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#⛄️
kaede🍁
47,545
上映後
エンドロールが終わった。
劇場内が明るくなる。
それでも。
メンバーは誰一人として席を立たなかった。
「……」
「……」
「……」
妙な沈黙が続いている。
阿部は隣にいる目黒と顔を見合わせた。
「みんなどうしたの?」
反応がない。
目黒も不思議そうに聞く。
「映画、どうだった?」
その瞬間。
渡辺がようやく口を開いた。
「……怖い。」
「え?」
「普通に怖い。」
深澤も真顔で頷く。
「俺、途中まで普通の脱出ゲーム映画だと思って見てたんだけど。」
「俺も。」
岩本が呟く。
「結婚してたって分かった辺り、普通に感動してた。」
「俺もや!」
康二が身を乗り出す。
「記憶戻ってよかったなぁって思ったのに! 全部嘘やん!」
「めめ怖すぎ!」
佐久間が叫んだ。
「最後の幸せそうな生活が一番怖かった!」
宮舘も珍しく引いた顔をしている。
「阿部が幸せそうだから余計にね。」
「そう!」
ラウールが頷く。
「本人だけ何も知らないんだもん。」
阿部は苦笑する。
「映画だから。」
「分かってるけど!」
「演技だよ?」
「分かってるって!」
渡辺はそう言いながら、目黒から微妙に距離を取った。
すると。
ラウールが何かを思い出したように阿部を見る。
「ねえ、これメイキングありそう?」
「え?」
「Blu-rayとか出たら。」
「ああ……撮ってたよ。」
「あるんだ!」
ラウールの目が輝く。
前回のホラー映画。
メイキング上映会が予想以上に面白かったことを、全員覚えている。
「じゃあまたみんなで見ようよ!」
「見る!」
佐久間が即答する。
「本編怖かったから裏側見たい!」
「俺も。」
深澤が頷いた。
「めめが普通に戻るところ確認したい。」
「何それ。」
目黒が笑う。
「だって今お前見るとちょっと怖いもん。」
「ひど。」
阿部は笑いながら立ち上がった。
「じゃあ発売されたら、またみんなで見ようね。」
「絶対ね。」
ラウールが嬉しそうに答えた。
その時。
目黒も立ち上がった。
そして自然に。
阿部の腰へ腕を回す。
「あべちゃん。」
「ん?」
目黒は阿部を自分の方へ引き寄せた。
「一緒に帰ろうね。」
「うん。帰ろ――」
阿部が答えかけて。
止まった。
目黒の表情。
映画の最後。
何も知らず自分を愛する阿部を抱き締めながら。
『ずっと一緒にいようね』
そう囁いていた。
あの目黒と。
まったく同じ笑顔だった。
「……。」
阿部が目黒を見る。
目黒はそのまま。
ゆっくりメンバーへ顔を向けた。
幸せそうで。
優しくて。
それなのに。
さっき映画館の大画面で見せられたばかりの。
あの笑顔。
「……っ!」
佐久間が両腕を擦った。
「鳥肌立った!」
「やめろ!!」
渡辺が本気で叫ぶ。
「怖い怖い怖い!」
康二が岩本の後ろへ逃げる。
「めめ! その顔今やったらあかん!」
深澤まで一歩下がった。
「あべちゃん、逃げろ!」
「どこに?」
「分かんないけど逃げろ!」
「俺、めめと一緒に帰るんだけど。」
「それが怖いんだよ!」
ラウールは自分の腕を見ていた。
「見て。本当に鳥肌立ってる。」
宮舘も苦笑する。
「役者って怖いね。」
目黒は数秒その表情を保っていたが。
耐えられなくなったのか。
「ふふっ。」
普通に笑った。
「冗談だよ。」
「笑えねえよ!」
渡辺の声が劇場に響く。
阿部は呆れて目黒の腕を軽く叩いた。
「めめ、悪趣味。」
「みんなの反応見たかった。」
「俺までちょっと怖かった。」
「ごめん。」
そう言いながら。
目黒は阿部の腰から腕を離さない。
深澤がそれを指差した。
「だから今それも怖いんだって!」
「これはいつも通りじゃん。」
「映画見た直後なんだよ!」
結局。
演技だと分かっているのに。
帰り道。
メンバー全員がいつもより少しだけ、
目黒と阿部の後ろを歩いた。
___________
映画のBlu-rayが発売された日の夜。
約束通り、メンバー全員が集まっていた。
「今日は絶対メイキング見ないと無理。」
渡辺が真顔で言った。
「まだ引きずってんの?」
阿部が笑う。
「お前は自分が被害者役だからいいんだよ。」
「俺も演技なんだけど。」
「特に最後。」
深澤が目黒を見る。
「幸せそうなあべちゃん抱き締めながら笑ってるめめ、普通にトラウマだから。」
「そこまで?」
「上映後に再現した奴が言うな。」
目黒が笑う。
ラウールはすでにリモコンを握っていた。
「じゃあ再生しまーす。」
「お願いします。」
佐久間が両手を合わせる。
「俺たちの中のめめを普通のめめに戻してください。」
「何それ。」
再生ボタンが押された。
___________
最初に映ったのは。
目を覚ました阿部が、見知らぬ部屋を探索する場面。
本編では。
不安そうに周囲を見回し、恐る恐る壁を叩いていた。
しかし。
『カット!』
声がかかった瞬間。
阿部が壁に耳をつける。
『めめー。』
壁の向こうから。
『はーい。』
『聞こえる?』
『聞こえるよ。』
『結構普通に聞こえるね。』
『ね。』
阿部が楽しそうに。
コンコンコン。
目黒も。
コンコンコン。
さらに阿部。
コンコンコンコン。
目黒も同じ回数返す。
『何してんの二人とも。』
スタッフの笑い声。
「……平和。」
宮舘が呟いた。
「これを求めてた。」
深澤が安心したようにお菓子を食べる。
___________
続いて。
初めて二人が対面する場面。
撮影が始まる。
扉が開き。
目黒と阿部が目を合わせる。
『やっと会えた。』
本編では印象的だった台詞。
しかし。
『カット! もう一回お願いします!』
『はい。』
二人が元の位置へ戻る。
再び。
扉が開く。
『やっと会えた。』
『……ふふっ。』
阿部が笑った。
『カット!』
『ごめんなさい!』
『あべちゃん、なんで笑ったの?』
『めめが毎回同じ顔で「やっと会えた」って言うから。』
『同じ演技しないと駄目でしょ。』
『分かってるんだけど……ふふっ。』
目黒まで笑い始める。
「よかったぁ!」
佐久間が叫ぶ。
「普通のめめあべだ!」
「何を心配してたの?」
阿部が笑う。
___________
映像は中盤へ。
結婚していることが判明する重要なシーン。
アルバムを見ながら阿部が震える。
『俺たち……結婚してるの?』
『してる。』
重い空気。
『俺とあべちゃんは結婚してる。』
『……カット!』
その瞬間。
目黒がアルバムを覗き込んだ。
『この写真すごいね。』
『ね。俺、本当に結婚したのかと思った。』
『あべちゃん、ドレス似合ってる。』
『ありがとう。』
『これ欲しい。』
『何に使うの?』
『家に飾る。』
『やめてよ。』
「おい。」
渡辺が目黒を見る。
「ストーカー役が抜けてねぇぞ。」
「純粋に写真が欲しかっただけ。」
「言い方!」
___________
そして。
偽物のリビングでの撮影。
スタッフがセットを紹介している。
『実際に二人が暮らしている雰囲気を出すため、生活感にもこだわっています。』
その後ろ。
阿部が冷蔵庫を開けていた。
『めめ。』
『ん?』
『何も入ってない。』
『セットだからね。』
『お腹空いた。』
『終わったら食べよう。』
『何食べる?』
『あべちゃん何食べたい?』
『焼肉。』
『いいよ。』
「デートの約束すんな。」
深澤が突っ込む。
「撮影終わりだからいいじゃん。」
目黒は笑う。
___________
そして。
いよいよ問題の終盤。
「来た。」
ラウールが姿勢を正す。
「ここから怖かった。」
阿部が気を失い。
目黒が抱き止めるシーン。
本番。
目黒は眠る阿部を抱き締め。
うっとりとした笑みを浮かべる。
『やっと俺のこと好きになってくれたね。』
「……。」
分かっていても。
メンバーが静かになる。
『カット!』
その瞬間。
『あべちゃん重くなかった?』
阿部が目を開けた。
『全然。』
『腰大丈夫?』
『大丈夫。』
『俺、変な体勢じゃなかった?』
『大丈夫だって。』
「逆!」
佐久間が笑う。
「これなら安心して見られる。」
岩本も笑っていた。
___________
そして。
ラストシーン。
幸せそうに眠る阿部。
その隣で。
目黒が恐ろしい本心を隠しながら抱き締める。
本編では。
最も後味が悪かった場面。
『ずっと一緒にいようね。』
額へのキス。
そして――
『カット! OKです!』
『ありがとうございました。』
目黒が一瞬で役から戻る。
『あべちゃん、終わったよ。』
『ん……。』
阿部が起き上がる。
『眠い。』
『寝てた?』
『ちょっと。』
『本当に?』
『めめ暖かいから。』
『じゃあもう少し寝る?』
『撮影終わったんでしょ?』
『うん。』
『じゃあ帰る。』
『一緒に帰ろ。』
その瞬間。
メンバー全員が固まった。
「……。」
テレビの中の目黒が。
ごく普通の笑顔で言う。
『一緒に帰ろうね。』
上映後。
目黒が阿部の腰を抱いて言った言葉と。
全く同じだった。
「……めめ。」
深澤が低い声で呼ぶ。
「ん?」
「お前あの時、これわざと再現しただろ。」
数秒。
沈黙。
目黒が笑った。
「うん。」
「やっぱり!!」
全員から一斉に声が飛んだ。
___________
その後。
エンドロールと一緒にNG集が流れ始める。
阿部がセットに躓きそうになり。
『危ない!』
役を忘れた目黒が助けに行く。
謎解きの台詞を間違えて二人で笑う。
指輪をはめる場面で。
なかなか入らず。
『あべちゃん浮腫んでる?』
『失礼だな。』
『ごめん。』
そんな映像が次々流れる。
メンバーの空気も。
すっかりいつも通りに戻っていた。
「いやー。」
佐久間が満足そうに伸びをする。
「これで安心して寝られる。」
「よかったね。」
阿部が笑う。
渡辺も頷いた。
「目黒も普通の目黒に戻ったし。」
「最初から普通だよ。」
「いや、映画見た直後は無理だった。」
その時。
メイキングが終わり。
画面が暗くなった。
目黒が隣の阿部を見る。
「あべちゃん。」
「ん?」
自然に腰へ腕を回す。
「一緒に寝ようね。」
そして。
ゆっくり。
映画と全く同じ笑顔を浮かべた。
「……。」
全員の動きが止まった。
次の瞬間。
「やめろって言ってんだろ!!」
渡辺が叫ぶ。
佐久間は悲鳴を上げ。
康二はラウールの後ろへ逃げ。
深澤はクッションを目黒へ投げた。
阿部だけが。
腰に回された腕を見てため息をつく。
「めめ、気に入ったでしょ、それ。」
「うん。」
「もうやらないで。」
「家でだけにする。」
「家でもやらないで。」
結局。
恐怖を消すために開かれたメイキング上映会は。
最後の最後で、目黒本人によって全部台無しにされた。
コメント
5件

一気に読みました。 普通の謎解きが恐怖者に変わってた ストーカー依存 地味に怖い😱 最後まで🖤以外沼にハマった感じ 1人🖤楽しんでいる ジワジワやってくる怖さですね。
3組の新婚旅行に🩷達他のメンバーが便乗して新婚旅行なのか グループの慰安旅行か分かんなくなるってのも面白い様な気がする、それぞれの夫婦でイチャイチャしたいのに割り込むメンバー、🧡は写真係りで付いてくって言い出したり、🩷は切り込み隊長の俺無しで盛り上がらないと言い出したり🤍はパパとママの息子だから付いてくって言い出したりしそう
途中まで騙されました😱 すごく良かったです❤️