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夢を見てた。
長い、永い夢だった。
小さな頃、フェルが叶えてくれたたくさんの事。
一人じゃないと、いつもそばに寄り添っててくれた事。
小さな僕の涙を拭ってくれてた事。
叶えたい、夢があった。
それを叶えてくれたのは、フェルじゃなかった。
僕の手を取って、一緒に走ってくれた二人。
一緒に泣いて、一緒に笑って、たくさんの思い出を作ってきた二人。
時には、フェルの事を忘れさせてくれた二人。
こんなにも愛されてたって、今なら言える。
フェルが呼んでる、ここに居ろって。
でも、二人の声もする、こっちへ来てって。
どうしよう、僕、どうしたらいいと思う?
…ギターの音が聞こえる。
二つ聞こえるから、二人で弾いてんだ。
いいな、僕も混ざりたい。
そう思った瞬間、意識が浮上した。
いつものクセで、隣にいるフェルを撫でる。
「…おはよぉ、フェル…。」
起きたら、まず、そうしてる。
ちゃんと隣にいるのを確かめたら、起き上がる。
起き上がったら、誰かと目が合った。
「えっ…。」
なんで、もときがいるんだろ。
思わず視線を彷徨わせたら、今度はもときの隣のわかいと目が合った。
「えっ…えっとぉ、おはよう、ございます?」
なんで二人ともいるの。
そばにギターまで置いて。
てか、また聞かれてるじゃん、フェルに話しかけたの。
二人とも、一言も喋らない。
フェルは、二人を睨んでる…気がする。
「あのー…。」
『お前もだ。選択の時が来た。』
今まで聞いた事のない、フェルの声だった。
立ち上がったフェルが、僕と二人の間で立ち止まって座る。
その足元には、小さなフェルの子供みたいなのが戯れついてる。
「何その小さいの。可愛い、抱っこしたい。」
あ、思わず本音が。
『今はダメー。』
『終わったらねー。』
二匹も喋れるんだ。
「りょうちゃん!」
僕の本音で空気が緩んだのか、もときが大声で僕を呼んだ。
「はいっ!」
反射で思わず返事をする。
『涼架、今あの二人にも、我の姿は見えている。そして、この声も届いている。その上で問う。』
フェル、僕の名前なんて呼んだ事ないのに。
空気がピンと張り詰めた気がした。
凄く凄く大事な事が、今から決まる。
そんな気がした。
『お前は、どちらを選ぶ?』
「ふぇ?」
どちらって…どちら?
もときの肩が揺れてる。
「そこの神様よぅ、りょうちゃん分かってないと思う。」
笑いを堪えた声で、もときがそう言ってくれた。
「だよな。あの言い方は。」
なんならわかいの肩も揺れてた。
『全く…お前は。』
ため息混じりに、フェルが呟く。
『我とそこの二人と、どちらを選ぶか。』
「ふぇえ?」
いきなり、急ですね!フェルさん!
「なぁ、聞いていい?」
手を上げて、わかいがフェルに問いかける。
「これ、もし、そっちを選んだら、涼ちゃんどうなる訳?」
『神の国へ、連れて行く。』
「神隠しって訳か。オレらを選んだら?」
『我が消える。故にどちらかしか選べない。』
「え、どっちもヤダ。」
フェルが消えるのも、二人と居れなくなるのも。
「だそうですよ?」
余裕綽々な態度で、足も腕も組んで、ソファにもたれかかったもときが不敵に笑う。
「神話だろうと伝説だろうと、オレの愛を舐めんな。そんな中途半端な感情でりょうちゃんを愛してねぇよ。」
「元貴、お前、今めっちゃ愛の告白したけど、自覚ある?」