、?」
後ろから声がして振り返ると、頭を上げたこさめがこちらを見つめていた。
🌸「どうしたの?」
🦈「らんくん家って、ぬいぐるみたくさんあるよね、」
そう言って顔を向けた方に目をやると、ソファの上で横になったぬいぐるみがあった。
🌸「…まあ、ね」
🌸「気に入ったやつ、すぐ買っちゃうから、」
🦈「…ふぅん、」
興味があるのかないのか、曖昧な返事をして、その中のひとつを抱き上げた。
🌸「それ、気に入ったの?」
🌸「あげてもいいけど」
それをじっと見つめたまま、こさめはしばらく何も言わない。
他のぬいぐるみも持ってきた方がいいのかな。
リビングを出ようとした時、こさめがようやく口を開いた。
🦈「うさぎ、多くない?」
🌸「え?」
そうだっけ、と、思う返してみる。
🌸「…ああ、たしかに、?」
多いかもね、なんて言って、ひとつのうさぎを持ち上げた。
これ、たしかクレーンゲームでいるまが取ってくれたやつだっけ。
夜中に二人でゲーセンに行った時のことを思い出して、少し口角が上がる。
🦈「…うさぎ、ね」
妙に納得したように、こさめはそう呟いた。
一人でにやにやしてるらんくんを見て、ムッとした。
こさめ、知ってるよ?
それ、いるまくんに取ってもらったんでしょ。
前に通話してる時、嬉しそうに話してるのを聞いたから。
メンバーに嫉妬とか、ほんとに情けないけど。
今、こさめの方を見ていないうちに。
ゆっくりと立ち上がって、らんくんに覆い被さった。
ころっ、と、らんくんが抱えていた可愛らしいうさぎのぬいぐるみが床に転がり落ちる。
🌸「…へ、?」
案の定、今の状況を理解できていない彼は、目を丸くしてこちらを凝視している。
今だけ。
今だけは、こさめだけを見てくれる。
🦈「…ねぇ、」
不安と焦りが覗く桃色の瞳から視線を離さずに、そっと髪の毛に指を通した。
そのまま頬にかけて手を滑らして、首筋へと向かっていく。
優しく、可愛がるように。
さっき、彼がそうしたように。
🌸「な、、(困」
🌸「こ、さめ…っ、?」
分かりやすく困惑している彼に問いかけた。
🦈「らんくん、知ってる?」
🦈「うさぎって、寂しがり屋なんだって」
🌸「あ、、へぇ、」
口をぽかんと開けて、声を漏らす。
ほんとに分かっているのかな、笑
🦈「…たしかに、らんくんにはぴったりかもね、」
🌸「え?」
こさめが、突然変なことを言い始めた。
顔を両手で鷲掴みにされた時点で、既にこさめの挙動がおかしかったけれど。
目を逸らそうとしても、真っ直ぐにこちらを見ているものに吸い込まれそうになる。
目を離せずにいると、おでこにコツン、と自身の額を合わせてきた。
照明に影がかかり、普段よりワントーン暗くなったこさめの口元には、薄らと笑みが広がっていた。
🦈「一人だと寂しいくせに、甘えるのは下手くそだもんね、笑」
🦈「でも、それもいいんやない?」
🦈「こさめがたくさん甘やかしてあげるから、」
🌸「え…?」
訳の分からぬまま、話だけがどんどん先に進んでいく。
でも、確実に、部屋の空気がじんわりと熱を帯び始めていく。
やばい、と思った。
今すぐ彼から離れるべきだと、本能的に感じた。
🌸「……っ、(押」
力任せに肩を押し返してみる。が、その手を握られてしまい、却って逃げられなくなってしまった。
🦈「だーめ、」
🦈「今日くらい、甘えてもいいんよ?」
されるがままにこさめの元へ引き寄せられる。
撫でるように腰に手が回って。
握られていた手も、いつの間にか複雑に絡められていて。
頭の中はもう真っ白だった。
🌸「ちょっ、…ほんとに、っ(焦」
🌸「離して…っ、!」
深夜の1時過ぎ。
男二人きり、部屋の中でこんな状況なんて。
俺自身がおかしくなりそうだ。
🦈「…甘やかすって言ったじゃん、」
低めの声でそう呟かれて、
良くない引き金を引いてしまった、と思った頃には、もう遅かった。
成人男性にしては細身のらんくんの腰に手を添えて、こさめの方へと引き寄せる。
らんくんがそっちに気を取られているうちに、掴んだ手を恋人繋ぎに握り直した。
何度も何度も、離してと主張し続けるらんくんを無視して、その耳に顔を近づける。
🦈「…何されるのが嬉しいの?」
🌸「……ッ、(ビクンッ」
耳元で囁いただけで、肩が大きく跳ねる彼を、どうしようもなく愛おしいと思ってしまう。
🦈「教えてよ、らーんくん、♡(耳元」
鼓膜を包み込むように、甘く、熱いキスをひとつ落とす。
🌸「ひっ”、!?」
すると、らんくんは小さな悲鳴をあげた。
🌸「ぉまえ…っ、⸝⸝(照(睨」
後になって恥ずかしさが込み上げてきたのか、頬を桃色に染めてこさめを睨んでくる。
🦈「…ごめん、つい、笑」
笑って誤魔化すフリをすれば、らんくんは過敏に反応する体を落ち着かせて、コップに入った水を渡された。
🌸「酔ってんだろ…っ、⸝⸝⸝」
🌸「とりあえず水飲め……」
差し出されたものを言われた通りに飲むのでは、なんだかつまらないから。
そーだね、とか、適当な返事を返してコップを手に取る。
🦈「でも、らんくんも飲んだ方がいいんじなゃい?」
そう言って、コップの中身を口に含み、少し火照っている彼の唇を奪った。
🌸「んッ”、!?」
突然の口付けに驚き、こさめから離れようとする腰をしっかりと掴む。
らんくんの口から甘い声が漏れた瞬間を狙って強引に舌をねじこめて、
こさめの唾液と混ざった水を口移しした。
🌸「んぅ…ッ、⸝⸝(ビクッ」
🌸「んんッ…、ぁ…⸝⸝⸝」
ゴクンと喉が一鳴りしたのを確認して、彼の唇から離れた。
🌸「……あ、ぇ…っ、⸝⸝⸝(困」
らんくんは未だにこの状況が理解できていないようで、間抜けな声ばかりを発している。
キスしてしまった。
しかも深いほう。
メンバーとのこんな失態、世に知れ渡ったら、間違いなくこさめの活動人生は終わる。
こさめだって、他のメンバーにも絶対に言えない。
メンバーに恋してることすら、まだ言えてないのに。
でも、今はアルコールの力があるもんね。
どんなことも、『酔ってた』という理由で許される。
どんなことも、惚けて忘れたことにできる。
『甘えていいよ』なんて言った言葉も、
さっきの深いキスも、
全部、酔っていたからできたこと。
次、目が覚めた時、こさめの中ではこの記憶がなくなっていることになってしまうけど。
🦈「…好き」
今になって、酔いが回ってきた。
らんくんの肩に寄りかかって、無意識にそう呟いてしまう。
本人の表情は分からないけれど、黙ってまた頭を撫でてくれた。
目の奥が熱くなったのも酔いの所為にして、ゆっくりと瞼を閉じた。