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お風呂は好きだ。
髪の毛を洗う面倒臭さはあるけれど、それを差し引いても自分一人の空間で一日の疲れを癒せる行為は、私にとって無くてはならないものである。
最近雑貨屋で購入した、壁にスマホが掛けられるケースは正解だった。
一通り洗い終わって、浴槽に入りながら動画を見る時間が何よりも幸福である。
動画が見たいわけではない。その行為自体が特別感があって好きなのだ。
最近は、韓国ドラマにハマっている。
2話分を見ると、全身から汗が吹き出してくるので最後に冷水シャワーで身体を冷やして出るのが日課である。
バスタオルで身体を拭いた後、大きな溜息をひとつついた。
この溜息は、世の長髪女性達には共感してもらえると思う。
今綺麗にした全身を、また汗だくにしながらドライヤーをかけ、ヘアオイルを塗りたくる。
私が無添加な状態でいられるのは、入浴中の1時間しかないのだ。
一連のメンテナンスを終えると、癒されたはずの一日の疲れが更に重みを増して返ってきたようだった。
リビングに戻ると、食事を終えた彼が、ソファに座っていた。
「ご飯お口に合いました?」
化粧水を手のひらに伸ばしながら問いかけると、彼はこちらを向くこともなく「うんー。」とだけ返事をした。
その無気力な返事に、私は無意識的に口をすぼめているのが手鏡に映った。
なんだ、可愛らしいとこ私にもあんじゃん。
自分で自分を労い、笑顔を作った。
全てのケアが終わると食欲すらなくなっていた。
大体毎日こんな感じだから夕飯は食べない日も多い。
コーヒーをマグカップに注ぎながら、何が面白いのか理解できないが、ハロウィン特集を眺め見ている彼の後姿を眺めた。
カウンターチェアに腰掛け、スマホで明日の仕事の優先順位を確認しながら、今日の職場で感じた疑問を思い出していた。
それは、私自身も全く意識をしていない状態で、本当に不意に口をついて出てしまった言葉だった。
「私達って結婚するの?」