【蘇芳目線】
ばたばたと、地面に雨が激しく打ち付けられる。
雨のせいで急激に体温は下がり、正直、あまり万全な状態ではなかった。
けれど、今はそんなこと言ってられない。
桜くんが、あの悪魔みたいな奴に捕まってしまったのだ。
あの、黒炎を纏うような、蛇の目をした男。
___棪堂。貴様だけは、絶対に許さない。
「…..俺は、産まれた時から貧乏だった」
下を向いたまま、落ち着いたトーンで潮見くんが話し始めた。
「母は高校生の時、ひとつ上の先輩と交際して、俺を産んだ」
フッと、哀愁を帯びた瞳に影が落ちる。
「___本当は、産むはずじゃなかったんだって。気がついたらできてて、見つかった時はもう遅くて、堕ろすことが不可能だった」
相手の先輩は、子供ができて、堕ろせない事を知ると、母から離れて行った。
しかも母の両親はすでに他界していて、頼れる大人もいなかったそうだ。
母は1人で俺を育てた。
借金を背負って。
母は毎日ずっと働いて、休んでるところなんて見た事なかった。
けど中途半端な事はせず、丁寧に俺を育ててくれた。
____俺を、愛してくれた。
そんな母を、俺も愛していた。
そんなある日。
いつまで経っても借金を返済する金が稼げず、痺れを切らした向こうが、家を襲撃してきた。
もちろん母も俺も血反吐吐く程なぶられたし、生活に必要な物全部持って行かれた。
その時、奴らは言った。
「力が無ぇザコは、俺たちみたいな強者に頭下げるしか生きれねぇんだよ」
あぁそうかと、腑に落ちた。
だから、弱い母は捨てられたのか。
だから、弱い俺はこんなにも惨めな思いをするのか。
なら、強くなればいいじゃないか。
強くなって、俺が母を守ればいいんだ。
なんだ、
簡単じゃないか。
その日から俺は、適当に外をぶらついてはわざと不良に絡みに行って、ボコボコにされて帰ってきた。
もちろん母は尋常じゃなく心配してきたし、正直めっちゃ痛かった。
けれどもそれを繰り返すうち。
俺がボコボコにされることは減っていった。
同時に、人をボコボコにすることが増えていった。
そうしているうちに。
_____母が死んだ。
事故だと言われたが、俺は信じていない。
きっと、借金を返済しない母の臓器を、奴らが売ったに違いない。
それを、事故に誤魔化したんだ。
___許せなかった。
奴らに対しても、無力な俺に対しても。
壊れるくらいに叫んで、殴って、泣いた。
もう、この世に自分の味方はいないのだと。
そう、思わされた。
それから俺は、バイトをし、独りで生き始めた。
毎日学校には行かず、バイト三昧。
家に帰っても、あるのは静寂と虚無のみ。
毎日同じことの繰り返しで、ずっと死んだように生きていた。
そんなある日のこと。
久しぶりに、不良に絡まれた。
ここら辺じゃ有名な不良チームだったから、あんまり関わりたくなかったけど、引き下がろうとしない奴らにイラつき、つい、あの時のように暴れてしまった。
相手は10人くらいいたが、1分もせずに片した。
久々の、拳の感覚。
人を殴ったという、高揚感。
それが、俺を興奮させた。
そこを、奴に見られた。
___棪堂哉真人。
こいつ以上の化け物を、俺は見たことがない。
あの人数を1人で倒した俺に、奴が手を差し伸べた。
『俺と一緒に来い』
どこかに行くあてもないし、どうせ独りなら。
___誰でもいいから、誰かといたかった。
だから、奴の手を取った。
それから俺は少数人が溜まっていた廃墟に連れてこられ、ソイツらと一緒に盗みやらケンカやらをした。
___正直、めっちゃ楽しかった。
人を殴る感覚が、たまらなく好きだった。
そうして日々を過ごすうちに、俺は中学を卒業。
高校生となった。
学校は、棪堂に風鈴にしろと命令されたから、風鈴にした。
どこか平和ボケした奴らばっかで、つまんないと感じた。
そして。
棪堂に、桜遥を拉致する計画を伝えられたのは、そう遅くなかった。
どうやら棪堂は、桜に惚れてしまったらしい。
随分とトリコにされていた。
お前らに特別な感情なんて全くない。
俺は多分、お前らと違って汚れてるから。
だから、この件が収まったら、
俺は風鈴を抜けるよ。
悪かったな、騒がして。
あぁ、俺だってそうさ。
君に特別な感情なんてない。
だからいざ抜けるとなっても、悲しくも寂しくもない。
どちらかというと、桜くんをこんな目に遭わせて、逆に出て行って欲しいくらいだ。
桜くん。
君は。
君だけは。
ダメだ。行かないで。
行ってしまわないで。
俺が、唯一恋した愛しい人。
どうか、神様。
桜くんを、これ以上遠くに行かせないで。
【桜目線】
「…….」
冷たい風が頬をかすり、目が覚めた。
ムワッとした埃の臭いが、鼻腔をくすぐる。
重い体を起こし、周りを見渡した。
「…..どこだ、ここ….」
さっきの廃墟とは違い、どこかのプレハブのようだ。
窓が付いていたと思われる壁には、ダンボールが敷き詰められ、その隙間から漏れる光が唯一の明かりだった。
今は何時くらいなのだろう。
さっきと比べると、だいぶ暗くなった。
光を浴びたくなり、ダンボール外そうと手を伸ばそうとする。
しかし、あまりの腕と足の重さに、思わず手足を凝視した。
「…チッ」
今度は逃げられないようにと、鎖でガッチリ固定されていたのだ。
これじゃあ、奴を殴ることもままならない。
必死に逃げる方法を考えていると、ガチャリと、ドアが開いた。
「おっ目が覚めたか」
___棪堂…..!
悪魔のような笑みを浮かべて、1歩、また1歩と近づいてくる。
「っやめろ!来るなっ!!」
「….」
叫んでも、棪堂は一向に歩を止めようとしない。
ドクドクと、嫌な動悸が全身を巡る。
「さーくら♡♡」
「っ嫌だ!やめろ!」
奴が、手を伸ばした。
「___っ!」
冷たく鋭い指が、顔から胸、太ももを滑った。
ぞくりとした悪寒が、全身を震わす。
「….もう、我慢できねぇ」
悪魔の声が、耳元で囁かれた。
「嫌だァっ!やめろぉっ!」
まず全身の服を脱がされ、竿を握られた。
ギュッと冷たい手に強く握られ、不快な痛みが竿に走った。
「あぁぁぁ゛!痛ぃっ!!」
痛みのあまり、全身が魚のように波立つ。
バタバタと暴れても、奴は手を離さなかった。
「おぃっ!やめっ__!」
そろそろ精射そうになり、身をよじらせると、棪堂は更に握る力を強めた。
「ん゛っや、やだぁ..!」
「…イケよ、桜」
嫌だ。こんな奴に、イカされたくないのに……!
頭ではそう思うのに、体は裏切り者だ。
ジンジンと竿は熱くなり、精子がびんびんに玉を膨らませている。
「う…い、や、」
カリッ。
「んぁあ゛!!」
爪が竿の先端を掻いた。
その瞬間。
ビュルルルっ
先端から、不透明なドロッとした液体が飛び出した。
「あ…..あ、あ….」
イッてしまった。
しかもあちこちに精子をかけてしまった。
….最悪だ。
「よーくイケました♡♡」
棪堂が、ケラケラとせせら笑う。
思わずぎっ、と睨むと。
___蛇のような目と、目が合った。
「次は、俺をイかせてくれよ」
クチュっ
「ひぁっ!?」
突然、細い指が尻の穴を潜った。
クチュクチュと、中を弄り回される。
「っ気持ちわりぃ」
「安心しろ。すぐヨくなるから」
そう言うと棪堂は、穴から指を抜いた。
「….」
ふぅ、と脱力する。
あの異物が抜けただけで、すごい楽だ。
しかし、そう思ったのも束の間。
バッチュンッ!
「っ!?いぁあ゛!!」
先程まで指が弄っていた穴に、比べものにならないくらい大きな異物が挿入った。
思いっきり奥を突かれ、腹が壊れるかと思った。
「ひぃっ!やめっ、やめろ!」
必死に足掻いても、拘束されているから、バタバタと無意味な抵抗で終わる。
だから余計奴は愉しんで、腰を振った。
「んぁっ!!///やめろぉ….!」
痛い。
「ひっ!」
ギュッと乳首を握られる。
ピリッとした痛みが襲う。
「あぁっ!」
今度は再び竿を握られた。
シコシコと上下に素早く触られる。
「あっ….!…ん……/////」
いやだ。感じたくないのに。
「や…..め……!!///」
「おーい、ココこんなに濡らして、ビンビンにたたせて、何言ってんだぁ?」
「んぁっ!!」
ぴんっと勃った竿に、デコピンされる。
駄目だダメだだめだ。
イッちゃ、だめだ。
しかし奴はしつこいくらいに腰を振ってくる。
「あんっ!///あっ…ん………////あぅっ!…/////」
必死に我慢する。
ぎゅうっとシーツを掴んで、堪える。
しかし。
「我慢なんかすんなよ!」
バッチュン!!!
「うぁぁぁ゛!!むりぃぃぃ!!////」
ビュルルルっ
白く濁った液体が、宙を飛んだ。
「……ん….あ…/////」
ぐてっと体が傾く。
だめだ。寝たら、また犯される。
でも、やっぱり体は裏切り者で。
強い眠気が、深い眠りへと俺を誘った。
こてんっ。
「…なかなか良かったぞ♡桜♡♡」
ぐっすり眠った愛しい寝顔にキスする。
しかし、俺の竿はまだ収まってない。
「……」
寝てるから、まぁいいか。
ぷつ….
再び、竿を桜の中に挿入する。
あぁ、そう、これだ。この締め付け。
処女って感じだ。
最高だよ。桜が処女だったなんて。
俺が、初めてだなんて。
「可愛いなぁ♡桜♡♡」
もう一度、桜の額にキスをした。
その時だった。
「___桜くんっ!!」
バンッ!
必死こいた叫びと共に、扉が乱暴に開かれた。
チッもう来たか。
___蘇枋隼飛。
奴はいつも澄ました顔とは一変。
慌てたような、必死な顔して現れた。
そして、裸になって男の竿を下の口で咥える桜を見て。
「…….桜、くん…..」
顔を、真っ白にさせた。
絶望に染まった、その顔を見て。
俺は、気付いた。
「…お前、桜に恋してるだろ」
煽りを込めて嘲笑する。
対して蘇芳は、しばらく黙った後。
スっと俺を睨みつけた。
「許さない、桜を傷つけるなんて」
クールな奴らしくない。
怒りを露わにさせて、息を呑む程の凄みがある。
俺は桜の中から竿を抜き、服を着た。
___これは、長い戦いになりそうだ。
「せっかくお楽しみ中だったのに」
「死んでください。今すぐに」
倒れた桜を挟み、お互いがお互いを睨む。
激しい音を轟かせ、雷が落ちた。