ガチャン
玄関の鍵が開く音がした。
家の間取りは所謂、メゾネットタイプというやつで、玄関だけが1階にあるのである。
ゆっくりと階段を上がってくる足音がする。
今日は割と元気だな。
足音だけで凛の1日の疲れ具合がわかる。
これは3年間で習得した私の能力だ。
リビングの扉が開き、凛と目が合う。
「おかえり」
「ただいま」
いつも通りのやり取りだ。
それだけ終えると、凛はビニール袋から買ってきた物を取り出し冷蔵庫にしまった。
少しは休めばいいのに。と思うが、凛はいつも帰宅後すぐに夕飯の支度を始める。
私は、何か手伝おうかと近づくが、煙たがられてしまう。
私がキッチンに入ることを嫌っているようだ。
女性というものは、皆そうなのだろうか。
「できたよー。はい、お食べ。」
凛は出来たばかりのご飯を私の前に置いた。
私は肉でも、魚でも何でも食べるのだが、凛は栄養バランスの取れた食事を好む。
味は申し分ないので、不満はないが量が少ない時があるのが玉にキズだ。
前にその事で大喧嘩したことがあったが、『デブになって病気になったらどうするの』と怒られて以来は文句を言わないようにしている。
私が食事に手をつけ始めるのを見ると凛は浴室へ移動していった。
凛は一度入浴し始めると1時間半は戻ってこない。
溺れているのではないか、と毎回不安になるほどである。
私は食べ終わった食器をキレイに片付け、リビングのソファで凛の帰りを待った。
テレビでは、ハロウィーンの特集が流れている。
道理で寒くなってきたわけだ。
エアコンを付ける程でもないけれど、少し肌寒い。
ソファに置いてあった凛のブランケットを拝借することにした。
凛の柔らかい匂いに包まれながら、私は眠りに落ちていった。
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