読む前に…
葛葉さんの生い立ちや家族構成などサラッと勉強しただけなので、ほぼ捏造です。
ヴァンパイアの生態にもあまり詳しくないので、あしからず。
くずもち両片思いな設定
今回長いです。
葛葉side
「はぁ!?叔父上が人間界にくる?」
スマホに向かって叫ぶ俺のテンションとは裏腹にゆっくり、のんびりした母親の声が続いた。
『そうなのよぉ〜。あの子私と違って「貴族として生まれたからには!」みたいな、お堅い所あるじゃない?貴方の様子を観光ついでに見に行くなんて言っててね』
「うっ…」
『ヴァンパイアとしての作法が〜とか高貴な血筋を持つ者の振る舞いが〜とか行く前からうるさいのなんのって』
「うっわ。俺、あの人苦手なんだよ。母さん、息子は体調不良で会えませんとかなんとか言ってさ…」
『え〜無理よ。愚息は日本でゲームに夢中なの〜って言っちゃったもの』
「よりによって、そんな事言う!?」
貴族同士にありがちな見栄の張り合いなんて面倒臭いもん嫌いだけど馬鹿正直にありのままを伝えるのは、どうなんだ母上。
『大丈夫!いつものように振る舞えば納得して帰るでしょ』
「はぁ…気が重い」
『あーっ!お鍋ふいてる、それじゃ頑張ってね。また電話しましょっ』
ブチッ
ツーツー…
最悪だ。
無情に鳴り響く通話終了の音に暫く呆然と立ち尽くした。
『葛葉』と『アレクサンドル・ラグーザ』という二つの名を持つ俺は、純血のヴァンパイアにして魔界の貴族
由緒正しいラグーザ家の三男として生まれた。
出来のいい兄達と違って、ゆるく伸び伸びと育てられたため魔界時代は相当な問題児
それでも、なんだかんだ家族は末っ子の俺に甘かった。
ただし、母親の弟だけを除いて
幼少期。年相応にやんちゃだった俺は仲良くなった使用人にイタズラしたり、大口開けて笑ったり、走り回って元気に遊んだりと、そりゃもう今じゃ考えられないくらい健康優良児だった。
『貴族の子供が、はしたない!お前はラグーザ家の者としての自覚が足りん!』
そんな俺によくカミナリを落としていたのが叔父上である。
あまりにうるさくて、しつこいので対叔父上の対応策を編み出してしまったほどだ
これを発見してからは、叔父上からの受けがいいようで小言の数を格段に減らす事に成功。
そのうち魔界から離れ、叔父上の声が届かない安全な国日本で平穏な生活を満喫しまくっていたのに
「なんで急に…」
久しぶりに波乱の予感がした。
「で?その話と、ここに僕がいる理由が繋がらないんだけど…あとその格好なに?」
普段は寄り付かない、お洒落カフェのテーブルを挟んで対峙する俺と、ロリコン高校生。
見慣れない状況と服装の俺に胡散臭さを感じているもちさんは、キョロキョロと状況把握に忙しい
わかるよ?
黑のお洒落サマーセーターに細身の白いパンツ。軽く遊ばせた髪。明らかにキメてきてる俺とか笑うわな
「急に呼び出して悪かったよもちさん。実は、その叔父さんが今からここに来るんだが一緒に会ってほしいんだ。あと、この格好は叔父さんの受けがいいからで…」
「いや、なんで僕がお前の叔父さんに会うんだよ?」
「あ〜話せば長くなるんだけどぉ〜」
「簡潔に言え」
容赦ねぇ。
「結論から言うと、もちさんに俺の世話役を演じてもらいたいんだ」
「は?」
叔父上は、貴族である事に誰より誇りを持ってる。
作法とか、しきたりとかを第一に考える人だ
「俺も一応向こうでは貴族だからさ。それなりの振る舞いを求められるわけ。なのに…側仕えがいないってなると一発アウトなんだ、叔父さんの事だからアウトとみなしたら魔界に強制送還されかねない…」
「ブタさんとか叶くんに頼めばいいじゃん」
「忙しい…って断られた」
「もしかして人望ない…?」
「ブタは本家に呼び出されてて叶は、案件!」
思わずムキになる
ロリコンのくせに、その可哀想な子を見る目やめろ。
「とにかく、もちさんは話合わせてニコニコしてるだけでいいからさ頼む」
「……」
誠意が伝わったのか小さな溜息と共に「わかったよ」ともちさんが呟いた
剣持side
珍しい事もあるもんで葛葉から連絡がきたのは前日の夕方頃。
「ちょっと話がしたいんだけど…日曜日もちさん暇?」
とかいう、なんとも軽い誘い方だったので指定された個室形式のお洒落カフェに違和感を感じながらも遊びの誘いだと思っていた。
「だって本当の事言ったら来ないじゃん」
当たり前だ。
あ、来た。と窓の外を見て呟いた葛葉は、瞬間スッと背筋を伸ばし深呼吸した。
家族に対して、そんなに緊張する必要があるのだろうか。
「待たせたようだな」
頭上から威厳溢れる声が聞こえて、見上げる。さすが葛葉の親戚って感じの渋い美形の男性が立っていた。
数秒僕が呆けていると正面にいた葛葉が立ち上がり
「叔父上、お久しぶりでございます。」
と右手を心臓の上に置き軽く会釈した
え?誰おまえ…
葛葉が僕の隣に移動し叔父さんに席を譲る。
「息災であったか、サーシャ」
「ええ。人間界は学びも多いので毎日楽しいですよ」
「そうか。して、そちらの方は?」
きた!
視線を向けられて一気に緊張する
「私の世話係をしてくれている子です」
「ふむ…人間の子だね。食事の役割も兼ねているのかね?」
「「へ!?」」
真面目な顔して意味不明な発言をするおっさんに戸惑う。
けど、そう言えばこの人達吸血鬼だったな。
「人間の彼を側に置くとは、そういう事ではないのか?」
「えっと…彼は…」
それまでハキハキと明瞭な受け答えをしていた葛葉も、僕に気を遣ってか歯切れが悪くなる。友人のピンチを見ていられなくなって自分から声を上げた。
「僕は、剣持刀也と言います。葛葉さんの世話係と…食事も偶にですが…」
自分で言ってて恥ずかしくなり尻すぼみに言葉が小さくなる。
「ほう…そうか。チャームを使わずとも仕えてくれるとは、大したものだ」
「恐縮です。」
テーブルの下で葛葉が勢いよくサムズアップしている。上半身の優雅な振る舞いとのギャップに吹き出しそうになった。
それぞれ頼んだ紅茶やらコーヒーが届き口をつける。ちょっと落ち着いた所で、また叔父さんが大真面目に問うた
「だが剣持くん。君からサーシャの香りを感じないのだが…」
「ぶはっ」
「ごほっ」
今度こそ二人同時に吹き出してしまった
「か、彼は貧血気味なのであまり多くの血は飲めないのです。そのせいでしょう」
「ほう?まぁ貴族として下の者を大事にするのは良い事だ。だが些か香りを感じなさすぎる、これでは他所の吸血鬼に盗られてしまうぞ?」
マーキングかよ
「ご忠告ありがとうございます。」
既に疲れた顔で答える葛葉に同情する
「やはり、心配だな。サーシャ今ここで彼に血を貰いなさい。今日は彼も血色が良いようだからな」
「はあ!?あ…いえ叔父上それは、ちょっと…」
とんでも発言しかしない叔父に葛葉もだんだん紳士然と頑張っていたものがベリベリと剥がれていく
「聞けば人間界でゲームとやらにのめり込んで色々と疎かにしているそうじゃないか、このまま私と魔界へ帰っても良いのだぞ?」
「ぐっ…」
まさに危惧していた展開になり葛葉が俯く
グッと拳を握りしめるのをみて気づかれないように溜息を吐いた
「わかりました。僕が彼に血をあげれば納得してくださるんですね?」
バッと隣の葛葉が僕を見る気配がする
もう、こうなったらヤケだ
大丈夫こんなの献血だと思えばいい。ボランティアだボランティア。
「ほら剣持くんも、こう言ってくれているじゃないか」
脅したアンタのせいですけどね
「…本当にいいの?」
弱々しく言う葛葉に力強く頷いてみせた
とりあえず飲みやすいようにシャツのボタンを外し首元をくつろげる
個室で良かった…いや個室じゃなかったらそもそも、こんな展開になってないのだろうか
「はい、いいよ葛葉」
「もちさんって偶に凄く男らしいよな」
「飲むの?飲まないの?」
「いただきます」
世話係と謳っておきながら上下関係が見える会話に、ヤバ…と思ったが相変わらず無表情でこちらを見る叔父さんに安堵した
葛葉の距離が近づく。
僕の肩に腕をまわし、見つめる美しいルビー色の瞳が意識を奪っていく
「もちさん、ごめん」
耳元で囁いた後。首にチクリと痛みが走った。
「んっ…」
全身がフワリと軽くなるような。力を抜かれていくような感覚。
でも、なんだか
すごく
気持ちい…。
刺した部分を労るように軽く肌を舐められ身震いを一つ。初めての感覚に、そのまま気を失った。
剣持side
『…ちさん…もちさん…』
誰かの呼ぶ声で意識が浮上する。薄く目を開くと
「大丈夫か?もちさん」
どうやら葛葉の肩を借りて寝ていたらしい
礼を言って頭を持ち上げ正面にいたはずの人物が居ない事に気づいた
「あれ?叔父さんは?」
「やりたい放題して一人で納得して次の観光地に出掛けた」
「お前の叔父さん癖強いな」
「ごめん、もちさん。まさかこんな事になるなんて…」
今日は葛葉の意外な一面を見すぎて消化不良気味だが落ち込んだ表情は、彼に似合わない気がして、ほんのちょっと本音を言ってみる
「仕方ないよ、気にしてない。……ちょっと気持ち良かったし…」
「え」
「ほら!帰るぞ」
耳まで赤く染まった顔を早く外気で冷ましたくて足早に歩いた
後ろから慌てたように着いてくる足音がする
「もちさん」
「なに?」
「また、吸わせてね」
味をしめた獣みたいに喉を鳴らして笑いながら言う吸血鬼。
「ばーか。」
悪態をつきながらも捕食される側の快感を知ってしまった自分に気付かないフリをした。
おわり
長かったー!まずここまで読んでくれた方お疲れ様です✨いかがでしたか?
裏話ですけど叔父上は、本当は叔父馬鹿です。甥っ子達が可愛いすぎて度々ちょっかいをかけ満足したらデレデレで姉に電話します。ツンデレです。
コメント
14件
最後の補足で叔父上好きになっちゃいました笑ツンデレなのね> ̫<
初コメです?(多分) リクエストで咎人書いて欲しいです(´;ω;`) 主様の書き方が凄く好きなのでリクエストさせて頂きました! (無理だったら全然大丈夫です!!)
ありがとうこざいます😊 ( -ω- `)フッԅ( ¯ิ∀ ¯ิԅ)グフフフフフフ