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【朝が明けるまで、月を想ふ。】
1.Prolog/私だけの誘拐犯
暗い部屋でキミの帰りを待つ。
テレビに付いているニュースには、行方不明になった女の子のことが報道がされていた。自宅で両親が殺されていたことから、誘拐ではないかと推測が進められているらしい。
その後、犯人は殺人も行っているため、捕まると重い処罰が下されることや、その子の友達が心配している様子、ご近所の人と警察官が捜索している所も映し出されるが私は一通り見たあとすぐにテレビを消した。
「見つかりたくない。ずっとここに居たい。
私を救ってくれたのは那月なのに___」
そう、さっきから報道されている誘拐のニュースの被害者。それは紛れもない私だ。
でも私は那月__誘拐をした犯人のことか大好き。そして、愛してる。
だってキミは私だけの “誘拐犯”
誘拐犯と被害者の恋。そんなのもたまにはいいよね。キミの起こしたことが犯罪だと言うのは分かっている。でも、二人が愛し合っていればそんなことは関係ないでしょ?
__これはそんな私と君の少しおかしな物語。
2.偶然は必然である
私の名前は天瀬叶愛
ごく普通の高校一年生。
だが、一つだけ、普通の子達と違うのは皆んなに見せる偽りの姿と本当の心のギャップだとおもう。
私は両親から虐待されていた。
いつからかは分からないけど__。
あの出来事があってから?
いいやずっとかなのかも知れない_。
両親は私の誕生など願ってなかったのだと思う。私は余分に生まれてきたただのオマケ。
学校や、親の前では優秀で優しいそんな自分を演じる。だけど、ホントの私は親の虐待に耐えれないし、弱くて脆い。
_______
今どこを見渡しても、目に映るのは血。
私を産んだ実の両親の血。
だか、悲しみや怒りなどは感じない。
なんなら、羨ましいとすら思ってしまう。
「なんで、ままとぱぱなの_
私も叶希に__」
ふと、そんなことを呟くと、ナイフを持ったまま血の海を呆然と眺めていた彼が人の気配に気づき、近づいてくる。
あ、このまま私もこの人に殺されるんだ_
でも死ねるなら、叶希の場所にいけるならそれでいい。そんな私の望みとは裏腹にキミは私を誘拐した。
俺は昔から、いつも孤独だった。
親は二人揃って事故、親戚にも厄介者みたいにタライ回しにされて。
あっという間に施設に入れられた。だけど、そんな扱いされてきた俺が、人との関わり方を知るわけが無い。
当然のように施設でも一人で過ごした。
でも、なんでだろう。施設を出たあと
急に愛が欲しくなってしまって、愛して、愛される、そんな夫婦に怒りを覚え、ついグサッと殺ってしまった。
夫婦の家での出来事だった。でもどこかからまだ声が聞こえて___
俺と似た目をした女子。俺は細くて長いツリ目。でもこの子は真ん丸としていて優しいタレ目。1件違うように見えて似ている。
だって目の奥に光がない。もう人生を諦めている孤独の目。それに何故か同情してしまい、俺はキミを誘拐した。
3.本当の始まり
雰囲気であの子を、誘拐してきてしまった。俺完全犯罪者だな__笑
誘拐、殺人しかも二人も。捕まったら死刑だろうか。でもしょうがない。それだけの事を俺はしている。それに守りたいものなんてないし、死んでも誰も悲しまない。それよりも今はこの子をどうするかだ。誘拐と言っても痛めつけたいとか、人質という訳でもない。同情からだ。まずは話しかけてみるか_?
『ごめんね急に。
勝手に君に同情して誘拐っていうのかな?」
連れて帰ってきてしまった。』
やっぱり俺に怯えている。そらそうだ。親を殺され、自分も誘拐。何をされるのか、たまったもんじゃない。
『俺、東雲 那月20歳。
本当にごめんね。さっき言った通り、君が一人だったから同情してしまっただけで、人質に_とか君に暴力を_とかそう言う気はないから』
その言葉に君は少し安心してくれたのか、初めて口を開いた。
「私は天瀬 叶愛。16さいです。
親戚の人私に興味無いし、友達だって_だから
私の事、誰も探しに来ないと思いますよ_?」
あぁそうか、俺がこの子から親を奪って孤独にさせてしまったんだ。でも俺がこの子に尽くせばこの子も俺も、孤独じゃなくなるんじゃ_。
『いいよ。俺が連れてきたんだし。匿うよ。』
「え?いいんですか?
お金とか私持って無くて__。」
『いや、それはいいんだけど。ただ俺と一緒に暮らして欲しいんだ。』
そう言うと、彼女の顔が少し緩んだ。初めて見た君の笑顔はとても可愛かった。
「ふふ、分かりました。今日からよろしくお願いします。那月さん。」
『那月さんじゃなくて、那月でいいよ。』
「はぁい。 那月__。」
恥ずかしそうに俺の名前を呼ぶ君は
やっぱりとても可愛いくて、
『じゃあ俺は叶愛ちゃんって呼ぼうかな。』
「え~なんでですか?!
叶愛って呼んでくださいよ!!」
『分かった笑 叶愛って呼ぶね。』
叶愛は人との関わり方がとても上手い。
自分の親を殺した俺とどうしてこう笑顔で話せるのだろう。
『そう言えばさ____。
4.愛の芽生え
『そう言えばさ__。
叶愛はなんで泣かなかったの?』
「え_?」
『俺に親を殺されて怒りとか、
悲しいって思わないの?』
「思わない__かな。」
『そう、なんだ。』
「理由知りたいですか?」
そんなに綺麗な目で見つめられると、頷くことしか出来なくて。
「私、虐待されてたんです。」
『え、そんなことが。』
「だから誘拐してもらえて、逆にラッキーみたいな?」
「毎日暴力振るわれて、ご飯は親の気まぐれ、だから那月_にも暴力とかされるのかと思って怖かった。」
最初の姿を思い出し、そういう事だったのかと納得する。
『ごめんね。怯えさせてしまって。』
「ううん。暴力されないなら、元いた家よりここの方が全然いい。」
子犬のようにそういう君を見て、随分弱っていることが確認できた。
【ぐぅ~~~】
鳴った叶愛のお腹の音。お腹が空いているのだろうか。
『お腹空いてるの?』
「うん__。3日間なにも食べてなくて。」
家には何もなくて、唯一あった米でおにぎりを作った。叶愛はいただきますと申し訳なさそうにいい、おにぎりを頬張る。ただの塩おむすびなのに、美味しいと満面の笑みで俺に感謝する姿が愛おしく、出会って数時間で人生をかけて君を守ると決めた。そう。おれは犯罪者、何も失うものは無いのだ。
____そうして俺の初めての愛が咲いた。
5.鎖の中の幸福
___「ただいま」 とキミの声がする。
本当は今すぐ玄関まで走って、仕事終わりのキミ抱きつきたいけど、鎖のせいでそれは出来ない。それを私が残念に思ってるのを見透かされているのだろう。いつも帰ってくると一直線に私の元へ来てくれる。だから私はそんなキミに控えめに抱きつき、
「これ外して_?」 そう言う。すると、ごめんね。と軽く笑いながら手錠と鎖から私を解放してくれる。キミが_いいや、もう那月でいいか。那月が私を鎖や手錠で縛るのは自分が仕事でいない時だけ。帰ってきてからは申し訳なさそうに、それを取り私を沢山愛してくれる。それが嬉しくて、私も沢山那月を愛す。この時間が私の幸せ。
「那月、おかえり! お仕事お疲れ様!!」
『ただいま、!叶愛にそう言われたら毎日お仕事頑張れるよ。』
「良かった!那月を応援することしか私はできないから__笑」
『そうだね_笑 叶愛、ごめんね。
俺が居ない間鎖とか色々して。』
「___いいよ?
だって私の事好きだからでしょ?」
『そうだよ。俺がいない間 叶愛がどこか行っちゃわないか心配で』
「心配性だね~!私は那月から離れないよ」
誘拐されたあの日から、三ヶ月が経ちこの日々が私達の当たり前になってきていた。
何気ない会話に幸せを感じれる。
こんなの叶希がいた時ぶりかな。
6.先に消えないでよ
私には、双子の姉が居た。
“居た”というは__その、死んでしまったから。姉は叶希といって顔が可愛い、性格もいい、運動や勉強も優秀。
私にとって自慢の姉だった。
それは両親からしても同じで、自慢の娘だったのだろう。私は物心ついた頃から叶希と比較されて育った。
でも、不思議と叶希を恨むことはなくて、なんなら姉妹とは思えないぐらいに仲が良かった。二人でプレゼントを渡しあったり、ご飯を食べに行ったり、たまに二人で学校を抜け出したり、親友のような距離感で毎日二人の日々を楽しんでいた。
ばぱとままは誕生日パーティーも、叶希の好きな物だけ用意しようとした。
でも、叶希は自分の好きな物と偽って私の好きな物でいっぱいのパーティーにしてくれた。
そんな自慢のお姉ちゃんの口癖は
_____叶愛は私の自慢の妹! だった。
いつも寝る前私を抱きしめて、
《優しくて、頑張り屋さんで、
私を慕ってくれる叶愛は、私の自慢の姉!》
と言いそのまま一緒に寝てくれていた。
そんな叶希が亡くなっちゃったのは私のせい。
私の十三回目の誕生日の時、プレゼントとしてずっと私が欲しいって言ってたワンピースを買いに行く途中でトラックに跳ねられて_
当然両親は私を恨んだ。
お前のせいだって、それは私も分かってる。
それから、虐待はエスカレートしていった。
でも、やっぱり親には愛されたいと思ってしまって勉強や運動も頑張って、性格も叶希に寄せて愛される努力をした。
でも、ダメだった。叶希とちょっと似ているこの顔が、ムカつくんだって。
それで_もっと殴られた。
あぁ、叶希戻って来てよ。
なんでなの。自分を何回も恨んだ。
寂しいよ。会いたいよ。また、抱きしめて。
自慢の妹だって言ってよ____。
そんな時出会ったのが君なんだ、那月。
7.この生活が永遠なら
あの日から半年がたち家での叶愛の過ごし方か変わってきた。
俺が仕事に行く間も鎖などは付けずに、自由にスマホをいじったり俺と叶愛の部屋で歌ったりしている。叶愛は俺のことが大好きだし、逃げることは絶対に無いと分かったから。最近叶愛の性格が完全に掴めてきて___
叶愛は心を開くと大分自由人で甘えん坊だ。
前まで、心を開いてくれていると思い切っていたあの頃は偽りの姿だったらしい。あの頃の姿というのは、
ご飯のあと
「ご馳走様でした! お皿ぐらい洗いますよ!」
『いやいや!いいよ。俺にやらせて。
叶愛に尽くしたいんだ。』
「そうなんだ__。ありがとう!
じゃあ疲れたら私が肩揉んであげますね!」
お仕事終わり
「お仕事、お疲れ様です!」
『ありがとう!叶愛は可愛いな~』
「んへへ、那月のほうがかっこいいよ__。」
『え、?笑 聞こえなかった、もう1回!』
「え~?! 嫌ですよぉ~! 恥ずかしいし。」
『言ってくれないの?悲しいな~』
「____那月のほうがかっこいいよ!
こういうやつだ。
でも、本当に心を開いてくれた今は。
お風呂上がり
「お風呂上がったよ!! 髪の毛乾かして~」
『分かった_!』
「那月上手~!」
『そう?笑 良かった!』
眠い時
「眠い~___。」
「那月寝かせて~!笑」
『はいはい笑 毛布持ってくるから』
「やった〜!!」
ご飯
「お腹空いた~!那月ご飯作って!!」
『はぁい笑 何がいい?』
こう少しだけ、いや大分遠慮しなくなった。笑 まぁそこが信用してくれているみたいで可愛いし、何より愛しい。
しかもたまに___
「おにぎりがいい」
『え?おにぎり?それだけ?』
「うん!塩おにぎりね!!」
『食欲ないの?風邪かな。』
「違うよ!初めて会った時、最初に那月がつくってくれたでしょ?」
『あぁ~、あれか。覚えてたの?』
「当たり前!! 私にとって思い出の味だもん。」
こういう可愛いことを言うから憎めない。
まぁ、叶愛が可愛すぎて何をしても結構、許してしまうのが正直なところだ。
そして、この日から叶愛の好物は塩おにぎりになった。
8.記念日に乾杯を
「行ってらっしゃ~い!」
『行ってきま〜す!』
那月はいつも私とハグをしてから仕事へ向かう。家を出る直接、叶愛と離れたくない_。や
叶愛が居ないと頑張れない。とか言っているが私は気にせず送り出す。
本当は私も那月に仕事へ言って欲しくないが、行ってもらわないと、後から困ったことになるので仕方がないのだ。
服を着替え、髪を整え、メイクをし、諸々のことが終わった後、面白いことは無いかとテレビを付ける。
ニュースには、女の子が行方不明になってから1年が経ったことが報道されていて、自宅で両親が殺されていたこと、被害者の服や、物が丸っきり消えていることから誘拐である可能性が高いとの推測が勧められており__みたいな。
その後も、犯人は殺人も行っているため、捕まると重い処罰が下されることや、その子の友達が心配している様子、ご近所の人と警察官が捜索している所も映し出されるが私は一通り見たあとすぐにテレビを消した。
「見つかりたくない。ずっとここに居たい。
私を救ってくれたのは那月なのに___」
そんなことを呟くが、私のこの思いを知っているのは私自身と那月だけ。世間は私を心配し、警察とともに私を捜索している。
いつ見つかってしまうのか、いつ那月が捕まり私は保護されるのか。
考えるだけで悪寒がする。
最近思う。私も那月もお互いに依存している。
私は叶希を失い、忘れかけていた愛を思い出し、那月は初めての愛を知った。
愛し合っている私たちはお互いに欠かせない存在なのだ。
あれ____。
私が誘拐されて1年ってことは那月と出会って1年ということ。じゃあ、1年記念日?!
テレビがなかったら気が付かなかった。
それにだけは感謝しておこう。
プレゼント___あげたいな。
いつも美味しいご飯作ってくれるから、料理道具とかがいいかな。でもお金ないし__。
____あ!あった。ここに連れてこられた時、持ってきてたカバンにお財布が。
みーつけた。貯金はできるタイプだったのでお小遣い貯めてたんだ。
お陰で、3万五千ぐらいはある。
善は急げ!!
今すぐ買いに行こー!!
勢いよく家を出た私だが、一年以上外に出てなかったのだ。外の様子もだいぶ変わった。見たことない看板だな~とか聞いたことない曲流れてるなぁ~とか考えながらネットで調べたオシャレな料理器具のお店へ向かう。
お店につき。
うわぁ、料理器具の店なんて初めて来たけど
すっごいオシャレ。何買うか悩むなぁ~。
___あれ、なんだろうこれ。
え!?すご〜!これホットプレートなんだ!
見た目も可愛いし、使いやすそう!
こんなのあったらテンション上がって料理も楽しくなるよね!値段は___1万九千円。
まぁまぁ高いなぁ。そらそうか。
いつものお礼だし、これにしよう!!
いいものかえて良かった~!
那月喜んでくれるかな_____。
喜びのあまりスキップで家まで帰る。
家に帰り、ラッピングして、家も飾って、那月の帰りを待つ。今からウキウキが止まらない!
___あぁーあこの頃の私は呑気だな。
今、時を戻せるなら、どこからやり直そう。
まぁ、最初のターニングポイントは間違いなくプレゼントを買いに行く前だね。
9.終わりまでのカウントダウン
いつもなら、仕事から帰ってきて、那月が玄関からリビングに入ってきた所でハグをする。そして、おかえり!ただいま!って挨拶を交わす。だけど今日は違う。玄関から那月の帰ってきた声が聞こえた瞬間、私は玄関まで走り
「おかえり~!」
そういって那月に目隠しをする。
そのままリビングまで手を引っ張り、飾り付けがされているキラキラなソファー付近に座らせた。最初は
『え、なになに?! 怖いんだけど』
とか言って抵抗しようとしてきたけど、私の楽しそうな声に嫌なことをするわけじゃないと察してくれたのか、渋々だか従ってくれた。
そんな那月が面白くて意地悪したくなったけど、それよりもプレゼントを見て喜ぶ那月が見たかったから、目隠しを外してあげた。
そしたら那月は、部屋の飾り付けとその横に置かれたプレゼントに気づいて、私が誇らしくなるほどのオーバーリアクションで喜んだ。
『おぉ~!!すっごッ?!』
『これ叶愛がしたの?!』
「そだよ!今日出会って一年記念日なんだ!」
『もう、そんなに経ったんだ__。』
驚いたように目を丸くする那月。
そうだね。時間の流れは速すぎるね。
私もテレビを見てなきゃ気づかなかったよ。
『これはなに?』
「プレゼント!那月に!!
今日久しぶりに外出て買いに行ったの?!」
『え?! 本当?! 嬉しいな~』
「んへへ、喜んでもらえて良かった!」
『叶愛は急に色々し始めるから笑
俺の心臓もたないな。』
「飽きなくて楽しいでしょ?笑」
『それもそうか笑。』
「それより早く開けてよ!」
『はいはい笑』
『うわ!すご~。これホットプレート?
高そう~。こんなの本当にいいの?』
「いいのいいの!
1年記念日のプレゼントだもん!」
『じゃあ今日はこれで美味しいご飯つくるな
それが俺からのプレゼント!』
「やった~!! 何作るの~?」
『出来上がるまで言わない。』
「なんでよ~!
言ってくれないなら早く作って!!」
『ごめんごめん笑』
___考えたらこの頃がいちばん楽しかった。
何も考えず楽しく話して美味しいご飯食べて。
全てが変わり始めたのはこの後からだ。
お互い愛し合っているから。とか、私たちは世間から見つかることなんてない。とか、永遠だ。とか私たちは馬鹿だ。
あぁーあ、何を勘違いしていたんだろう。
那月が玉ねぎを切り始めた時。
玄関でチャイムがなった。人が来た?宅配?
あの時はそう思っていて、
よく考えれば、チャイムにでたらバレるかもしれない、とかわかるはずなのに___。
でも、愛に依存した私たちはそれに気づかないほどに能天気だった。
2度目のターニングポイントを付けるなら
このチャイムに出る前かな。
時を戻したらならこのチャイムには出ないだろう。確実に____
「私でるね!だから料理作っといてよ~!」
『はぁい笑』
玄関に出ると、警察官らしき人と見覚えのある、前の家のご近所さん_?が二人で立っていた。
“やっぱり。叶愛ちゃんだよね。”
え、どうして。なんで。ありえない。いやだ。
“一緒に住んでる人とかいる?”
“誘拐してきた、怖い人、いるよね”
やだ。いやだ。那月は怖くない。やめて。
気づけば玄関まで二人は入ってきていて、私は二人の質問に立ち尽くすことしか出来なかった。そんな時、私が全然戻ってこないことを心配した那月が玄関まで来て。
” だめ!! 那月、来ないで!! “
心でそう叫んだ。
でも警察の人は、
“君か、叶愛ちゃんのご両親を殺害して、
叶愛ちゃんを誘拐したのは”
私は思わず泣いてしまった
元ご近所さんは
“叶愛ちゃん怖かったね。
もう大丈夫だよ。安心して、泣かないで”
そう言うけど、私が今怖いのは貴方たち。
那月が連れていかれると本能が悟り那月に抱きつく。すると料理中だったもので、
那月はまだ、手に包丁を握っていた。
那月は私の様子と、前に居る二人の様子から
状況を把握し、無意識に_____。
10.君のためなら人生をかけて
俺が玄関に行った時、既に警官の服を着た男と知らないおばさんが居て、叶愛は泣いてた。
叶愛を守らなければその一心で、
気づいた時には___。
二人を殺していた。でも不思議と罪悪感はない。2度目だから?違う。叶愛を俺の手で守れたから。
人を四人も殺した俺は終わってる。
こんな最悪な俺が心の綺麗な叶愛といるべきでは無い。でも俺が叶愛から離れれば、叶愛は悲しんでしまう。さっきのように。
だから俺は叶愛から離れない。
それが人生を終わらせても俺のやりたいこと。
「那月_?」
目の前の光景に顔を真っ青にし、俺にすら少し怯えている叶愛。
突然のことに驚いているのだろう。
両親の時はあんなに平然としていたのに。
叶愛は泣きながら俺に抱きついた。
「那月、怖かった。
でも、守ってくれてありがとう。」
『これが、俺に出来ること
叶愛を守るのが俺の生きる理由だから。』
「私、今は何も出来なかったけど、
これからは那月が捕まらないように守るね。」
『ありがとう。』
おれが死体と飛び血を処理している時、叶愛は横であの二人がここへ辿り着いた経緯を話してくれた。
「今日、私が那月にプレゼントを買いに行っていたのを見つけたんだって。
あのおばさんは前のご近所さんで、私を見つけて、すぐ警察に行って跡をつけてここに来たって。一緒に帰ろうって。那月のこと怖い人って言うの。」
泣きながら必死に言葉を紡ぐ叶愛を見てそんな怖かったんだ。俺と離れるのがそんなに嫌なんだ。とどこか切なくなった。
そして、叶愛を苦しめた、処理中のそいつらを許せなくなって何度かナイフで刺した。
刺して、刺して、刺して気が済んだら
また後片付け。
叶愛は出会った頃と同じような虚ろな目で処理されていく死体達を見つめた。
11.夢と現実の狭間
那月が2度目の殺人を犯した日から、私は変な夢を見るようになった。
別になにか怖いことがある訳でも、痛いことがあるわけでもない。 言葉通り、 ほんとうになんにもない、真っ黒な部屋で一人 泣いている。それが目覚めるまで永遠と続く。
初めて見る景色で、もちろんそんな経験をしたこともない。なのに他人事に感じられなくて、不安な気持ちになる。
どうしてだろう。私はその夢が違う世界の自分を見ているように思えて。
それを那月に相談したら、毎日私を抱きしめてから寝てくれるようになった。
優しいね。
前の私ならきっと、抱きしめられて、そのまま寝て、那月のこと叶希と重ね合わせてしまってた。だけど、今の私は違う。
過去はもう捨てるって決めたんだ。
叶希。今まで、心の中で私を守ってくれてありがとう。これからは那月に守ってもらうから。
12.病的な魔法
あとね、那月を仕事に行かせるのは辞めたんだ。あの出来事があったから、
他の警察官にも情報が共有されていて那月が捕ちゃったらとか怖くなって___。
でも、仕事にいかない代わりにずっと一緒に入れるし、ダラダラできる。最高でしょ!
那月が警察官とご近所さんを殺しちゃった時は大好きな人が人を殺すところなんて恐怖でしかない___とか心の中で言ってたけど、私を守るためにやってくれてたんだって自分に言い聞かせてみたら、あの行動にも愛を感じられてもっと那月を大好きになったよ。
那月は自分の人生を捨てて私を守ってくれた。
そんな那月を今度は私が守りたい。
ねぇ那月
“大好きだよ、一緒離れないから”
私はそう呟いた。
俺は最近、叶愛への執着が、前にも増して強くなったと思う。
仕事に行かなくなってからというもの、ずっと一緒に行動していて、叶愛も、俺を離す気は無いのか、昨日はトイレにまでついてこようとしていた。流石に抵抗したが、実はそんな健気な姿がひよこのヒナみたいで可愛く見えてしまうことがあるのはここだけの秘密。
まぁそういう経緯で、俺も叶愛がいないと生きていけないようになっちゃったんだ。
本当に叶愛が可愛くて仕方がない。
出来ることなら二十四時間、叶愛の傍で過ごしたい。
俺が犯罪者でなければ色んな所に叶愛を連れて行けたし、その分色んな表情も見せてくれたのかな。そんなこと今さら考えても仕方がないのは分かっているけど。
なぁ叶愛、
“愛してる。永遠に離さない”
俺はそう呟いた。
13.後悔に意味は無いと分かっていても
私たちがいつものようにテレビを見ていた時のこと、あの日のようにチャイムがなった。
でももう学習した。
私も那月もチャイムには無視する。
何度呼び鈴を鳴らしても応答をしない私たちに痺れを切らした音の主は、
“警察だ!居るのは分かってる早く出てこい!!”
と叫び、ドアを叩いた。どうすればいいのか分からなくて、私は那月の袖を握り固まっている。那月はキッチンまで歩き、また包丁を握るがそんなことお構い無しに外から聞こえる声は更に大きくなる。
“他の場所から出ようとか、俺を殺そうとか
無駄な事は考えるなよ!! このアパートは警察が
包囲している!もう逃げられないぞ!!”
あぁ、もう終わりだ。そう思って涙がこぼれた。那月を今度は私が守るとか言っていたのに、いざとなるとやっぱダメで自分が情けない。でも、那月は私にこう言った。
『叶愛。俺は罪を償うよ。
だから叶愛は俺を忘れて、幸せになるんだ。
それが叶愛が平凡に、1番幸せになれる方法。
なぁ___ 愛してる。この先一生変らず。』
そして、抱きしめられた。
「え。嫌だ。那月!私たちずっと一緒でしょ?」
『ごめんな。でも叶愛を守るためなんだ。
俺と一緒にいたら叶愛は幸せになれない。』
「やだよ。那月。ねぇ。那月!!」
私が必死に泣きつくと那月はごめんと一言
言って最後に優しく、でも今までで1番強く抱しめてくれた。顔を覗き込むと那月も目に涙を溜めていて、那月も辛いんだと分かった。
そうだよね。 那月も悲しいんだよね。
でも私やだよ。那月。私は那月が居ないと。
那月が居ないなら私、幸せじゃないよ。
どんな事があっても、那月といるだけで、私は幸せなの。那月もでしょ?
ねぇ。返事してよ、離さないって、ずっと一緒って言ったのに。なんでなの。
那月は私を自分の体から引き離し。
大人しく、警察の元へと歩いていった。
その間も私は、泣くことしか出来なかった。
警察に手を捕まれ、パトカーに乗せられている那月は最後に____
涙を我慢し苦しそうな笑顔で私に手を振った。
その姿はまるで月に雲がかかったようで、このままフッと儚く消えてしまいそうだった。
ねぇ、那月。那月はいつも私を照らしてくれたね。でも、那月は太陽では無かったかな、笑
どちらかというと優しく灯りをともしてくれる、私にとって月みたいな存在。
最後まで私を守ってくれてありがとう。那月、愛してる。
____これは最後のターニングポイント。
もし警察が家のインターホンを鳴らしている時まで時間が戻ったら、私はどう動くのかな。
どうするのが正解なのかな。
それは未だに分からない。多分永遠に分からない。やり直したいとは思うし、この展開に納得はしていけど、これが間違っていたのかと言われれば、そうじゃない気もするんだ。
14.見当違いな同情はいらない
私は、警察に保護されさっきまで取り調べを受けていた。那月に何をされたかとか、鬱状態などになっていないかのメンタルサポートも。
取り調べ中、警察にありのままの那月への思いを打ち明けた。真剣に取り合ってくれる警察の様子を見て、那月の犯した罪が警察に許されたのかと勘違いをしてしまった。
しかし、警察は迎えにきた親戚たちへこう言った。
《天瀬さんは重度の
ストックホルム症候群のようです。》
そして、ストックホルム症候群とは、監禁や誘拐により拘束下にある被害者が、加害者と共に過ごすことで、加害者に好意や共感、さらに
信頼や結束の感情を抱くようになる現象の事を
いうと説明していく。
親戚たちは驚きながらも私を抱きしめる。
それに、こんな事を明かした。
『ごめんね。ずっと貴方が虐待されていること知ってたの。』
『でも、貴方のお母さんに何か言うと、お母さんを溺愛していたおじいちゃんに、何をされるか分からないから怖くて。』
『見て見ぬふりをしていたの。本当にごめんね』
『これからは、うちの子として大切に可愛がるからね。』
はぁ、そんなこと興味もない。
那月を失った私に生きる意味は無い。
そんな私に追い打ちをかけるように。
『裁判を起こそう。』
『叶愛を苦しめたアイツを許さない』
向こうでは一致団結して、那月を裁判にかける
話をしていた。
でも、私はそんなの望んでない。那月には報われれてほしい。形はどうであれ、私を救ってくれたヒーロー。
親戚たちが、勝手に話を進め
数ヵ月後には、裁判が始まった。
二十歳以上の人の場合、三人殺せばほとんどの場合が死刑。四人殺した那月は当たり前に死刑判決となった。
死刑判決になった裁判中の那月の目には
ほのかに光が宿っていて、
叶愛のために死ねるなら本望だと笑った。
私は被害者席から那月を眺めていたが、最後まで私を大好きで、優しい那月が愛おしくて、死んでしまうのが悲しくて、声を出して泣いてしまった。
裁判後の親戚たちは、そらそうだろうと那月このとを蔑んだような顔で馬鹿にするが、私には親戚たちが悪魔に見えた。
でも、親戚や世間からは那月が悪に見えていて、悪が裁かれるありきたりなハッピーエンドみたいになっている。それが、悪側から見てみれば、私を救ってくれたはずの那月を殺して、バカにした親戚や警察が悪で、
主人公が幸せにならないバットエンド。見る人によってこんなにも変わるものなんだね。
15.epilogue/月の光が消えた街
あれから親戚に引き取られた私は、ずっと自室に引きこもっている。暗い部屋で一日中、枯れてしまうほど泣いて。あぁ、あの夢は今の私を伝えようとした正夢だったのかな。とか意味の無いこと考えるけど、そんなのどうでもいい。
那月が死刑判決になって 気持ちの整理がつかない、だけどこれだけは分かるんだ。
悪いのは私。全部、私が悪い。
叶希が死んじゃったのは、私がワンピースなんて欲しいって言ったから。那月が警察官とご近所さんを殺して、死刑になったのも
何も考えず、プレゼントを買いに行って、
チャイムに出た私のせい。
この物語の悪者は私だったんだ。
私は可哀想な主人公なんかじゃない、__。
だから、私も罪を償うべきだ。那月がしたように。こんな、未来に希望を失って、真っ黒な世界にいる私を見て、那月はなんて言うかな。
那月のことだから_______。
__はい、ここで私たちの物語はお終い。
ねぇ、キミはこの物語をどう解釈する?
この話はフィクションです。