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かく
第九話 距離が近い後輩
文化祭が終わって三日。
学校はいつもの日常に戻っていた。
……はずだった。
「先輩、おはようございます!」
朝。
昇降口。
「先輩、お昼一緒に食べましょう!」
昼休み。
教室前。
「先輩、今日も部活行きますよね?」
放課後。
廊下。
――距離が近い。
とにかく近い。
原因はもちろん蓮だった。
「蓮」
「はい!」
「近い」
「そうですか?」
そうです。
今も顔が近い。
僕が一歩下がると、蓮が一歩近づく。
なぜだ。
◇
昼休み。
屋上。
いつもの場所で昼食を広げる。
すると当然のように扉が開いた。
「先輩ー!」
来た。
「ここ座ります!」
「聞く気ないだろ」
「あります!」
絶対ない。
蓮は僕の隣に腰を下ろした。
肩が触れそうな距離。
近い。
本当に近い。
すると。
ガチャ。
また扉が開いた。
「……いた」
悠真だった。
僕と蓮を見て、一瞬だけ眉が動く。
「悠真?」
「ここだったか」
そう言いながら近づいてくる。
そして。
僕の反対側に座った。
……なんで?
「サッカー部は?」
「休憩」
短い返事。
でもなぜか帰らない。
◇
結果。
僕を挟んで左右に二人。
非常に居心地が悪い。
「先輩」
「ん?」
「今度の日曜暇ですか?」
蓮が聞く。
「たぶん」
「じゃあ写真撮りに行きません?」
「いいよ」
その瞬間。
反対側から声。
「俺も行く」
「え?」
悠真だった。
「なんで?」
「なんでって」
悠真は少し考えて。
「俺も暇だから」
絶対違う。
蓮もそう思ったらしい。
にやにやしている。
「悠真先輩」
「何」
「ついてくるんですか?」
「悪いか」
「別に」
絶対面白がっている。
◇
放課後。
写真部。
僕は文化祭で撮った写真を整理していた。
すると。
「先輩」
蓮が椅子ごと近づいてくる。
ガラガラガラ。
近い。
「見てください」
「ん?」
カメラの画面を見せられる。
そこには一枚の写真。
文化祭の日。
展示室で笑っている僕だった。
「いつ撮ったの?」
「秘密です」
得意げな顔。
意外と上手い。
自然な表情が撮れている。
「いい写真だね」
そう言った瞬間。
蓮の顔がぱっと明るくなった。
「本当ですか!?」
「うん」
「やった」
子供みたいな笑顔だった。
◇
その日の帰り。
校門を出ると。
「湊」
悠真が待っていた。
「どうしたの?」
「帰るぞ」
「待ってたの?」
「ついで」
嘘だ。
絶対待ってた。
二人で歩き始める。
夕方の街。
少し肌寒い風。
しばらく沈黙が続いたあと。
悠真がぽつりと言った。
「蓮のやつ」
「うん」
「お前のこと好きだろ」
思わず足が止まりそうになる。
「は?」
「たぶん」
「いやいや」
「気づいてないのか」
悠真が呆れた顔をする。
でも。
僕にはよく分からなかった。
蓮は懐っこい。
誰にでも明るい。
だから特別だとは思えない。
そう伝えると。
悠真は少し黙った。
そして。
「じゃあ」
低い声。
「俺だったら?」
「え?」
「俺がお前を特別だと思ってたら」
心臓が跳ねた。
夕陽が差し込む横顔。
真剣な表情。
冗談には見えない。
でも。
次の瞬間。
「……なんでもない」
悠真は前を向いた。
「帰るぞ」
まただ。
文化祭の日と同じ。
言いかけて。
やめる。
だけど。
今度ははっきり分かった。
あれは冗談じゃない。
僕は隣を歩く悠真を見上げた。
胸が少しだけ騒がしい。
その理由を。
まだ言葉にはできなかった。
コメント
3件
悠真の「俺だったら?」で心臓止まるかと思った…!!😭💕 蓮くんのストレートな距離の詰め方も可愛いし、悠真の不器用な独占欲もエモすぎる。二人とも違うベクトルで湊くんのこと「特別」にしてるのが伝わってきて、続きが気になって仕方ないです!!📸✨
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