先生の言葉に従い、魔王城に行くことにした。
ここで果たす任務は大きく分けて三つ。
一つは、平和条約を築くこと。
二つは、悪質な幹部を解散させること。
三つは、サーガラの肉体契約の謎を解くこと。
この三つの任務を果たして
早めにヨーロッパへ帰らなければいけない。
魔界で竜族との共存を発表すれば
魔物から逃げる日々も終わり、普通の医者になれる。
これが最後の戦いになるのかもしれない。
「先生。魔王にそれを告げて
悪質な幹部を除外したとしても魔界住民らの
イメージは変わらないのでは?」
俺が質問せると先生は答えた。
「…あのとき手術して助けただろ?
だから一様イメージは良くなってるんだ。」
「”黄金のメス”も戻ったし
何も言えないだろう。天界のイメージは知らんがな。」
そう言い魔王城の前で止まる。
前を見てみると幹部が居た。
「オメェがあのBIRDかぁ?」
鋭い牙をむき出しそう言う大幹部は、どこか
憎たらしい印象があった。
「そうだ。魔王と平和条約を
築きたいと思ってな。」
先生が言うと隣りにいるサーフィーも続けた。
「そうそう。黄金のメスもあるから、前みたいに条約の
シンボルとして使ってくれれば…。」
サーフィーが言いかけた途端
幹部が目の色を変えた。
「お、黄金のメス?!あれじゃあないか!
天界の金を集めて作った竜族の宝!」
「あれを………持っているのか?!」
サーフィーの肩を掴み
そう叫んだ。
「持ってるよ〜〜!ほしい?これ。」
サーフィーがポケットから黄金のメスを取り出した。
幹部が『くれ!』と掴もうとすると
サーフィーは幹部のみぞおちを蹴り、失神させた。
「不法侵入しよう。幹部は倒したし。」
「おっまえ…」
まじかよ…
俺は絶叫しながらも
サーフィーと先生に付いていった。
「魔王〜平和条約結ぼうぜ〜!」
魔王の部屋の扉を開けて、
元気にサーフィーが言った。
「…平和条約?」
魔王が首を傾げると
先生が説明に入る。
「あの際はすまなかった。
今回は竜族と魔族の距離を縮めたいと思い
魔族と竜族との平和条約を結びたい。」
「戦争の耐えぬ野生に近い魔族と竜族は
仲が悪かったが、これきっかけに
交友関係を築きたい。お前からしても損はないだろう。」
先生の言葉に、魔王が深く頷いた。
「…良いだろう。」
「だが、お前のことだから
それ以外もあるだろう?」
…見抜かれた。
内心、冷や汗を流しながら先生を見ると
先生は意外と冷静に答えた。
「ある。悪質な魔王幹部を除外しろ。」
「竜族からの願い…いや、命令だ。」
「…断ったら?」
魔王が顎に手を当て、先生の目を見る。
ゴクリ…
俺は唾を飲み、先生の返事を待った。
「…医療同盟を断ち切る。貿易も一切しない。
関係そのものを切る。そうされたくなけりゃ除外しろ。」
先生の言葉に魔王が目を見開いた。
「正気か?」
「左様」
「私らと貿易しないと生きていけないのでは?」
「いいや。人間と貿易しているし
医療同盟も組んでいるからな。困らない。」
先生が強気に言うと魔王が引き下がった。
「…我々は困る。」
「ふん。だろうな。鉄の取れない魔界じゃ生活も困難。」
「だから諦めて条件を呑め。今じゃなくても良い。」
そう言われ、魔王はしばらく考えると、結論を出した。
「分かった。」
「よし。ならこの書類にサインしろ。」
先生が鞄から分厚い書類を出した。
全て魔界語でまとめられ
すでに竜族の印鑑が押されている。
「6月25日までに竜界本部の所まで提出してくれ。
すでに竜族本部長の許可が降りている。」
「…全て分かっていたのか。」
魔王が印鑑を押し、ポツリと言った。
「あぁ。分かっていた。
俺が、元魔王の契約の
身代わりとなり死んでしまうことも
クルルが俺を生き返す代わりに互いの
体が入れ替わることもな。」
先生が言うと魔王が静かに目を瞑った。
「お前の人生はグーロと変わらぬ。
サーガラとの肉体契約と等しい。」
「…あれは23年前の話だ。
サーガラが竜族と魔族の戦争に巻き込まれ、
亡くなった。それから数年経ち
サーガラの仲間であるリキが暴走。
リキは確かクルルの父親だろうが破壊神だからな。
次元を破壊しては泣き叫ぶ。それは戦争より悲惨になり
大変なこととなった。」
「だがそれを止めようと
グーロが立ち上がった。サーガラの死体から皮を剥ぎ取り
それを被った。これは当時の黒魔術だった。」
…黒魔術?
聞いていて不思議に思ったが
続きを聞いてハッとした。
「皮を被る行為は
“相手の体を貰う代わりに自分の体をあげる”
そういう黒魔術であり此の世にいない者のふりを
することは”生き返りの黒魔術”として扱われる。」
「だがそれをグーロはした。
だからサーガラは生き返り、
グーロとの肉体契約を果たしたのだ。」
「…だが黒魔術には副作用があるものよ。
だからサーフィーにもその被害は及んでいる。」
魔王はそう言って
サーフィーの鱗を指さした。
「サーガラは青い鱗をしている。
サーフィーもグルの弟なのに青い鱗をしているだろう。」
「これが何故か分かるか?」
「…これは、入れ替わった際の副作用だ。
自分の子供(サーフィー)が腹の中に入っていて
まだ胎児だったから遺伝子が混ざってしまった。」
「つまり、竜と仏の混血ということなのだ。」
その言葉に皆、絶叫した。
コメント
4件