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その女性は、嘘みたいに綺麗な人だった。
モデルさん? 何かの雑誌で見たことがある気がする。
「柚葉。こちら、綾元 沙也加(あやもと さやか)さん」
「はじめまして。あなたが柚葉さん?」
声に少し威圧感がある。
「は、はい。間宮 柚葉です。は、はじめまして」
誰だかわからないし、何が始まるのか……
「彼女は、俺がモデルをしてた頃の仲間。それに……」
「あら、樹。どうして黙っちゃうの?」
「……いや。彼女は、大手電機メーカーの社長のお嬢さんで、その会社はうちの取引先なんだ」
「樹の会社、ISとうちのパパの会社は以前から仲良くさせて頂いててね。それは、私がパパに樹の会社を紹介してあげたからなの」
「そうなんですか……。それは良かった……です」
それ以外の言葉が見つからなかった。
この人は、いったい私に何がいいたいんだろう?
「柚葉さん、あなたどういうつもり? その地味な顔でよく樹の側にいられると思ったわね」
え……?
な、何? いきなり何なの、地味な顔って。
確かにそうだけど……でも、ハッキリ言われたら傷つくよ……
樹にも「美人じゃない」って言われたけど、同性に言われる方が何倍も悲しい。
「沙也加、やめろ」
「あら、樹。まさか、本当にこの人が彼女なんて言うんじゃないでしょうね」
上から目線の態度にムッとした。
「いい加減にしてくれ。俺はハッキリ言ったはずだ。お前が、彼女に会わないと信じないって言うから、わざわざ柚葉を連れてきたんだ」
「それがこの人だって言うの? 樹の彼女がこんな人って言われても、あまりにも地味すぎて納得できるわけないじゃない」
さっきからずっと一方的に悪口を言われてる。
何だか2人に置いていかれてるし、この状況は……
「俺は柚葉と結婚する。今、一緒に住んでるから。色々準備も進めてる」
えっ、何?
今、結婚するとか言った!?
樹と私が結婚する?
しかも、一緒に住んでるって……?
ダメだ、理解がまるで追いつかない。
「そんな、まさか……。嘘でしょ?」
「本当だ。だから、わかってくれ」
私達はまだ付き合ってもない。
なのに……
「柚葉さん、それって本当?」
沙也加さんは、完全に疑いの眼差しで私を見てる。
演劇部でもない私の顔、きっと挙動不審なんだと思う。
こういう場合は話を合わせなきゃダメなの?
「あ、あ、あの……は、はい、一応……」
何よ、その答え。
オーディションなら一発不合格だ。
「柚葉、緊張しなくていい」
するでしょ、普通。
だったら先に教えておいてよ。
そしたら心の準備なり練習なりできたのに。