「そ…そこまでは知りませんでした…。」
俺が言うと魔王がうつむく。
「だろうな。こうなると魔界だけでなく、修羅界などの
他の世界からも注目され
サーフィーは実験動物にされる。」
「だから知ってるものは少ないのだ。」
俺は少し納得した。
確かに史上初だからそういうこともあるだろう。
「俺が実験動物とかウケる〜!
動物というか、もはや神なのに!」
サーフィーがケラケラと笑う。
さすが鉄メンタル…と思いながらも
もう一つ気になったことを聞いた。
「魔王に質問なのですが、サーガラとグーロは
一度肉体契約をしたのですよね?」
「なのに、なんで今は元の体に戻ってるのですか?」
ここが一番気になっている。
肉体契約で入れ替わったはずのサーガラが
元の体に戻っているのだ。もしかしたら
俺と先生のように魔界の薬を飲んだのかもしれない。
「グーロか…あいつは
入れ替わりの薬を自力で作り、元に戻った。」
「それから私らに薬を売った。」
一瞬場がシーンとなって
先生が口を開く。
「…自力か。」
先生が『ふーん』と言い、
魔王に黄金のメスを渡した。
「………平和条約の証だ。受け取れ。」
先生からメスを受け取った魔王は目を大きくした。
「いいのか?これは天界の金だ。
価値があるものを私に渡しても良いのか?」
「別に良いさ。今の時代ならいつでも作れるし。」
先生が呟くように言う。
「…これで用事も終わった。
俺はヨーロッパに戻るからな。」
「…すまなかった。」
「…」
ガチャ
扉が閉まり先生は廊下を走っていった。
俺とサーフィーも顔を合わせ、
静かに魔王城を出た。
「帰るんですか?」
先生に聞くと先生が答えた。
「帰る…と言いたいところだが」
「前、魔物の胎児を預かったことを覚えているか?」
「あ、はい。」
確か居たなぁ…
なんて思いながら答えると先生がサーフィーの
鞄を取り上げ、中から瓶を出した。
「魔物の胎児はこの中に入っている。
勿論生きているから、
魔界の友達に預けようと思ってるんだがな。」
「その前に一様名前を書いておきたい。」
先生の言葉に驚いたが
名前と言われても思い浮かばないものだ。
見た目は…まだ分からないし
魔界語も分からない。
それに、俺はネーミングセンスがない。
ここはサーフィーに任せるしかない。
「サーフィーが決めろよ。
俺はネーミングセンスないから。」
サーフィーの背中を押して言うと
サーフィーが少し考えて言った。
「う〜〜ん。アドラーとか?」
「えっアドラーって…鷲?」
俺が聞くと、先生に頭を叩かれる。
「お前は馬鹿か。アドラーは精神科医だ。
本名はアルフレッドアドラーだがな。」
「……ほへぇ〜」
正直知らなかった。
サーフィーもちゃんと考えているんだなぁと感心した。
「じゃ、アドラーちゃんを預けるんですね!」
「でも…何処に?」
俺が言ったら先生がため息をつく。
「…こっちだ。付いて来い。」
「あっ、はい!」
元気に返事をすると
サーフィーが『ケッ』と舌を出し
俺の後ろを付いてきた。
「ここどこ?」
魔界の街から離れた田舎のような所だった。
そこから先生は一軒家に近づき、ドアをノックする。
「ごめんください。俺です。」
先生が敬語で言うと、扉が開いた。
「…グル先生?」
出てきたのは体の細い水色の髪をした女性だった。
「…貴方に胎児(アドラー)を預けます。
そのまま育ててくれると有り難いです。」
「では、俺はこれで。」
返事を待つ間もなく
先生は礼をして扉を閉めた。
「先生、あの人は…」
「魔王の奥さんだ。子供がいないからな。」
「あの人なら良い子に育てるさ。」
先生が目を瞑る。
魔王の奥さんといえば、先生が手術した人だ。
獣のような姿かと思ったが…なんだ、美人じゃないか。
「よし。次こそ帰るぞ。」
先生がペストマスクを取り、
マントから翼を出した。
サーフィーも翼を広げ、空に向かって羽ばたく。
俺は麒麟だから雲を蹴って空中を駆けた。
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