テラーノベル
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後半です!
桜は、まだ咲いていた。
あの日から数週間、葵はずっと胸の奥に蓮の言葉を抱えて過ごしていた。駅で別れたあと、何も変わらなかった日常。でも、ひとつだけ違ったのは——もう、自分の心に嘘をつかないと決めたことだった。
彼に会いに行こう。たとえ遅すぎるとしても。
蓮の住む街の小さな公園に、春の雨が降っていた。傘も差さずに立ち尽くす彼を見つけたのは、偶然じゃなかった。
「……蓮。」
彼は振り返り、驚いたように目を見開いた。そして、笑った。
「やっぱり、来てくれると思った。」
「……なんで、わかったの?」
「春になると、君はちゃんと戻ってくるって、信じてたから。」
葵はゆっくりと歩み寄り、傘をそっと彼の頭上にかざす。蓮の髪には、雨粒がしっとりと光っていた。
「私、ずっと怖かった。蓮を好きなままじゃ、前に進めないと思ってた。でも……違った。」
「うん。」
「好きなままでいい。……ずっと好きで、いいんだって思えた。あなたが幸せなら、それでいいって思ってたけど……」
彼女は、一歩近づく。
「あなたと一緒じゃなきゃ、私、幸せになれない。」
蓮は、葵の手をそっと握った。
「俺も、ずっと同じだった。気づくのが遅くて、ごめん。でも、今なら言える。」
彼は彼女を見つめ、まっすぐに言った。
「……一緒に、いよう。」
静かに、雨は止んだ。
空を見上げると、雲の切れ間から柔らかな光が差していた。ふたりの傘の中に、その光がふんわりと溶け込んでいく。
春は終わる。
けれど、ふたりにとっては、これが始まりだった。
風に舞う最後の花びらが、ふたりの肩にそっと降りたとき、葵は微笑んだ。
「来年も……桜、見に来ようね。」
「うん。君と一緒に。」
——そうして、ふたりの春は、ようやく重なった。
― 終 ―
だめ作ですね✨️wこれ読んでくれる人なんているんかな‥?
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われが読みにきた!()