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最後に考えるべきことはなぜ私の名前を知っていたのかという点だった。しかしそれはどうにも答えが出なかった。私が思考を巡らせている間も彼はずっと笑顔を浮かべていた。そして私の肩に手を置き「じゃあまたね」と言った後すぐにその場を去った。私はその後姿が見えなくなるまで目で追った。彼の姿が消えた後もしばらくその場で佇んでいた。すると今度は背中を叩かれた。振り向くと友人がいた。「お前さっきあの人と話してただろ?」とその友人は言った。「うん」「知り合いなのか?」「いや全然知らない人だよ」と私は嘘をついた。実際彼とは今日初めて会ったのだ。「なんだそりゃ!俺はあいつのこと知ってるぞ!」と言って友人は続けた。「あの人は天才だよ。確か年齢は俺らと同じぐらいだと思うけど大学行かずに就職したらしいぜ。しかもめちゃくちゃ有名な会社に勤めてるって噂もあるしよぉ。あとめっちゃイケメンだし。あんな人が同級生とかマジ羨ましいわー」と言いながら友人の目は輝いていた。私は適当に相槌を打ちながら話を聞いていた。それから私たちは大学の食堂に向かった。食堂に着くともう既に沢山の学生で賑わっており空いている席を見つけるのは困難だった。結局私たち二人はいつも座っている隅っこの方に向かい合って腰掛けた。すると友人はすぐにスマホを取り出しゲームを始めた。その間私は目の前に置かれた水の入ったコップを見つめていた。すると突然頭の中にあの青年の顔が浮かんできた。私は慌てて首を横に振ったが一度想像してしまったものはなかなか消えてくれずその後も何度か思い出してしまい恥ずかしくなった。私は誤魔化すために鞄の中から教科書を取り出すとそれを読み始めた。しばらくしてから私はふと思った。もし本当に彼について調べたら自分の過去についてもわかるのではないかと。私は早速インターネットを開き彼の名前を入れて検索をかけた。すると驚いたことにトップページに出てきた。おそらくこれだけ有名人ならば多くの人が知っているだろうと思いもう少し詳しく検索をかけてみた。すると様々な記事が出てきたがどれもこれも信憑性に欠けるようなものばかりだった。そこで私は思い切って直接彼に聞いてみるという選択肢を選んだ。しかしいくら考えてみても連絡先はわからないため仕方なく諦めることにした。そこで私は一旦考えることをやめ昼食を食べ始めた。
翌日から私は今まで以上に講義に集中するようになった。理由は単純である。少しでも早く卒業したいからだ。周りからは不思議そうな目を向けられたが特に気にしなかった。それよりも卒業までの道のりの方が重要だったのだ。しかし、そんな私の思いとは裏腹に単位を落とすことはなかったもののギリギリの成績での進級であった。
「おい!お前なんであんな成績なんだ?」
ある教授に呼び出された私はこっぴどく怒られていた。私自身全く自覚はなかったのだがどうやら私は授業中寝ていたらしい。しかも、他の生徒よりも遥かに少ない睡眠時間で。そのせいでテストでは平均点以下を叩き出していたらしい。
「すみません。自分としてはちゃんと聞いていたつもりだったんですけど……」
「言い訳はいらん!!」
その後、一時間以上に渡って説教を受けた後解放された。私が解放された時にはすっかり日が落ちていて辺りは暗くなっていた。
(今日は遅くなったし明日に備えてさっさと帰るか)
大学を出る頃には完全に陽が落ちてしまっていてあたりは真っ暗になっていた。そして、人通りの少ない路地に差し掛かった時後ろから肩を掴まれた。反射的に振り返るとそこには目出し帽を被った男がいた
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