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02 彼女との出会い
私が彼女と初めて会ったのは六月の初め頃。
じめじめとした湿気が蝕む初夏のあの日、私は自殺をしようとしていた。
遺書なんてものはない。
大体、そんな物を残したい人は残念ながら、私にはいなかった。
「私がいなくなったらみんな泣いて喚いてくれるかな。」
そのまま地獄のどん底まで堕ちればいい。
私と一緒に地獄の底を這い作ればいい。
両親も、クラスメイトも、先生も。
「みんな、みんな、死ねばいいのに。」
そう言って、学校の屋上から足を一歩出した時だった。
誰かに腕を掴まれた感覚がして、後ろに転んでしまった。
「ふぅ__はぁ___」
気づけば私の後ろには藤色の髪の女の子がいて、静かに息を切らしていた。
「待って、だめ___」
階段を走って上ってきたのか、荒い息を整えていた。
腕はがっしり掴まれていて、振り解こうと思っても、振り解けなかった。
「___何してるの!?」
落ち着いたのか、彼女が息を整えてからそういった。
何って___
「見たらわかるでしょ。」
私がそう言うと、「そう、だけど____」と歯切れの悪い返事が返ってきた。
まるで月みたいに綺麗な彼女の瞳は「不安でいっぱい」とでも言うように静かに揺れていた。
「私、あなたの事、ほっとけないよ!!」
その言葉は、当時の私によく響いたと思う。
私のことを気にかけない人間ばかりで感情も潰れかけていたその時の私に。
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