桃 『青様、朝です』
桃 『起きてください』
青 『んん〜……..』
桃 『青様』
桃 『青様』
青 『…………..』
桃 『今年のプレゼントは無しにしますよ』
青 『それはダメっ!』
桃 『ふふ…笑』
桃 『ちゃんと起きられるじゃないですか』
青 『ずるい、』
桃 『私は青様を起こしただけですので』
青 『ふんっ…、』
桃 『さ、今日はたくさんお仕事がありますので』
桃 『お着替えになってください』
桃 『お洋服はそちらに二つかかっております』
桃 『お好きな方をお選びください』
青 『わかったよ、』
桃 『では、失礼します』
青 『…、』
14歳になった青は
最近反抗期に入ったのか
俺への当たりが強いことが多い。
青の執事になって14年。
つまり、青が生まれた頃からずっと世話をし続けている。
14歳といったら普通は中学生。
朝も起きれないし
まだあどけないところがあるのは重々承知している。
ただ
一番の問題は“結婚”。
王族の結婚は早い。
青の気持ちなど関係無しに話は進んでいく。
もうすでにお見合いの相手は決まっているという噂もある。
俺の役目は、それまでに
青を立派な王子に育て上げること。
それだけだ。
桃 『青様、準備はできましたでしょうか』
青 『ん、』
桃 『おっ、やはりお似合いですね』
青 『別に…/』
桃 『ふふ…笑』
桃 『では、朝食へ向かいましょう』
桃 『本日はお仕事が沢山ありますので、少し量を多めにさせていただきました』
青 『こんなにいらないんだけど、』
桃 『そうは言いましても、青様は成長期ですし、今食べなければその身長も伸びません』
青 『失礼だぞ』
桃 『失礼しました…笑』
桃 『別に食べ切らなくても私には関係ないことですので構いませんが』
桃 『ランチの前に何か食べたいとおっしゃったとしても、お菓子などはお渡しできません』
桃 『青様にお任せします』
青 『…ずるい、』
桃 『私は青様を信頼しているだけですので』
青 『……いただきます、』
桃 『…笑』
青 『一緒に食べよ、』
青 『どうせ何も食べてないんでしょ、』
桃 『いえ、私はご一緒することは…』
青 『いいから』
青 『食べろ』
青 『これは命令だ』
桃 『承知…いたしました…』
青の命令は、基本俺への優しさ。
それは昔からずっと変わらない。
どれだけ身長が伸びたとしても
どれだけ素直じゃなくなったとしても
青の持つ真の優しさというのは変わらない。
青 『桃くんにこれとこれを』
桃 『そのくらい自分で…』
青 『一緒に食べたいの』
桃 『そうですか…』
青 『美味しいでしょ?』
桃 『はい、とてもニコ』
青 『僕これ好きなんだ〜』
桃 『そのくらい知ってますよニコ』
青 『初めて言ったのに…/』
桃 『青様が生まれた時から見ているんですから当然ですよ』
照れている青の姿は
何ともあどけなくて
まだそばにいてほしいと
まだまだ可愛がっていたいと
そう思ってしまう。
青が結婚したら俺はどうしていくのだろうと
最近ふと考えることがある。
青は男の子だから
完全に離れるわけではない。
でも
もちろん今のようにはいかないし
執事など
俺でなくとも沢山いるわけで
どうやって生きていくのだろうかと
先行きが不安になる。
“ずっと一緒にいたい”
なんて思う俺は
執事に向いていないのだろうかと考えながら
青の好物を一口頬張った。
桃くんの声で起きて
桃くんの声で一日が終わる。
当たり前すぎて
これが普通だなんて思っていたけど
実はそうではなくて
桃くんの努力があってこそだったんだなと
ふと考えることがある。
最近は
なんとなく桃くんのことが気になって
桃くんだけには冷たくしてしまう。
自分でも反抗期だと思ったけど
そこには
なんだかそれとは違う
ドキドキ感というのがあって
不思議な感覚になる。
桃 『青様』
桃 『そろそろお出かけの時間です』
青 『あー、うん、今行く』
青 『はぁ…』
青 『え』
桃 『お伝えしてませんでしたか』
桃 『今日はお見合いの日ですよ』
青 『だからこんな真面目な服…』
桃 『はい、』
桃 『どれを選んでも正装になるようにしておきました』
青 『僕嫌なんだけど、お見合いとか』
桃 『ですが…これは国王様の命令ですので、』
青 『はぁ…』
知っている。
青がお見合いを好まないこと。
前にお見合いというものについて説明したときも
あまり良い反応は示さなかった。
「自分の好きな人と結婚したいのに」
そう言っていたのが脳裏をよぎる。
でもこれは
国王様の命令だから
王子の宿命だから
仕方ないことなのだと
青と自分に言い聞かせる。
桃 『姫がお待ちです』
桃 『参りましょう、』
青 『はいはい、』
知っているはずだ。
僕がお見合いを嫌いなこと。
桃くんが知らないわけない。
知っているから
お見合いだとは言ってこなかった。
桃くんが予定を伝え忘れるわけないのだから。
国王様国王様ってさ
パパはそんなに偉いのかな。
まあ、偉いのか。
国の王だもんな。
桃 『青様っ』
桃 『姫がお見えですっ』
桃 『集中してくださいっ』
青 『あぁ、ごめん』
姫 『青さん、お待ちしておりました』
姫 『本日はよろしくお願いいたします』
青 『どうも…』
あんまりタイプじゃない。
青が全く姫に興味を示さない。
これは俺だからわかることで
他から見たら普通に話しているように見えるのだろうが
青は全く持って結婚を本気で考えている様子ではない。
でも、それは困る。
国王様がお見合いの相手として選んだのはこの姫で
青が小さな頃からずっと言われ続けた。
「将来はあの国の姫と結婚させるように」と。
だから
興味を持たせなければならないのだ。
青 『ちょっとだけ執事と話してくる』
姫 『ええ、わかったわ』
青 『桃くん』
桃 『ちょっと、姫はどうなさったんですかっ』
青 『僕あの子タイプじゃないんだけど』
桃 『そうは言いましても国王様の命令ですのでっ』
青 『僕あの子嫌だ』
桃 『青様』
桃 『青様のことを想って言ってるんです』
桃 『将来のためにも、今お話してください』
青 『なに、?』
青 『僕のことを想ってるんだったら』
青 『嫌だって気持ちを尊重してよっ、!』
青 『桃くんはパパに逆らいたくないだけだよっ、!』
青 『僕の気持ちなんて…考えてもないっ!』
桃 『ちょっと…!青様っ!』
相手方の執事に深く頭を下げ、
俺は突然走って行ってしまった青を追いかけた。
桃 『青様っ…!』
青 『………….、』
やっと見つけた青は
庭の噴水を
ちょこんと座ってぼーっと眺めていた。
桃 『青様…』
桃 『突然走っていってしまうなんて…姫に失礼です』
青 『……んで、』
桃 『…?』
青 『何で僕の気持ちは大切にしてくれないの、?ポロ』
青 『「姫が」とか、「国王様が」とか…、ポロ』
青 『桃くんは…僕の気持ちなんて考えてないんだよ、ポロ』
桃 『……、』
青 『僕の気持ちなんて…わかるわけないよ…、!ポロ』
気づいてしまった。
気づいてはならなかったことに
気づいてしまった。
僕が
今までお見合いをしてきた相手のうちの
誰にも惹かれなかった理由。
僕は
僕は…
青 『…桃くんが…好きなんだ、』
決して恋をしてはならない相手。
歳の差は15歳。
何よりも男性であること。
だから
誰にも惹かれなかった。
だから
違和感を感じていた。
変に納得してしまう自分はおかしいのだろうかと
自問自答する。
もちろん答えなどなくて
ただ噴水の音が聞こえるだけ。
青 『………..、』
僕って
自分の道を選ぶことは出来ないのかな。
桃 『青様っ…!』
桃 『青様…』
桃 『突然走っていってしまうなんて…姫に失礼です』
なんで…
青 『何で僕の気持ちは大切にしてくれないの、?ポロ』
あれ…
泣く予定なんて
なかったのに…、
青 『「姫が」とか、「国王様が」とか…、ポロ』
青 『桃くんは…僕の気持ちなんて考えてないんだよ、ポロ』
男の子が好きとか…
それが桃くんだとか…
青 『僕の気持ちなんて…わかるわけないよ…、!ポロ』
…嫌われたかな。
もう、昨日までの関係性ではいられないのかな。
僕って…どうなっちゃうのかな。
青 『………….、ポロ』
青が泣いた。
我慢強い青が、泣いた。
負けず嫌いなのか
どんなに派手な転び方をしても
痛がる様子もなく
泣くこともなかった青。
もちろんそれにも驚いたけど
俺が何より驚いたのは
青が自分の気持ちを言葉にしたこと。
こうして自分の気持ちをはっきり伝えてきたのは
泣くのと同じくらい珍しく
初めてと言って良いほどだ。
反抗期とは違う。
一人の人として、青は今、気持ちを言葉にした。
俺は
青が伝えてくれるまで
青の気持ちに気づくことが出来なかったことが悔しくて
言葉に詰まる。
謝るべきか。
でも、今さら謝ったところで遅いか。
わからない。
青のことは全て把握しているつもりだった。
わからないことはないくらいに、
青を見てきたつもりだった。
でも、
本当は全然違うんだ。
俺は
青のことを
わかってなんかなかったんだ。
桃 『……申し訳ございません、』
悩みに悩んだ末、
口にした謝罪の言葉。
渋くて苦くて、
全くスッキリしない後味が
俺の中に残る。
青 『っ…………、ポロ』
青 『…今日は帰らせて、ポロ』
桃 『それは…、』
桃 『かしこまりました、』
これ以上青を傷つけることはしたくない。
たとえ俺の地位だとか
名誉だとかがなくなったとしても
俺は青を守らないといけない。
そんな当たり前のことを
俺はすっかり忘れていた。
桃 『今お伝えしてまいります、』
僕の言葉のあと、
桃くんはすごく悩んだ様子で
しばらく何も言わなかったけど、
ようやく口にしたのは
謝罪の言葉だった。
別に謝ってほしかったわけじゃない。
反省してほしかったわけでもない。
ただ、僕の気持ちをわかってほしかっただけ。
でも
そんなの
いくら桃くんでも
わかるわけないよね。
桃くんだって
人間だもんね。
とりあえず
今日はもう一人になりたい。
そう思った僕は
帰らせて欲しいと頼み、
桃くんもそれを承諾してくれた。
帰り道、
僕たちが話すことはなかった。
終始無言の帰り道。
執事など
やはり向いていないのだと思う。
だって
…だって本当は
あいつがやるべきだったんだから。
—-14年前—-
桃 『俺が…執事…?』
紫 『お願い…!』
紫 『俺たち、親友じゃん!』
桃 『いや…いくら親友でも王子の執事なんて…』
紫 『わかってる…』
紫 『でももう桃くんを推薦しちゃったの…』
桃 『何で勝手に…』
紫 『本当はやりたいよ…』
紫 『俺だって諦めたくて諦めたわけじゃない…』
紫 『執事になるために必死に勉強してきた』
紫 『でも…俺の努力だけじゃ無理だったんだよ、』
紫 『家も関係する、』
紫 『桃くんは知ってるでしょ…?』
紫 『俺の家が貧乏なことくらい、』
桃 『……、』
紫 『だから…俺は身分にあったところの家政婦にでもなるよ、』
紫 『頼むよ…』
紫 『俺の夢…叶えてよ、』
桃 『でも…なったらもう会えないかもしれないじゃん…、』
桃 『そんなのやだよ…、』
紫 『親友なら…忘れることなんてないでしょ、?』
紫 『またいつか会えるよ、』
桃 『……わかった、』
桃 『紫ーくんを信じるよ、』
紫 『ありがとう…ポロ』
それ以来、彼とは本当に会えていない。
当たり前だ。
執事にプライベートなどほとんどないのだから。
だから
今どこで何をしているのかさえ、
俺にはわからない。
誰かに頼まれてなった執事なんて
向いていないに決まってる。
そんなの
とっくにわかってたはずなのに
どうしてこうも苦しくなれるのだろう。
会いたい。
会いたいよ、紫ーくん。
桃 『また自分のことばっかり…….、』
小さくため息をつき、
俺は止めた車から降りて
後部座席のドアを開けた。
桃 『お疲れ様でございました、』
「また自分のことばっかり……、」
城に着く少し前に
桃くんが言ってた言葉が
正装から着替えても頭から離れない。
「また」って言ってたけど
桃くんはいつだって僕を優先してくれてたし
今回のことは
僕のわがままを
桃くんにぶつけてしまっただけで
桃くんが100%悪いってわけじゃない。
青 『う〜ん…』
やっぱり、桃くんとちゃんと話そう。
青の服を洗濯しながら
しばらく自分と向き合っていると、
「桃くん」と聞き慣れた声が呼んでいるのに気がつく。
桃 『はい、なんでしょう?』
青 『ちょっと話したいことあるんだけど、』
青 『……部屋に来て』
桃 『承知しました…、?』
俺は手に持っていた洗濯物を干し、
青の部屋へと向かった。
青 『そこ、座って』
桃 『はい…』
青 『……、』
桃 『…………、』
言われた通りに座ったが、
ずっと黙っている青。
その表情からは、
何を考えているのかあまりわからない。
桃 『……あの〜、、』
青 『さっきはごめん、』
桃 『え…?』
青 『酷いこと言ってごめん、』
青はきっと
自分のことを考えていない、と言ったことを
後悔しているのだと思う。
でも、悪いのは俺で、青じゃない。
青にそう言わせてしまった俺が、悪いから。
桃 『いえ…あれは私の責任ですので、』
桃 『私が青様のことを考えずに、自分のことばかり考えていたのが悪いんです、』
桃 『本当に申し訳ございません、』
青 『桃くん』
青 『もう…自分を責めるのはやめたら、?』
桃 『ぇ…』
青 『僕に何かあった時、悪いのは桃くんだけじゃない』
青 『…というか、ほとんど悪くない』
青 『僕が転んだり、泣いたり、上手くいかないことがあって落ち込んだり』
青 『それって桃くんのせいじゃないでしょ、?』
桃 『………、』
青 『…僕は王子って立場で』
青 『良い待遇を受けてる』
青 『誰かに料理してもらったり』
青 『誰かに自分のものを洗濯してもらったり』
青 『誰かに自分のことをしてもらうのが当たり前で』
青 『誰かに守ってもらうのも当たり前』
青 『でもさ…それって当たり前じゃない』
青 『当たり前なわけがない』
青 『僕を守ってくれる人は、守ってもらえない』
青 『だって……僕、見ちゃったんだ、』
—-9年前—-
桃 『青様、私と手を繋いで歩きますよ』
青 『やだ!』
桃 『手を繋がないと、青様が怪我をしてしまいます』
青 『僕、怪我しても良いもんっ!』
桃 『あっ…青様っ!』
青 『っ……….!』
青 『いたぁ〜いぃ…!!』
桃 『大丈夫ですか……』
桃 『っ…!』
まだ幼かった僕は、
少し転んだだけだったが、酷い怪我をした。
桃くんは忠告してくれていたのに、
それを聞かずに走った僕の責任。
誰がどう見ても僕が悪かった。
その日の夜は何だか寝られなくて
桃くんを呼びに行ったんだ。
でも、いつもいる場所にはいなくて、
城中居そうなところを探したけど、
やっぱりいなかった。
あと残っているのは
パパの部屋だけ。
そっと扉の隙間から覗くと、
パパの怒った声が聞こえた。
王 『私の息子に何をしてくれているんだ!』
王 『あんな怪我を負わせて…お前は一体何をしてたんだ!』
桃 『申し訳ございません、』
王 『あれが死に至るような怪我だったらどう責任を取ったんだ!』
桃 『………、』
王 『はぁ…やはり………………………』
その後からは
何も聞こえなくなってしまって、
何を話しているのかあまりわからなかったけど
とにかく怒られてるのを見てしまった。
幼かった僕にとって、
自分を守ってくれる存在が怒られている、というのは
何だか怖く感じた。
逃げるように自分の部屋に戻って、
眠りにつこうと思ったけど、
全く寝られなくて、
ずっと起きてた。
小一時間そうしていたら、
酷くやつれた桃くんが入ってきた。
桃くんは「まだ起きていらしたのですか、」と言って、
僕の横に座った。
それから、いつものように
一定のリズムで僕の背中をポン、ポン、と叩いて
僕を寝かしつけた。
青 『あの時の桃くんの表情が忘れられなくて』
青 『今でも時々思い出しちゃうんだ、』
青 『僕がなんか変なことしたら、』
青 『また桃くんが怒られちゃうって思った』
桃 『見てらっしゃったんですか…、』
青 『うん、ごめん…』
桃 『こちらこそあの時は申し訳ございませんでした、』
青 『だから、それ!』
青 『あれは僕が悪かったんだから謝んなくていいじゃん!』
桃 『ですが…』
青 『もういいから、!』
青 『今回のことも、もう忘れて、?』
青 『もちろん全く嘘じゃないけど、盛ってるところだってたぶんあるし、』
青 『わかった、?』
桃 『…かしこまりました、』
好きな人には、
傷ついてほしくないから。
やっぱり青は優しい。
突然反抗期が終わったのかと思うほどの変わりようだが、
俺はどんな青でも好きだ。
…恋愛対象として、。
薄々勘づいていた。
俺は男性が好きなのだと。
そして、青が好きなのだと。
でも、
俺と青の関係はあくまで王子とその執事。
歳の差だって15歳もあって、
ましてや男同士なんて
王族ではあり得ない話。
執事になると決まった時点で
結婚どころか恋愛さえ諦めていたけど
ここ最近、
青が大人になってきて
骨格から性格まで、
大体こうなるだろうと予想がつくようになって
好意を抱くようになってしまった。
普通は
赤ん坊の頃から育てている相手であるなら
親のような気持ちになるのだろう。
でも、違った。
いつか爆発してしまいそうなくらいの想いが
俺を満たしていった。
この一線だけは越えてはならないと
自分にしつこく言い聞かせ
執事の仕事を全う出来るよう努力する。
それが、
俺の使命なのだから。
桃 『青様、朝です』
桃 『青様』
青 『……………..』
桃 『青様』
うるさいなぁ…
聞こえてるよ…
青 『…』
桃 『今年のプレゼントは、いかが致しますか』
プレゼントか…
桃くん、とか言ってみたりしようかな…
いや、ダメだろ
青 『桃くん』
桃 『…はい』
青 『いや、桃くんが欲しい』
まずいっ…
口が勝手に…!
桃 『…と、言いますと…?』
青 『桃くんが欲しいの』
青 『僕のものになってほしい』
おいおいおい…
一体どうしちゃったんだよ僕は…
何言ってるんだよ…
青 『…ごめん、』
桃 『…いえ、』
桃 『……それは』
桃 『本気ですか…?』
青 『えっ…?』
いつものように青を起こして
そろそろ12月に入る今
クリスマスプレゼントについてでも聞いておこうかと
今年は何が良いかと訊ねると
ゲーム機でも
そのカセットでもなく
「桃くん」などと言い出した。
反抗期が突如終わりを迎えたか
寝ぼけているかのどちらかだと思い
返事をしてみたが
どうやら違うらしく
「桃くんがほしい」と真剣な顔で言ってきた。
どういう意味でなのかは全くわからないが
俺の人生がほしいということだろう、と勝手に解釈して
こう聞いた。
桃 『それは…本気ですか?』
青 『えっ…?』
桃 『本気で仰っていますか?』
青 『本気って…』
桃 『私の解釈ですと…今後パートナーとして生きていきたい、ということにはなりますが』
青 『…………..』
青 『…まぁ、そうじゃないって言ったら嘘になるけど、』
桃 『そうなると…必然的に私が執事ではなくなるということですが、それは理解されていますか、?』
青 『……ちょ、ちょっと言ってみただけだって、!』
青 『そんな本気にされるとも思ってなかったし、!』
桃 『青様』
青 『なに…、?』
桃 『正直にお答えください』
青 『うん…、?』
桃 『青様は、男性が恋愛対象なのですか、?』
青 『……..、!』
青 『…そ、そんなこと、笑』
桃 『青様』
桃 『将来に関わる、真剣なお話です』
桃 『それが変だなんて思いません』
桃 『私もそうですから…、』
青 『桃くんも…?』
桃 『えぇ…確信したのは最近ですが、』
青 『そっ…か…、』
青 『……うん、』
青 『桃くんの言うとおり、僕は男性が恋愛対象だよ、』
青 『その中でも…桃くんのことが好きなんだって気づいて、』
桃 『……奇遇ですね、笑』
青 『え…?』
桃 『私も…青様が好きだと思っていたんです、笑』
青 『僕…を…?』
桃 『はい…執事としてあり得ませんが、』
青 『僕からしたら執事かどうかなんてどうでも良いんだけど…、』
桃 『現実的に考えてパートナーになることは不可能だとは思いますが、』
桃 『もう一度聞きます』
桃 『本気で、パートナーになりたいとお考えなのですか?』
青 『……..うん、考えてる』
青の答えは、本気だった。
突然、本気なのかって聞かれた。
本気って答えたら
自分が傷つくんじゃないかって思って
誤魔化そうとした。
でも、
僕の将来のためだからと
ちゃんとした答えを求められた。
もちろん、「本気」って答えた。
傷を負うのを覚悟して答えたけど、
その心配はいらなかった。
桃くんも、僕を好きだった。
まさか桃くんと両想いだったなんて
思いもしなかったけど
内心嬉しくてたまらなかった。
桃くんは
パートナーになるのは難しいって言ってたけど
僕は何としても
将来桃くんとパートナーになりたい。
桃 『……でしたら、私に1年ください』
青 『1年…?なんで…?』
桃 『それは内緒です』
そう言って桃くんはふわりと笑う。
青 『ふ〜ん…、』
桃 『あ、それと…今年のプレゼントはお預けでもよろしいですか、?』
青 『えっ…!なんで!』
桃 『その分、来年以降素敵なプレゼントを用意致しますので』
青 『う〜ん…まぁ、そういうことなら…』
桃 『ありがとうございますニコ』
一体何を考えているんだろう。
あの日からは、
お見合いの予定はすっかりなくなったし、
結婚の話もなくなった。
桃くんは
予定を伝えることなく
城を出て行く日が増えた。
全く何をしているか僕はわからないけど、
とにかく忙しそうにしていたり
何だか疲れているようだった。
そして、クリスマスが15日後に迫った今日。
桃くんから話があると言われて
今は待機中。
プレゼントの話はされてないから
その話なのかな…。
桃 『失礼します』
青 『はーい』
桃 『青様』
青 『なに…』
桃くんは無言で僕にゆっくりと近づいてくる。
桃 『本当に、私とパートナーになりたいとお考えですか』
青 『まあ、できるならね…』
現実的に難しいのは、
僕だってもう15歳なのだから
わかっている。
でも、
桃くんのことが好きだという気持ちは
やっぱり変わらない。
桃 『…では、一つ条件がございます、』
青 『…条件、?』
桃 『はい、』
青 『なに…?』
桃 『…私とパートナーになれば、青様は国王になることはできません、』
青 『えっ…じゃあ誰が…』
桃 『青様の…実の弟様が』
青 『弟、?』
僕に弟なんているのか。
今まで一度も会ったことがないのはもちろん、
いることさえ知らなかった。
桃 『はい、』
桃 『お名前は…“赤”様です』
青 『ふーん…、』
青 『どこにいるの?ここにはいないよね』
桃 『はい…』
桃 『私も最近…と言いますか、今年知ったものでよくわかってないのですが…』
桃 『赤様は、国王様と王妃様が望んで生まれてきたお子様ではないそうです、』
青 『え、できちゃったってこと、?』
桃 『簡単に言えば…そういうことです、』
桃 『ですので…ここではなく、池の向こうの小屋で暮らしています』
桃 『一応王族ですので、執事はついています』
青 『小屋って…入っちゃダメって言われてたところ、?』
桃 『そのようです、』
桃 『ずっと開かずの間だと思っていたところに人が住んでいたなんて…、』
青 『パパとママは何考えてんだろ、』
桃 『さぁ…….、』
そう言って桃くんは首を傾げる。
それから、改まった様子でこちらを見た。
桃 『もう一度お聞きしますが、』
桃 『国王になれなかったとしても、私とパートナーになることをお選びになられますか、』
青 『桃くんはどうなの?』
桃 『えっ…私は青様に合わせようかと…』
青 『桃くんの気持ちは?』
桃 『それは…もちろん青様とパートナーになりたいとは思っております、』
青 『じゃあ、パートナーになることを選ぶよ』
桃 『…!』
桃 『しかし…っ、青様のこれまでの努力が…』
青 『別に良いよ』
青 『僕は桃くんと生きることを選びたいから』
青 『桃くんと生きる方が大事なの』
桃 『…光栄です、』
桃 『後悔させないように、絶対幸せにします』
青 『ふふ…/』
青 『ありがとう、/』
桃 『お時間いただき、ありがとうございました』
青 『ん、』
深々と頭を下げて
桃くんは部屋から出ていった。
青にとびきりのプレゼントをすると決めた一年前。
青と俺は両想い。
そうとわかれば動かない選択肢などない。
今までは
年齢やら仕事やら、
何かと理由をつけては恋愛を諦めてきた。
青との恋愛なら、なおさらだ。
絶対に無理だと
心の中で勝手に決めつけていた。
でも、
俺はただ、
安定を捨てたくなかっただけだった。
この生活を捨てるのが怖かっただけ。
それにようやく気づいた。
いや、青のおかげで気づけた。
だから、青に感謝の気持ちも込めて
俺は動くことを決めた。
でも、何からしたら良いのかなんて
俺にわかるはずもなくて
頼りは…
桃 『あいつを探すしかないな…』
紫 『桃くん!?久しぶり〜!』
桃 『紫〜く〜んっ!!』
紫 『こんなところまで来て…青様は大丈夫なの?』
桃 『もうあいつも15になるしな』
桃 『ちょっと俺がいなくても平気よ』
紫 『そっか〜…もう15歳かぁ…』
桃 『そうなんだよ…』
紫 『……あっ、どうぞどうぞ、汚いけど』
桃 『いや、綺麗でしょ笑』
桃 『お邪魔しま〜す』
紫 『…それで?話っていうのは?』
紫ーくんは紅茶を出して椅子に腰掛ける。
桃 『まぁ…端的に言えば』
桃 『俺と青はどちらも同性愛者で』
桃 『それが両想いで』
桃 『パートナーになりたいとは思ってるけど』
桃 『現実的に考えて無理だし』
桃 『なんか良い方法ないかなぁ、と』
桃 『それで、紫ーくんだったら国のこととか、皇室のこと調べまくってたから何か知ってるんじゃないかなって』
紫 『なぁるほどねぇ…』
紫 『桃くんはなんとなくわかってたけど』
紫 『青様も女性は恋愛対象じゃないんだ』
桃 『そうみたい』
桃 『まあ、何度お見合いに行っても好きにならないしタイプじゃないって言うからさ』
紫 『じゃあ本当なのかもねぇ…』
桃 『そうそう…』
桃 『でもやっぱりさ〜、男同士だと子供生むことができないじゃん』
紫 『そうねぇ』
桃 『青に弟でもいればなぁ…』
俺はそう言いながら
紫ーくんの出してくれたクッキーを頬張る。
紫 『弟……』
桃 『うん、弟がいればそっちに任せることできるし…』
紫 『弟、いるよ』
桃 『え?』
紫 『確かいたはず』
桃 『えっ、知らないんだけど』
紫 『公にはされていないんだけど』
紫 『青様の7つ下』
紫 『だから…8歳になるくらいかな』
紫 『その子はいる』
桃 『でも…一緒には住んでないよ』
紫 『たぶん…小屋だった気がする、池の向こうの』
桃 『え、あそこ?』
紫 『うん』
桃 『あの開かずの間でしょ?』
紫 『行かせてもらえないのは秘密の子がいるからだと思う』
桃 『マジかよ…』
紫 『望んで生まれた子じゃないから秘密にしてるらしいよ』
紫 『この国の闇だね』
そう言って紅茶を一口啜る紫ーくん。
桃 『闇…』
紫 『一応執事はついてたと思うけどね』
桃 『執事も!?』
紫 『まあ一応王族だからねぇ、笑』
桃 『そっか…そうだよね…』
桃 『それってなんか証拠とか得られないの?』
紫 『いやぁ…俺は無理だけど…』
紫 『桃くんなら怪しまれずに行けると思うよ』
桃 『えぇ…俺はそんな…』
紫 『青様とパートナーになるんでしょ!』
桃 『うぅ…』
桃 『わかった…やってみる…』
紫 『頑張れ!』
桃 『うん…、』
桃 『じゃあ、また来るから』
紫 『わかった』
紫 『気をつけてね』
桃 『はーい』
それから、紫ーくんに言われた通り
俺は“この国の闇”を調べ始めた。
夜のうちに
向こう岸までボートを漕いで
灯りがついていることを確認したり
ある日は
直接会って話したりもした。
本当に、人は住んでいた。
王子の名前は“赤”。
執事は“黄”というらしい。
7歳の赤はまだまだ幼く、
小さな頃の青を彷彿とさせるような姿だった。
普通の暮らしは送っているようだが、
やはりこの生活では
王子は務まらないと黄は言っていた。
国王の納得を得るためにはこれを利用するしかない。
そう思った。
王 『それで、話とはなんだ』
桃 『…単刀直入に申し上げますと…青様は女性が恋愛対象ではないとのことでした』
王 『女が恋愛対象じゃない?』
王 『はっ笑』
王 『馬鹿げている笑』
王 『嘘をつけ、笑』
桃 『いえ、彼は本当です』
王 『女と結婚しなければ子供が生まれないだろう』
桃 『えぇ、それは間違いございません』
王 『あの国の姫と結婚させろと何度も言っているではないか』
桃 『重々承知しております』
桃 『何度もお見合いの機会を設け、心変わりするのを待っておりましたが、青様のお気持ちは変わりませんでした』
王 『っ…じゃあ誰が血を継ぐというんだ』
桃 『……青様の、弟様に』
王 『弟…?そんなもの存在しない、』
桃 『いいえ、いらっしゃいますよね』
桃 『池の向こうの小屋に』
王 『なっ…そんなわけないだろう、』
桃 『この目で確認してまいりました』
桃 『お名前は赤様、ですよね』
王 『っ……』
桃 『このまま向こう岸に住まわせるのはどうかと思います』
桃 『彼も王族なのですから』
王 『そんなの認めない…!絶対に認めないぞ…!』
桃 『認めるか認めないかはご自由にしていただいて構いません』
桃 『ですが、もしもこのまま赤様をあの小屋に住まわせ続けて』
桃 『青様に女性と無理に結婚させることがあれば』
桃 『私は躊躇なくこの事実を晒します』
王 『なっ…』
桃 『こちらの望みを受け入れていただけるのであれば、この事実を明るみに出すことはしません』
桃 『どういたしますか』
王 『…………こちらに住まわせて教育すれば良いのだろう、?』
桃 『えぇ、将来の国王の座を継ぐ者として』
王 『…絶対に他人に言うでないぞ、』
桃 『承知いたしました、』
ひとつ問題が解決した俺は
また彼のところに向かった。
紫 『おお、久しぶり笑』
桃 『紫ーくん〜っ!』
紫 『うまく行った?』
桃 『うん!国王も納得させられた!』
紫 『よかったね〜!』
桃 『…でも』
紫 『でも…?』
桃 『俺と青がパートナーになったら』
桃 『青の執事がいなくなる』
紫 『確かにねぇ…』
桃 『ってことで!紫ーくんにお願いしたい!』
紫 『え、俺?』
紫 『いやいや、無理だよ笑』
紫 『一度落ちてるんだし笑』
桃 『大丈夫!俺が推薦するから!』
紫 『う〜ん…でも橙くんもいるし…』
桃 『弟くんだっけ?』
桃 『一緒に来ちゃいなよ』
桃 『本当にパートナーになるとなれば、俺も王族になっちゃうからさ』
桃 『執事としておいで?』
桃 『名ばかりの執事でいいから笑』
紫 『いやいや…無理無理』
桃 『大丈夫大丈夫』
桃 『夢、叶えようよ』
紫 『…!』
紫ーくんは少し考えて頷いた。
紫 『うん…やってみる』
桃 『じゃあ、国王に話してみるね!』
紫 『ありがとう笑』
王 『今日はなんだ…』
桃 『今日はひとつお願いをしに参りました』
王 『お願いだと…?』
桃 『私は…青様とパートナーになりたいと考えております』
王 『お前が青と?あり得ん』
王 『何かと思ったらまたそんなくだらないことを、』
桃 『身の程知らずな発言であることは重々承知しております』
桃 『ですが、これは青様のご希望でもあります』
王 『青の希望…?』
桃 『はい、』
王 『はぁ………..で、お前と結婚して誰が青の執事になるんだ、』
桃 『…!』
桃 『紫を執事にと思っております』
桃 『ご存じですよね、?』
王 『…あいつは貧乏人だ、』
王 『青の執事にはさせん』
桃 『私は彼に任せたいと思っております』
桃 『彼は勉強熱心で、努力家です』
桃 『青様のために尽くすことができると信じています』
桃 『…もし、その実力を貧乏であるというだけで認めないというのであれば…』
王 『わかった、そいつを執事にすればいいのだろう?』
桃 『ありがとうございます、!』
桃 『紫が執事になった際には、彼の弟も私の執事として迎え入れますが、よろしいですよね、?』
王 『好きにしろ、』
桃 『ありがとうございます…!』
紫 『え、良いって?』
桃 『うん!』
桃 『よっぽど晒されるのが怖いんだよ』
紫 『桃くん…すごいね…』
桃 『そんなことないって笑』
桃 『教えてくれたのは紫ーくんだよ』
紫 『…ありがとう、ポロ』
桃 『ちょっと泣かないでよ笑』
紫 『だって…ポロ』
紫 『夢なんて叶わないんだって思ってたから…ポロ』
紫 『努力なんて報われないんだって思ってたから…ポロ』
桃 『もう諦めなくて良いんだよニコ』
紫 『うん、ニコポロ』
桃 『じゃあ、12月までに準備よろしくね』
紫 『はーい』
あとは、青の理解を得るだけ。
でも、そんなに難しいことではなかった。
青 『僕は桃くんと生きる方が大事なの』
青は
俺の気持ちも大切にした上で
自分のこれまでの努力が報われる機会を失ってまで
俺と生きることを選んでくれた。
これで、やっと。
やっと、青に恩返しをする準備ができた。
今日はクリスマス。
結局プレゼントは聞かれないままだったけど
プレゼントとかあるのかな。
桃 『おはようございます、青様』
青 『おはよ』
青 『…あの〜、』
青 『プレゼントとかって…』
桃 『1年前の約束、覚えていらっしゃいますか』
青 『約束…?』
桃 『……でしたら、私に1年ください』
青 『1年…?なんで…?』
桃 『それは内緒です』
青 『ふ〜ん…、』
桃 『あ、それと…今年のプレゼントはお預けでもよろしいですか、?』
青 『えっ…!なんで!』
桃 『その分、来年以降素敵なプレゼントを用意致しますので』
青 『う〜ん…まぁ、そういうことなら…』
桃 『ありがとうございますニコ』
青 『あ…』
桃 『ふふ笑』
桃 『とびきりのプレゼント、用意してきましたよ』
青 『え!なになに!』
桃 『今年のプレゼントは…俺だよ』
青 『えっ…?』
桃 『青が欲しいって言ってたから』
青 『…パートナーになれるってこと、?』
桃 『うんニコ』
青 『本当?本当に?』
桃 『もちろん!ニコ』
青 『…やったぁ、!ニコポロ』
桃 『なんで泣くの笑』
青 『だって…無理だと思ってたから…ポロ』
青 『王族が好きな人を選べるとか…』
青 『そんなのできないって思ってたから…ポロ』
王族に自由はないと
一生この檻の中で過ごすのだと
そう思っていた。
こんな幸せなことがあるのかと思うと
なんだか涙が溢れて
止まらなかった。
桃 『できたよニコ』
桃 『願い、叶えたよニコ』
青 『…!ポロ』
青 『ありがとう、ポロ』
桃 『パートナーになったから』
桃 『俺はもう青の執事ではいられない』
桃 『ちょっと寂しいけど』
桃 『青とパートナーになれることの方が嬉しいよニコ』
青 『ん、/』
桃 『新しい執事も来てるから、挨拶しに行こうか』
青 『新しい執事…?』
桃 『うん、素敵な人だよ』
青 『ふ〜ん…』
どんな人なんだろ。
桃 『新しい執事の紫ーくんだよ』
紫 『紫です』
紫 『よろしくお願いしますニコ』
青 『お願いします…』
桃 『怖い人じゃないって笑』
紫 『突然来たら怖いですよね笑』
桃 『元々は青の執事になる予定だったんだよ』
青 『え?そうなの?』
桃 『そう』
桃 『色々あって俺がお願いされてね』
紫 『一度夢を諦めたんですが…桃様のおかげで夢を叶えることができました』
桃 『桃様とかやめてよ笑』
桃 『青のことは青様でもいいからさ笑』
紫 『ごめん笑』
紫 『これから青様を全力で支えてまいりますので、よろしくお願いしますニコ』
青 『うん!』
桃 『…あれ、橙くんは?』
紫 『あ、呼ぶ?』
紫 『橙くんおいで〜』
橙 『……….』
紫 『なんか緊張しちゃってて笑』
紫 『本当はよく喋る子なんですけど、笑』
桃 『橙って呼んでも良い?』
橙 『はい、』
桃 『ありがとナデナデ』
橙 『…!』
青 『何歳なの?』
橙 『17です』
青 『僕の2個上だ』
桃 『青とも仲良くしてやってな』
橙 『はい、』
紫ーくんと青は馴染めそう。
元々似たもの同士だと思ってたから予想通りだけど。
橙は急な話だったしまだ不安なんだろうな。
でもたぶん大丈夫。
桃 『…よかったニコ』
桃 『青〜』
桃 『朝だよ〜』
青 『ん〜…』
桃 『青〜』
青 『………..、』
桃 『別れるよ?』
青 『それはダメっ!』
桃 『起きれるじゃん笑』
青 『むぅ…』
紫 『青ちゃんおはよ!』
紫 『朝食用意できてるからおいで!』
青 『はーい、』
赤 『お兄ちゃんおはよ〜』
青 『おはよ』
赤 『これ美味しいよ〜?』
青 『僕それ嫌いだから』
赤 『え〜!なんでぇ!』
桃 『昔は好きだったのに…笑』
青 『なんで言うの!』
黄 『青ちゃん好き嫌いはよくないですね』
青 『別に嫌いじゃないし』
橙 『強がっちゃって〜笑』
青 『はぁ!?』
紫 『たくさん持ってきてあげるよ』
青 『いや、いらないよ…』
桃 『ふはっ笑』
パートナーになってから一年。
今では6人で仲良くするようになった。
執事なのに敬語じゃないのも
青が納得してくれているからできること。
赤もそれで良いみたいだしね。
本当は集まるはずのなかった6人。
それぞれの道を歩んできて
それぞれの過去がある。
夢を諦めなくてはならないと思っていた過去。
一度夢を諦めた過去。
自分らしさを自然と否定されてきた過去。
環境に囚われていた過去。
希望すら捨てていた過去。
色々な過去を持っているからこそ、
今が幸せだと口を揃えて言う。
この幸せがずっと続きますように。
桃くんとパートナーになって一年。
かしこまった敬語などやめて、
楽に過ごせるようになった。
紫ーくん、橙くん、黄くんとも
今では友達のような感覚で話せるし
赤くんのことも、
少しずつ、弟なんだって認識に変わってきた。
閉ざされていた世界が広がって、
一気に明るくなった。
誰かの基準に合わせて過ごさなくてもよいことの幸せに
気づくことだってできた。
僕もみんなも、今が一番幸せ。
その事実が嬉しくてたまらない。
誰かと違っても良い。
自分は自分でいても良い。
決まりに縛られなくても良い。
この幸せに気づかせてくれたみんなの幸せが
この先もずっと、続きますように。
桃 『あ、青?今年のプレゼントはどうする?』
青 『ん〜…今年からはいらないよ』
桃 『え、なんで』
青 『僕は一生大切にしなきゃいけない宝物をもらったからねニコ』
桃 『お互い様だなニコ』
青 『んふ…/』
『プレゼント』
コメント
4件
メリークリスマスです! 最高のプレゼントありがとうございます! ほんとにお話の設定が細かくていつも引き込まれてます! ほんとに最高です!!
まってまじで感動すぎる😭😭✨️ これだけ長い話なのにごっちゃになってなくてしっかりとした1つの物語になっててほんとに凄い🥺🥺今年はプレゼント届かなかったからさやちゃんから素敵なプレゼント貰っちゃった🫶💕メリークリスマス!✨️
メリークリスマス!🎄✨ 私からのプレゼント、喜んでくれたかな?🤭