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「お疲れ、柚葉」
樹さんは、仕事が終わってからすぐに私を車で迎えにきてくれた。
「お疲れ様」
「元気か?」
「うん、元気だよ。樹さ……あっ、えと、樹……は?」
樹さん、笑ってる。
なんか全然慣れない、呼び捨てにタメ口なんて。
でも、いい加減なれないとね。
私は呼び捨てすることを意識付けるようにした。
「俺も元気だ。まあ、仕事が忙しいから体力的にはキツイけど、何とか頑張ってる。それから……柊も元気だ」
「そうなんだ。うん、2人とも元気なら良かった」
イタリアンレストランに向かってる車の中で、バイトの話を聞いてもらってるうちにすぐに到着した。
車から降りてお店に入ると、美味しそうな匂いが漂っていた。
「何にする?」
メニューの中にあるパスタが目を引いた。
「これがいいな」
「じゃあ、俺はピザ」
久しぶりの樹は、相変わらずカッコいい。
見てるだけでドキドキする。
こんな素敵な人が私に告白してくれたなんて……
やっぱりまだ信じられない。
「柚葉」
樹は、急に真剣な顔になった。
「……何?」
「このあと、会ってほしい人がいる」
「会ってほしい人?」
「ああ……」
私を誰に会わせたいのか、まるで思い当たらない。
「い、いいけど……それって、男性、女性?」
「女性……だ」
「えっ、それって……」
「何考えてる?」
「べ、別に……」
「心配しなくていい。女性といってもガールフレンドってわけじゃない」
「ごめん。私……」
いくら告白されたからって、樹とは付き合ってるわけじゃないのに、女性のことを気にするなんて……
正直、私はまだ怖かった。
大切な人に裏切られた衝撃があまりにも大きかったから。
また同じ目に合うと思うと心が苦しくなる。
「柚葉以外には頼めないことがあって、お前には悪いが協力してほしい」
「協力? 私はいったい何をすればいいの?」
「今はまだ何も言わないでおく。会ってもらえばわかるから」
よくわからなかったけど、とりあえず了承した。
でも、これから何が起こるのか、不安はあった。
最近の私には、予期せぬ出来事ばかり起こってるから。
佐藤君のこと、柊君のこと、山下専務のこと……
そして、樹から告白されたことも。
これ以上何か複雑なことに巻き込まれたら、私は心臓がもたないよ。
とにかく、私達は食事を終えて、その人との待ち合わせ場所に向かった。
車はかなり有名で高級なホテルの地下駐車場に止まった。
ロビーに1歩足を踏み入れると、広くて豪華な内装に驚き、場違いなところに来てしまったと脳が認識した。
「柚葉、こっち」
樹の少し後ろを歩く私。
「あ、うん」
緊張しながら、言う通りに進む。
ロビーにあるラウンジに入って、樹はその一番奥のテーブルに座る女性に声をかけた。