『そこまで、わかっておるのか…。10年も前の事じゃが、今でもハッキリ覚えておる。あの日、わしが家の中で御先祖様のお仏壇のお掃除をしていたら声が聞こえてきたんじゃ。“マサおばあちゃん”ってね。最初は御先祖様の声だと思ってビックリしたよ。とうとう、お迎えが来ちまったのかと思った。でも再び“お願いがあって来たの”と言う声が聞こえてきた。その直後にチャイムが鳴ったから慌てて玄関に行きドアを開けると制服を着た可愛いらしいお嬢さんが立っておったのじゃ』
『彼女の正体は?』
『あのお嬢さんは、自分が誰なのかは名乗らなかった。只、あの“木の箱”を10年後の今日、瑛太の手に渡るようにして欲しいと言ってきたんじゃ』
『どうして名前も名乗らないような見ず知らずの人間の言う事を、疑いもせずに10年間も大事に保管しておいたのさ?』
『瑛太と同じ目をしてたんじゃ…他人のような気がしなかった。それに、あのお嬢さんの顔を見て確信した。うちの家系の血を継ぐおなごは鼻の頭に小さなホクロがある。瑛太のお母さんにもあるじゃろ?』
『そう言えば…確かにあった』
『あのお嬢さんにもあったんじゃ。あのお嬢さんは、うちの家系の血を継ぐおなごじゃ。間違いない』
『それじゃあ、彼女は僕の親戚って事?』
『わしの親戚には、あのような子はおらんよ。と言うか…この時代の人間ではないんじゃろ。瑛太は、その事をわかってるようだが…どうなんじゃ?』
『まっ、まぁ…』
『やっぱりそうじゃったか…』
マサおばあちゃんは、それ以上何も喋らなかった。
きっと10年もの長い歳月を経て成し遂げた約束と、10年という長い時間ずっと疑問に思っていた謎が解けて肩の荷が下りたに違いなかった。
電話を切ると、直ぐに葵さんに電話をした。
『もしもし…紺野です』
『紺野さん…届いたんですか?』
『知ってたんですか?』
『紺野さんと駅で別れてから、映像を見たんです。能力者が絡んでいるんで、直前にしか見えないみたいなんです。それより“木の箱”の中身は見たんですか?』
『まだです。何か開けるの怖くて…』
『わかりました。これから会って一緒に見ましょう。私直ぐ行きますから』
『今、家じゃないんですか?』
『今、駅にいます』
『どうして? もっ‥もしかして、こうなる事がわかってたから帰らなかったんですか?』
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!