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きき
35
あれは何ヶ月前だったか、僕の部屋に若井が来た時のこと。
「飲み物どうぞーって···若井?なにして···?」
隠しておいたはずの黒い箱の中身を凝視してる若井がいて、どうしようと焦った。
普段は隠していたそれを、昨日開けてそのまま出しっぱなしにしていたんだった。
若井や元貴に見られたくない唯一のもの。
僕が隠していた、自分。
「···ちゃんと片付けてたら良かった···気持ち悪いもの見せてごめん」
ゴムとか、大人の玩具、そしてアダルトDVD···別にそれくらい成人男性の部屋ならあってもおかしくない。けどパッケージにあるのは男性同士が裸で抱き合っていて、玩具も女の人に使うものじゃない。明らかに、男性用でしかも受け入れる方のやつ。
すぐにその手から箱を奪おうとしたけど若井の行動は予想外のものだった。
「りょうちゃん、こういうのが好きなの?」
そういうと黒い箱からDVDを取り出した。流石に意地悪すぎないかと取り返そうとするけど若井の表情は嫌悪とういよりなんだか嬉しそうでムッとしてしまう。
「〜っ、そうだよ!黙ってたのは悪かったけど···ほっといてほしい、若井にも元貴にも迷惑かけないから!別に付き合ってる相手がいるわけじゃないし」
それを奪い返して箱に仕舞ってクローゼットの奥に片付けようとした瞬間、後ろからぎゅっと若井に抱きしめられた。
「な、なに?!」
「ごめん、違う···その、俺も···だから。だから···本当にそうなのかなって···嬉しくて」
「俺もって?そうって??···なに」
抵抗するのを止めて背中に体温を感じながら若井の返事を待つ。
僅かに抱きしめる腕が強くなった気がした。
「俺も、男の人が好き···っていうか!りょうちゃんが好きで、りょうちゃんがそいう対象で···けど、どっちかというと···その、タチっていうの?攻め···なんだけど···いや、ごめん、いきなり!けどごめん、そういうこと」
焦ってるのかどんどん強くなる腕になんか若井の真剣さとか素直さを感じて思わず吹き出した。
正直、気持ち悪いとか嫌いとか言われなくて良かったって安心感もあって。
「わ、笑うことないじゃん···」
「ごめん、なんか安心して。嫌われたらどうしようとか思ってたから···けど、ごめんね。若井からの気持ちは嬉しいよ、すごく···けど、応えられない」
トントン、を腕を叩くとゆっくりと離してくれた。
離れて若井の腕の中って心地良いもんなんだなと感じた。
けど···。
「恋人は居ないんだよね?他に好きな人がいるとか?俺じゃだめ?メンバーだからとか?」
「好きな人はいないよ。ただそういうこと。僕は···恋愛の好きがわからない。トキメイたり、付き合いたいとかがよくわからない、昔から。友情とか家族愛はわかるのに、元貴が歌うような恋とか愛は···想像は出来ても、体験したことはないんだよね。この人好印象だなぁとかいいな、くらいはあってもね···それでも性欲はあってそれは同性相手で···へんな、話だよねぇ。相手も居ないのに」
へらっと変な自分を誤魔化すように笑うと腕を掴まれて振り向いて若井と目があった。
そしてまた、力強く抱きしめられてしまった。
若井がここまで強引なところはあんまり見たことがなくてなんだか男っぽいなと感じる。
「変とかじゃないから!りょうちゃんは、りょうちゃんだから···好きとかじゃなくてもいい。でももし···望んでくれるなら、りょうちゃんの体の部分だけでも俺が満たしたい···だって俺は好き、だから···!」
「···ほんとに、言ってる?」
「ほんとに、本気で···好きです」
こんなに真っすぐに気持ちをぶつけられて、嫌なわけがなかった。
若井のかっこよさや、その魅力は中も、外もわかっていたから。
ぐっと若井の服の胸元を引っ張って唇を重ねる。
「···っ、りょうちゃん···嬉しい」
「こんな僕でいいなら」
受け入れてくれる嬉しさ。
若井がくれる底なしの愛情。
そして満たしてくれるカラダ。
その全部が僕には心地良くて、甘えるままに若井との関係は始まった。
コメント
2件
新しいお話、ありがとうございます😊 今までにない2人の関係性にドキドキです✨ 続き楽しみにしてます❣️
みぅです🤍🥀 第2話、読み終わりました…。 若井くんの「俺も」って言葉、すごく刺さりました。あの瞬間の空気感、りょうちゃんの緊張と安堵がリアルで、思わず息を止めて読んじゃいました。 りょうちゃんが「恋愛の好きがわからない」って言うところ、すごく繊細で…でも若井くんのまっすぐな言葉に、少しずつ心が開いていく感じが、ただただ尊かったです。 「こんな僕でいいなら」って…泣けます。 続きが気になるけど、今はこの余韻に浸ってます🌙