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「いーち、にーぃ、さーん、よーん、ごーぉ、ろーく、っとね」
一般的に”童顔”と呼ばれる顔立ちだ。 あどけなさが残る愛嬌溢れる顔立ちだが何処か 儚げで、妖艶な雰囲気を漂わせている。
「オニーサンあんまり持ってないねェ…」
銀座の数少ないラブホテル。
ベッドで大の字になり息を整える男性と そのベッドに座り諭吉を数える 中学生くらいの少年。 はぁ…と息をつく少年に男性はニヤリと笑って口を開く。
「キミ凄いね…。ねぇ、あと10万だすからヤろ?」
男性は綺麗な黒髪の短髪をかきあげてニコリと笑ったが少年は相変わらずのアダルトさを漂わせ口角を上げた。
「…えー、もう疲れたから無理かなァ…」
でも…オニーサンは気に入ってるからまた誘ってあげる。そう付け足して男性の額にキスをしてホテルを出て行く少年の背中を見届けた男性は眉をひそめた。
「…いやぁ、アレは反則でしよ…」
死んだ筈だ。
夕焼けに照らされるかっちゃんを横目に飛び降りて、最後に見たのは償おうとするかっちゃん。相当なトラウマを負わせてしまう事になったが…申し訳ない。
肌は冷たく、頭が痛い。傷口に沁みるような匂い、エタノールの刺激臭が鼻に残る。
―――霊安室だ。
室温は4℃くらいかな。モニタリング機器を消さなければ急に生還した死体と思われてしまう。
戸惑う頭を無視して無理やり思考回路を巡らせる。
まずはここから脱出することが今1番重要だ。
一時的な停電と装い電源を落とす。
ゆっくりと立ち上がり、厳重な扉を開けて窓に足をかける。下はゴミ捨て場でクッションとなる袋が沢山ある。ここ、2階から飛び降りても無傷で外に出られそうだ。
麻痺した恐怖心のおかげで難なく自由落下する。
ポスンと静かな音がして鼻には生臭い臭い。眉を顰めてゴミ捨て場から出ると近くの路地裏にフラフラとしっかりしない足取りで入る。換気扇に背中を預けてやっと一息ついた。
なんで生きているのか。
グルグルと致死量の脳内麻薬 が流れる脳を無理やり働かせて考える。
確かに死んだ。飛び降りたが不思議と痛くなくて、でも生暖かい液体が全身から出ると共に意識が遠くなった。最後に聞いたのは耳が痛くなるほどの幼なじみの掠れた叫び声。
────少し興奮したり…。
思い出して熱くなる顔を軽く叩いてこれからどうするか考える。
僕は気が付かなかった。
背後から忍び寄る1人の揺れる影に。